2002/7/24(Wed)

　暑い。ひたすら暑いとしか言葉が出ないような西京極。日も陰り、夕方から少し風も出てきていたのですが、2万人のキャパシティのスタンドに1万9千人近くが詰めかける大入り満員のスタンドは、人いきれで逆に温度が上昇していくようです。試合開始の前から、通路にも最後列にも立ち見の観客が並びます。

　W杯終了直後、このスタジアムで行われたサンガ対レイソル戦では、9千人弱の観客しか訪れなかったといいますから、夏休みとはいえ、平日の夜の試合にこれだけのお客さんが集まるのは、アントラーズの日本代表選手の人気でしょう。特に中田選手の人気は凄まじく、姿が現れただけで、メインスタンドから悲鳴のような声が上がり、まぶしいほどのフラッシュが焚かれます。選手紹介のアナウンスでは、満男選手の名前が呼ばれる時にまで、「キャー!!!」という嬌声が飛びます。

　サンガの紫のユニフォームや、アントラーズの赤のユニフォームを着たサポーターに混ざって、ブラジルやイングランドのユニフォームを着た観客もいて、サンガのホームスタジアムとは思えない雰囲気です。スタジアムDJが、スタンドのホームとアウエイのサイドの説明をキックオフ前に繰り返し説明します。西京極陸上競技場は、メインスタンドから見て、左側のスタンドの方が小さいせいか、他のスタジアムとは違い右側がホームのサイドになっています。ただ、そのせいだけではなく、サッカーの応援には、ホーム側とアウエイ側があるということを説明しなければならいようなお客さんが多く来ているようです。

　選手が入場し、1列に並んでの挨拶が終わると、DJは両チームのユニフォームの色を紹介します。写真撮影のために、列を離れていた満男選手など数人は、戸惑って立ちつくします。

　サンガのボールでキックオフ。前節レイソル戦で高めのポジションを取ることが多かった満男選手ですが、今日は、本山選手の方が、比較的、高い位置にいることが多いようです。前線にも上がって行く満男選手、6分、アウグスト選手からのクロスに、ニアに飛び込み、ヘディングですらして落としますが、柳沢選手に合いません。

　前節に続いて、今日も主審は来日したばかりの招聘審判員です。長身のデンマークのフィスカーさんは、ポイントの位置のズレのチェックなど細かくこだわっていましたが、14分には、熊谷選手の抗議にイエローカードを出します。熊谷選手は、これで次節出場停止になってしまいました。

　満男選手は、サンガのカウンターにタックルでボールを奪おうとするなど、積極的な守備を見せます。22分、右サイド、ハーフラインの少し後ろから浮かせたパスをDFの裏に出します。DFがヘディングでクリアしようとしたボールが、エウレル選手の前にこぼれ、シュート。惜しくもサイドネットです。

　右も左もCKを蹴る満男選手ですが、意識的にファーサイドに大きく上げるボールが多いようです。

　満男選手と本山選手は、左右のポジションチェンジが多く、満男選手が右にいる時間も長くなっています。28分、アントラーズが攻め込んだセットプレーから、パク・チソン選手が一気に本山選手を抜きさりアントラーズのピンチになります。3トップの右に入った、韓国代表のレギュラーメンバーのパク選手は、スピードがあり、大きくサイドに張り出して動くことが多く、危険な存在です。満男選手は、それを意識してか、このあと左に流れていきます。

　31分、満男選手から速い低いパスが縦に走り込む柳沢選手に出ますが、裏に抜けることができません。

　引き気味のサンガに対して、アントラーズの選手たちが上がって行く中、35分くらいから、満男選手は、ボランチか左サイドバックのように、左サイドの低い位置にいます。W杯の疲労と暑さのせいで体が動かなくなっているのでしょうか、前半41分のアントラーズのカウンターの時も、上がっていくことができません。

　優位にゲームを進めていたアントラーズは、43分、オーバーヘッドでシュートを狙った柳沢選手が、ペナルティエリア内で倒されPK。これを中田選手が決めて1点を先制します。普段のPKなら、ペナルティアークの少し後ろに陣取って、虎視眈々とこぼれ球を狙っている満男選手ですが、このPKの時は、ライン際に給水に行っていて、中田選手が蹴るのを見て、後ろから慌ててペナルティエリア内に飛び込んでいきます。

　ロスタイムは1分。ここでアントラーズはゴール前でファールを犯してしまいます。満男選手は、ゆっくりと壁に入ります。

　このFKを決められ、前節に引き続いて、リードした直後に得点を奪われて同点にされてしまいます。その得点の直後に、前半は終了します。

　後半が始まっても、ムッとする熱気は去りませんが、満男選手は、元気を取り戻したようで、前への上がりをまた見せてくれるようになります。後半2分、左に開いたエウレル選手にパスを出した満男選手は、ゴール前に上がって行きますが、エウレル選手のクロスに触ることができません。

　サンガは相変わらず後ろに人数をかけています。

　8分、満男選手は、左サイド寄りでフリーでボールを持つと、前方を確認してエウレル選手にパスを出します。エウレル選手のうまい抜け出しと思ったのですが、オフサイドです。この試合、アントラーズのオフサイドの数がとても多い印象があります。

　10分、左サイドを抜かれて、パク・チソン選手のシュート。このあと、満男選手は左後ろの守備に、また入るようになります。

　12分、左サイドにいた満男選手から、逆サイド、名良橋選手へのバックパス気味のサイドチェンジのパス。これが、明らかにミスパスになって、相手選手に渡ってしまいます。満男選手は、下を向き、だふったのか右足に手をやります。この流れで、左サイド低い位置でのFK。壁になるために走って逆サイドに向かっていた満男選手は、曽ヶ端選手に行かなくていいと声をかけられ、ガクンと頭を落として中央に戻ります。疲れが出ているのでしょうか。このあとのカウンターでも、元気な熊谷選手を前にいかせて、満男選手は上がらず残っています。

　熊谷選手、ファビアーノ選手が立て続けに痛んで試合が止まります。スタンドには、一瞬だけ、涼しい風が吹き抜けます。

　ポジションが下がって、ボールに触れる回数も少なくなった満男選手、28分には、エウレル選手にボールを預け、ワンツーで上がろうとしますが、パスを受けられません。34分には、ドリブルで上がり倒されますが、ホイッスルは鳴りません。

　36分には、最終ラインの前でボールを受け、ロングパスをアウグスト選手に出してから上がり、左の中田選手からのパスをボレーでシュートしますが、大きくバーを越えてしまいます。

　ここで、アントラーズは痛んだファビアーノ選手に代えて本田選手を入れます。CBの左に中田選手が下がり、本田選手はボランチです。そして、その2分後、柳沢選手に代えて内田選手。内田選手は左サイドバックに入り、本山選手がFWに、アウグスト選手も1つポジションを上げます。

　39分、自陣をドリブルで上がった満男選手は、左サイドに開いた本山選手にスルーパス。本山選手が上げたクロスを、駈け上がった本田選手がヘディングで流し、そこに満男選手が飛び込みますが、ボールを受けられません。

　41分、左サイドで得たFK、満男選手が、ボールをセットして蹴ろうとするところに、主審が近づいてきて、ポンと足でボールを軽く蹴り、転がしてポイントを直します。ボールの転がる方に移動する満男選手。この動作は、とても尊大に見えて、イヤな感じです。

　43分、満男選手が裏を狙って、エウレル選手に縦に出したパスは、GKにキャッチされます。

　46分、右のCKを蹴るのは、満男選手ではなくアウグスト選手です。満男選手の足の調子は、やはりよくないのでしょうか。

　ロスタイムの3分が過ぎ、どちらのチームも追加点を奪えないままホイッスルが吹かれます。その瞬間、少し頭を落とした満男選手、ベンチの方に向かって歩きながら、2度ほど天を仰ぎます。苦しげな表情です。

　ボトルから水を飲むと、首筋にも水をかけ、座り込む満男選手。セレーゾ監督がやってきて、満男選手に話し出します。関塚さんもやってきて、満男選手の足を持ち上げてマッサージを始めます。マッサージを受ける満男選手に向かって、セレーゾ監督は、大きなジェスチャーで話し続け、鈴木さんが横で通訳しています。

　本山選手が、ピッチの上で体を休める選手たち1人1人に声をかけて回っています。交代になるのでしょう。

　関塚さんは、今度は、満男選手の足を広げ、上から乗るように押しています。マッサージが終わると、満男選手は体育座りになり、じっと座っています。

　スタッフを含めて、全員で円陣。一番最後に立ち上がった満男選手のスネ当てを、イッカGKコーチが拾い上げて渡します。

　本山選手に代わって入るのは、長谷川選手です。前節、交代してからすぐに決勝ゴールを上げた長谷川選手。今日もやってくれるでしょうか。

　延長を開始後まもなく、野沢選手がベンチ前に呼ばれます。セレーゾ監督から指示を受けた野沢選手は、すぐに交代することなく、いったんベンチに座ります。

　マッサージを受けた満男選手ですが、元気は回復せず、かえって後半の終わり頃より動きが悪くなったように見えます。ボールに絡むこともほとんどありません。延長前半3分、右にさばいたボールをエウレル選手がシュート。これは、バーを越えます。

　ここで、野沢選手が満男選手と交代になります。野沢選手とタッチを交わしてピッチを離れた満男選手。セレーゾ監督は、ピッチに気を取られているのか、満男選手の方を見向きもしません。関塚コーチ、関ドクターとタッチを交わしながらベンチに向かった満男選手は、ぐったりと座り込みます。

　スネ当てを外しストッキングを脱いで、しばらく座り込んでいた満男選手ですが、試合終了を見届けることなく、スパイクを両手に持って裸足で上がっていきます。メインスタンド下の通路に入ったところで、アントラーズが攻め込んで歓声が上がります。振り返って試合の行方を見る満男選手。やはり気になるのでしょう。通路の向こうのガラス戸に手を当てて、軽くストレッチをすると、その場に座り込みますが、居心地が悪かったのか、もう一度立ち上がります。通路の一番隅、立ったまま試合を見ているアントラーズのマネージャーさんの後ろ、段になったところに腰を下ろして試合を見守ります。

　9分、中払選手のVゴールが決まると、満男選手は、すぐに立ち上がり、ぶらぶらとスパイクを振りながらロッカールームに上がっていきました。

　試合が終わっても、耐え難いほどの暑さの西京極。この暑さに消耗しきった選手たちは、3日後に、またリーグ戦を戦わなければなりません。真夏の、シビアなコンディションの中での戦いは、まだ1ヶ月以上続きます。

（バックスタンドより観戦）てくれるのか、そして、W杯でピークに持っていったコンディションが、7月1日からのキャンプでうまく調整できているのか、気になるところです。

　再開を楽しみにやってきたサポーターと、代表選手を人気タレントのように応援する女の子たちで、開場直後から、ホーム側のサイドスタンドは赤く染まりまり、W杯の余韻を感じさせます。空には雲が広がり日差しはなく、強い風が吹き抜けていますが、鹿嶋特有の湿気を感じます。

　5時半頃、アントラーズのフラッグを持った秋田選手に続いて、曽ヶ端選手、中田選手、柳沢選手、満男選手が私服姿でピッチに姿を現します。一列になり、ぶらぶらとハーフラインに沿ってピッチ中央まで歩く選手たち。白いTシャツに黒っぽい色のパンツの満男選手は、柳沢選手と親しげに話をしています。そこに、上だけ練習着に着替えた姿で、走り出してくる隆行選手。今日は、いつもとは違って、代表選手6人が揃ってサポーターの前に出てくることになっていたのですが、それを忘れていたに違いありません。5人は、笑いながら迎えます。

　中央から、バックスタンド側のゴールポストの方に向かった選手たちは、ホームのゴール裏の観客の前を、ゆっくりと歩いていきます。数人の選手は手に投げ込みのための赤いグッズを持っていますが、満男選手は持っていません。出てくる時に、メインスタンドの観客に渡したのかもしれません。

　秋田選手は、1人、スタンドに寄っていって、フラッグをインファイトに渡します。満男選手も、スタンドに向かい、軽く片手を上げます。昨夜、ベルギーのチームへの移籍話が発覚した隆行選手を、カメラマンが取り囲みます。代表選手のなかでも、とりわけ、隆行選手に対する人気が高く、去り際に、メインスタンドにグッズを投げ入れると、「キャー!!」と大きく黄色い声が上がります。

　試合時間が近づくと、メインとバックのスタンドや、ホーム側サイドスタンドの2階も、ほぼサポーターで埋まりますが、アウェイ側のサイドスタンドは、ガラガラ。ヴェルディのサポーターは50名ほどでしょうか。

　ホーム側のサイドスタンドに広げられる3枚のビッグフラッグ。そして、その3枚がかたづけられると、さらに、もう3枚。インファイトと書かれたビッグフラッグが広げられます。

　試合前、アントラーズの代表6選手に、花束が贈られます。6人が、一歩前に出て並ぶと、黄色いTシャツに赤いパンツのW杯のエスコートキッズのユニフォームを着た子どもたちが、花束を差し出します。満男選手は、体をかがめ顔を近づけて声をかけると、花束を受け取り、頭をなでます。自分から手を差し伸べて、子供と握手すると、穏やかな笑顔を浮かべます。

　列に戻り、一礼。今日は、満男選手は、今日はバックスタンドの方には手を挙げようとせず、花束をアントラーズのスタッフに預けると、写真撮影に向かいます。そして、ピッチに散ると、ダッシュ。体のキレはいいようです。

　コイントスで、ピッチを交換。アントラーズは、最初、ホーム側のゴールに向かって攻めることになります。サポーターからのコールに、満男選手は軽く片手を挙げて答えます。満男選手は、W杯の時にはいていた黒のスパイクではなく、アントラーズレッドのソールとラインの入った、いつものスパイクをはいています。6月18日にのトルコ戦の時には短く刈り込まれていた髪の毛も、普段より長いくらいになって、無精ヒゲをはやしています。

　アントラーズの今日のメンバーは、曽ヶ端選手、名良橋選手、秋田選手、ファビアーノ選手、アウグスト選手、熊谷選手、中田選手、満男選手、エウレル選手、柳沢選手、隆行選手。センターサークルには、アントラーズでは初めての出場になるエウレル選手と、柳沢選手が入ってキックオフを待ちます。4-3-3のシステム、中盤は、中田選手が真ん中、右に熊谷選手、左に満男選手のようです。

　対するヴェルディは3-5-2のシステム。2トップは、エジムンド選手とマルキーニョス選手のブラジル人コンビです。

　岡田主審のホイッスルでキックオフ。アントラーズの選手がボールを蹴る前にエジムンド選手がラインを越えてしまい、やり直しになります。

　1分、エウレル選手がボールを持つと、3人のDFに囲まれますが、ドリブルで進み、シュートを放ちます。惜しくもバーに嫌われますが、7月に入ってチームに合流したばかりのエウレル選手、調子はいいようです。

　2分、中田選手がボールを持った選手にチェックに上がっていくと、満男選手は、首を振って状況を確認、ポジションのバランスを取ります。

　3分、ピッチ中央で満男選手がボールを持つと、長田選手に倒され、相手のファールになります。

　8分、相手陣内で、後ろの中田選手からの短いパスを、満男選手は胸トラップすると、浮き球を右足の甲で背中の方向に送ります。裏のスペースにエウレル選手を走らせる絶妙なパスですが、一歩早くDFにクリアされてしまいます。

　隆行選手に対するスタンドの声援はものすごく、ボールに触っただけで、「キャー!!」という甲高い声が響きます。

　11分、山田選手にタックルに入った隆行選手に、イエローカードが出されます。

　試合開始時には、スタジアム上空には、あまり雲がなかったのですが、この時間、暗い空から、パラパラと雨が降ってきます。といっても、パラッと降っては、すぐに止むので、プレーには全く支障はなさそうです。

　14分、ペナルティエリア内で、柳沢選手が後ろから足をかけられ倒されますが、岡田さんはファールを取りません。ファールをアピールするアントラーズの選手たちとサポーターのブーイングの中で、満男選手は、ヴェルディの選手に、素早くチェックに走ります。

　ヴェルディの中盤の右の長田選手が、満男選手のマークにつく場面が多いようです。満男選手は、背後に体を寄ってくる長田選手の体を腕を伸ばして押し、自分から離そうとします。

　満男選手は、相手のキープレーヤー、エジムンド選手がボールを持つと、素早くチェックに走ります。

　3トップに、アウグスト選手も積極的に上がりますが、遅攻になってしまうことが多く、相手のDFも数が揃い、ゴール前にスペースがありません。

　20分、自陣のペナルティエリア内でエジムンド選手が倒れ、秋田選手に対してイエローカードが出されます。両チームの選手が、主審に抗議に行きます。ペナルティエリアに入る前の秋田選手のファールに対して、アドバンテージを見ていたようです。

　22分、相手左サイドの相馬選手に素早く寄せていく満男選手。パスカットしたボールを、そのまま隆行選手に繋ぎ、カウンターになります。50mほどの距離を、ゴール前まで駈け上がった満男選手。エウレル選手からのパスがDFに当たって出てしまい、思わず大きく天を仰ぎます。

　23分、右サイドでボールを持つ名良橋選手に、満男選手は逆サイドで大きく腕を上げて、バックラインにボールを戻すように指示を出します。

　アウグスト選手から満男選手への縦パスを、満男選手はワンタッチで中に入れると、走り出します。柳沢選手がスルーしますが、エウレル選手に繋がりません。

　キョロキョロと首を振って、周囲を確認する満男選手の姿が、普段よりも目立ちます。慣れないシステムのせいなのか、それとも、代表チームに参加しているあいだに身につけた動作なのでしょうか。チームは4-3-3のシステムに戸惑っているようで、有機的な連動した動きが見られません。

　28分、高く上がったボールに飛び込んでいった隆行選手の顔に、DFの足が当たります。顔を押さえて倒れる隆行選手。プレーがなかなか途切れず、ボールを持った満男選手は、すかさずラインの外に蹴り出します。隆行選手が起きあがるあいだに、セレーゾ監督は柳沢選手に細かく指示を出します。その後、満男選手も、何か一言、二言指示を受けます。

　29分、ペナルティエリアのわずかに外、攻め上がった熊谷選手が倒されますが、ホイッスルは鳴りません。ヴェルディがカウンターに移ろうとするところ、満男選手は右サイドまでダッシュで走っていき、ボールを蹴り出します。

　30分、ルーズボールに飛び込んでいった満男選手に、長田選手の高く上げた足が当たり、満男選手は、左腕を抱え込むようにしながら、倒れます。ホイッスルが鳴らされファール。脇腹を蹴られたのでしょうか、立ち上がってからも、顔をゆがめて痛がる満男選手です。

　自陣でボールを持つエジムンド選手のマークにつく満男選手。腕を絡めて倒してしまいファールを取られます。

　32分、自陣中央でボールを拾った満男選手は、タイミングを計ると、右足を振り抜き、左裏のスペースに柳沢選手を走らせる70mほどのロングパスを出します。全力で駈け込み、そのボールに追いつく柳沢選手。この速攻に、アントラーズの他の選手が間に合わず、ゴール前には誰もいません。柳沢選手は、ロペス選手の前にうまく体を入れ、ファールを誘い、FKを取ります。ゆっくりとコーナー近くのポイントに歩く満男選手です。

　このくらいの時間帯になってくると、最初に甲高い声を上げていた女の子たちも慣れたのか、叫び疲れたのか、黄色い声は少し治まっています。

　34分、中に絞ってきたアウグスト選手からのタイミングのいい短いパスを、満男選手は前を見ながら柳沢選手にスルーパス。柳沢選手はシュートを打ちきれず、DFにクリアされてしまいます。

　36分、後ろからのパスをワンタッチでエウレル選手に通す満男選手。DFのクリアボールにすかさずアプローチして、裏のスペースにパスを出しますが、柳沢選手と意図が合わず、パスが通りません。

　40分、足の裏でボールを押さえながらキープ、タイミングを計って、DFの裏にロングパスを出しますが、DFにクリアされてしまいます。

　クロスボールを相手DFが跳ね返したところを拾い、ゴールから30mのところからシュートを放つ満男選手ですが、目の前のDFに当たってしまいます。

　41分、隆行選手が、ラフプレーの目立っていたロペス選手に、スパイクでスネを削られ倒れます。岡田主審は試合を止めません。アントラーズのゴールに攻め込むヴェルディ。アントラーズボールになって、ようやくボールを出すことができ、試合が中断されます。

　担架が運び込まれ、隆行選手がいったん外に出るあいだ、満男選手はベンチ前に給水に向かいます。ボトルを取ると、まず首筋にかけ、体の熱気を払おうとする満男選手。関塚コーチが近づき、細かい指示を送ります。ピッチに戻る隆行選手のスネには、ポイントで削られた後が、太い赤い筋になっています。

　ロスタイムは2分です。

　ルーズボールに足を上げながら飛び込んだ中田選手に、ホイッスルが吹かれます。そのホイッスルを聞いて、高く上がっていたボールを思いっきり叩き落とす中田選手。岡田さんは、異議としてイエローカードを出します。満男選手は、主審にでしょうか、指さして何か言っているようです。

　前半終了のホイッスルが鳴ると、秋田選手と隆行選手は、岡田主審のところに話に行きます。アウグスト選手は、ロペス選手に文句を言っているようです。ユニフォームの裾を引っ張り出しながら歩く満男選手に、後ろから熊谷選手が近づき、話しながらロッカールームに向かいます。前半途中に降り始めた雨は、ハーフタイムにも、パラパラと降ったり止んだりしています。

　8時5分頃、アントラーズの選手たちがフィールドに姿を現します。満男選手は、ピッチに足を踏み入れる前に、ボトルを取り上げると水を口に含みます。いったん含んだ水をはき出すことを2回。そして、一口だけ水を飲みます。

　ファビアーノ選手が満男選手に話しかけ、満男選手も、前の方を手で指し示したりしながらしばらく話し込みます。そのあと、今度は柳沢選手が話しかけてきます。いつも通り円陣が組まれると、ヴェルディボールで後半が始まります。

　後半1分、満男選手がボールを持つと、エジムンド選手が奪いに来て、後ろから満男選手の足を蹴ります。満男選手はスルーパスを狙いますが、これはDFにカットされてしまいます。

　2分、左のアウグスト選手から、ファーサイドの熊谷選手にクロスが入ります。熊谷選手がヘディングで落としたところに走り込んだ満男選手。ボールをコントロールしようとしますが、DFに後ろから倒されます。これにはファールがなく、満男選手も少し不服そうな表情を見せます。サポーターから小笠原コールが沸きます。

　3分、満男選手から、オーバーラップしたアウグスト選手にパスが通り、アウグスト選手のクロスに柳沢選手と熊谷選手が飛び込みますが、惜しくも打ち切れません。

　右からの満男選手のCKがクリアされ、左CKに。満男選手はトコトコと走ります。今日も、CKは総て満男選手が蹴っていますが、速く強いボールが多いようです。

　相手ボールになり駈け出す満男選手ですが、どことなく体が重そうに見えます。

　5分、満男選手は柳沢選手にくさびのパスを入れ、前に走り出します。柳沢選手が中田選手に戻し、中田選手が左ライン際を上がる満男選手にパス。少し長くて追いつきませんでしたが、満男選手のいい動き出しです。

　ハーフタイムで、修正されたのでしょうか、前半では、中央に切り込むように上がって行くことの多かったアウグスト選手の上がりが減っています。その分、前方にスペースができて、満男選手が高い位置にいることができるようになっているようです。前半は、チームのバランスを取るような動きが多かったのですが、後半になり、ボールに触る回数も増えています。

　11分、ボールを持つエジムンド選手との1対1。ボールを味方に蹴り出して奪い、カウンターに持ち込む満男選手です。

　12分、DFが振り切られ、エジムンド選手にシュートを打たれますが、曽ヶ端選手がパンチングで逃れます。

　ボールを持ったマルキーニョス選手を、満男選手が倒してしまい、ファールを取られます。

　満男選手は、自陣中央から、左裏のスペースにアウグスト選手を走らせる、ロングパスを出しますが、うまくコントロールができなかったようで、アウグスト選手が追いつけずゴールラインを割ってしまいます。バックスピンがうまくかからなかったのでしょうか。満男選手は、天を仰ぎます。右手でつかんだパンツの裾を、思いっきり引き上げる姿が、いかにも悔しそう。悔しさが治まらないのでしょう、もう一度、天を仰ぎます。

　13分、ペナルティエリアの外、左寄りでボールを受けた満男選手は、ゴール前の状況を見てシュートを放ちますが、バーを越えてしまいます。上を向いて悔しがる満男選手。両方の腿を、拳でポンポンと叩きます。足の調子が悪いようです。つりかけているのかもしれません。

　14分、エウレル選手の浮かしたパスに、ペナルティエリアの中、右隅に走り込んだ満男選手、DFと絡まって倒れますが、PKにはなりません。

　15分、ロペス選手の足がつり、担架が入るあいだに、満男選手とエウレル選手は声をかけ合っています。先ほどのプレーのことでしょうか、ジェスチャーで確認をし合っているようです。苦しそうな顔の満男選手。ライン際まで来て給水すると、そのボトルをエウレル選手に渡します。熊谷選手もエウレル選手と声をかけ合います。

　17分、右サイドの名良橋選手に、満男選手は大きく両手を挙げてボールを要求します。

　ヴェルディDFのクリアボールが低く飛んできて、後ろ向きに守備に入ろうとしていた満男選手は、体をくるりと回しながら、右足を高く上げ、カカトでゴールの方に蹴ります。

　18分、外に出ていたロペス選手に代わって林選手が入ります。

　19分、ヴェルディのコーナーキックの守備に入りながら、両腿を拳で強く叩く満男選手。顔をゆがめ、辛そうです。ポンポンと叩いてみたり、足を蹴り出すようにふってみたり、両足が張っているのでしょうか、つっているのでしょうか。この試合の満男選手の何本かのパスは、普段のなめらかで美しいものではないように感じていたのですが、足のせいかもしれません。

　20分、満男選手から、隆行選手に出したパスは合わず、ボールは右前のスペースに流れます。熊谷選手が必死で走って追いつこうとしますが、相馬選手に取られてしまいます。ヴェルディに今年1年、期限付き移籍をしている相馬選手と、名良橋選手や熊谷選手のマッチアップは、激しいものがあります。

　21分、ペナルティエリアのわずかに外、右寄りの熊谷選手の早い横パスを、満男選手はスルー、フリーのアウグスト選手がシュートを放ちますが、高桑選手が片手でパンチング、飛び込んだ柳沢選手の足にボールは当たりますが、シュートを打てません。相馬選手と同じく期限付き移籍中の高桑選手。ナイスセーブが、目立ちます。

　22分、カウンターになるアントラーズ。自陣深いところまで下がっていた満男選手は、走って上がることができません。

　23分、CKからの流れで、エウレル選手がループシュート。GKにキャッチされます。ペナルティエリアの中にいた満男選手は、両手で目の前のスペースを示し、エウレル選手に足元にくれればフリーだったと訴えているようです。

　右CK。出血があったのか、ゴールラインの外に出た中田選手に、ドクターが駈け出します。満男選手は、ショートコーナーを使います。

　25分、満男選手とのマッチアップの多かった長田選手に代わって、小林選手が入ります。

　27分、隆行選手に代わって本山選手が入ります。本山選手と握手をしながらピッチを去る隆行選手の表情は、得点を取れなかったせいか、納得がいってないように見えます。

　本山選手は中盤の前に入って、アントラーズは、1stステージ中断前までやってきた4-4-2のフォーメーションに戻ります。満男選手は、前に屈んでストレッチをします。ゲームが再開すると、さっそく、本山選手にワンタッチでボールを出し、積極的に使っていこうとする満男選手です。

　29分、至近距離からのエジムンド選手のシュートを、曽ヶ端選手がキャッチ。W杯で1度も出場機会がなく、満男選手と同じように悔しい思いをしただろう曽ヶ端選手のスーパーセーブで、この試合、アントラーズは何回も救われています。

　地面にはいつくばってボールを抱え込んだ曽ヶ端選手が、起きあがろうとするかしないかのうちに、満男選手は手を上げてボールを要求しますが、さすがの曽ヶ端選手も体勢を立て直すのに時間がかかって、満男選手にフィードできません。満男選手の、どの瞬間も抜け目なくゴールを狙っていく姿勢は、この試合でも変わりありません。

　31分、柳沢選手に代わって、左膝にテーピングをした長谷川選手が入ります。声をかけたベンチに向かって、満男選手は、分かっていると言うように手を上げます。

　左サイドで、林選手にボールが渡ってしまい、思わず下を向く満男選手。この少し前から、足取りは極端にたどたどしくなっていて、足がつっているように見えます。

　34分、中央でエウレル選手がボールを持つと、満男選手は、左サイドで大きく片手を横に上げて、ボールを出すように要求します。

　山田選手からボールを奪おうとスライディングした満男選手、倒れた山田選手が上に載るような形になります。少しのあいだ立ち上がれない満男選手。両手で、両方のふくらはぎを押さえています。顔をしかめ、ひどく痛そうです。

　35分、ゆっくりとしたパス回しから、一気に前のスペースにパスを出す満男選手。長谷川選手の頭に合いますが、GKにキャッチされます。

　アントラーズのベンチ前では内田選手が用意しています。ほとんど走れなくなっている満男選手との交代でしょうか。

　36分、ファビアーノ選手のフィードから、エウレル選手が確度のないところからシュート。ゴールが決まります。

　喜び合う選手たちの中で、中央近くにいた満男選手は、その場に、ガックリと腰を落とします。体育座りなったまま、しばらく動けずにいる満男選手。足を伸ばすと、前屈ます。そして、くるっと体を返して腕立て伏せのような姿勢になると、足の後ろ側をストレッチしています。

　自陣に戻った満男選手に、笑顔の本山選手が声をかけます。

　このゴールの直後、予定通り、内田選手が入ります。熊谷選手に代わってです。アウグスト選手がポジションを1つ上げ、内田選手は左サイドバックの位置に入ります。

　38分、逆サイドでヴェルディの選手が倒れているのを見つけた満男選手、ボールを外に出します。担架が入るあいだ、ベンチ前で給水する満男選手に、関塚コーチとセレーゾ監督がやって来て指示を出します。ピッチに戻った満男選手は、大声で中田選手を呼び指示を伝え、今度は本山選手にでしょうか、やはり大声で叫び指示を出します。

　41分、痛んでいた田中選手に代わり、平本選手が入ります。満男選手は本山選手と何やら大声で確認しているようです。

　自陣中央でボールを持った満男選手は、右サイドを上がる本山選手にロングパスを送りますが、DFにカットされます。思ったようにボールがコントロールできていないように見えます。

　42分、ヴェルディのシュートがバーを越えます。ゴールキックになるあいだ、満男選手は、またストレッチをしています。

　左サイドでボールを持つ小林選手に対応した満男選手、切り返しについていけず、パタンとピッチに膝を落としてしまいます。すぐに起きあがり、また小林選手を追いましたが、足が思うように動かないようです。

　終盤、アントラーズは一方的に攻められる展開。ゴール前で、必死に敵の攻撃をくい止めています。

　43分、自陣左サイドで、満男選手にボールを預けると、スピードを上げて上がって行く本山選手。本山選手がドリブルを始めようとした時、下がってきたエウレル選手にそのボールをさらわれてしまいます。バックパスするエウレル選手。上を向いて悔しがる本山選手。エウレル選手の加入で、スタメンのポジションを奪われた本山選手。ベンチに控えているあいだも、明るい顔でチームメートに声をかけていましたが、これは悔しいでしょう。

　44分、ヴェルディの攻撃からボールがラインを割ると、満男選手は、わざわざストッキングを、ふくらはぎの真ん中の高さくらいまで下げます。試合中には、いつも必ずストッキングをきっちりと上げている満男選手ですから、ものすごく珍しい姿です。暑いのか、それとも、足の決行をよくするという理由でもあるのでしょうか。

　ロスタイムは3分です。

　完全に引いて、ヴェルディの攻撃を耐えるアントラーズ。ホイッスルが鳴って、試合終了です。暑い気候、慣れないシステムで、とてもできがいいとはいえないアントラーズでしたが、ともかく勝ちました。

　満男選手は、その瞬間に、ガックリとうつむき、全く動かなくなります。しばらくして、両足をストレッチしてから、やっとのことで歩き出します。

　曽ヶ端選手や、何人かの選手たちとタッチを交わしながら中央に並んだ満男選手は、また、うつむきます。

　一礼が終わると、満男選手はヴェルディ側にいる相馬選手に近づき、笑顔で話しかけます。少し話し込んだあと、今度は、アウグスト選手に抱きつかれている高桑選手の胸をポンと叩き、楽しそうに言葉を交わします。

　広報のスタッフらしき男性が、満男選手に声をかけます。満男選手は、バックスタンドに向かって歩き出します。足が痛いのでしょう。顔をしかめています。すぐにロッカールームに引き上げていかないのが不思議なぐらいの、ぎこちない歩き方です。

　バックスタンドの前まで来て、片手を1回上げると、今度はホーム側のサイドスタンドへ向かう満男選手。コーナーの近くで、立ち止まってストレッチをします。そして、またギクシャクと歩き出すと、サイドスタンドにも片手を上げます。

　メイン側のコーナー付近で、スパイクを脱ぐ満男選手。よほど足が辛かったのでしょう。スパイクとスネ当てを両手に持って、歩いて行きます。そこに秋田選手が来て、満男選手に声をかけ、頭を叩いてねぎらってくれます。

　この試合は、この直後に、ベルギーリーグのチーム、ゲンクに期限付き移籍の決まった隆行選手の、ラストゲームになりました。隆行選手がヨーロッパで活躍できますように。満男選手のコンディションが上がりますように。そして、2ndステージに向けて、アントラーズがいい形で連勝を続けられますように。