2002/7/27(Sat)

　真夏の3連戦になったヴィッセル戦。前節、30℃を超える気温の中で行われた京都戦から中2日で、選手たちのコンディションが気になるところですが、夕暮れの鹿嶋には、京都と較べると天国にも感じられるような涼しい風が吹き抜けます。といっても真夏であることには変わりなく、少し体を動かすと汗ばんでくる陽気です。

　メインスタンド下のアップ場でのアップの合間に、満男選手がピッチのほうに近づいてきます。アウエイ側のサイドスタンドを、ボールを抱えながら見上げる姿は、少しリラックスしているように見えます。

　ホーム側のサイドスタンドの1Fが真っ赤。それに較べて、ヴィッセルのサイドはガラガラです。入場者数は1万8千人。カシマスタジアムの観客数は、アウエイチームのサポーターがどのくらい来てくれるかに、大きく左右されているようです。

　7時少し前、ライトに照らされたピッチに選手たちが入場してきます。満男選手は、いつものように写真撮影をすませると、ゆっくりと、ベンチ前のボトルに歩み寄りながら、ふと立ち止まり、感触を確かめるように両手で芝に触ります。ライン際まで来た石井コーチがボトルを拾い上げ、満男選手に笑顔で話しかけます。

　今日の主審は、今年のW杯の日本開幕戦で主審を務めた上川さん。片手でボールをわしづかみにして、ピッチの中央に出てきます。

　アントラーズは、熊谷選手と本山選手が警告累積で出場停止。ファビアーノ選手も前節の試合で脇腹を痛めて出場できません。CBには池内選手が、ボランチには本田選手が入り、野沢選手がスタメンでは初めて満男選手と2列目で組みます。

　ヴィッセルは、昨日、成績不振を理由に川勝監督の辞任を発表。今日の試合は、次の監督が決まるまでの暫定措置として、松田コーチが指揮を執ります。

　午後7時4分、アントラーズのボールでキックオフです。

　ポジションは、2列目の右に満男選手、左に野沢選手が入っています。1分、満男選手のファーストタッチに、2人の選手が厳しくプレスをかけに来ます。

　ボールは、主にアントラーズの左サイドを動き、野沢選手のボールタッチが多く、はつらつとした動きを見せてくれます。対する、満男選手は、少し引き気味の位置取り。バランスを取ることに気を配っているように思えます。

　前への飛び込みも、積極的に見せる満男選手。3分には、名良橋選手がボールを持つと同時に、前に飛び出していきます。

　5分、サイド寄りで野沢選手がボールを持つと、満男選手は手を上げてパスを要求。そのパスを速いテンポでDFの裏、エウレル選手に送りますが、オフサイドになってしまいます。

　7分、望月選手を倒し、名良橋選手にイエローカードが出ます。名良橋選手は、今季3枚目のイエローカードで、次節出場停止です。

　8分、自陣でのヴィッセルのFKのあと、アントラーズのカウンターになります。エウレル選手がドリブルで上がると、左サイドにふくらみながら駈け上がる満男選手。エウレル選手のパスは、中央のアウグスト選手に送られましたが、切れ味のいい満男選手の動きです。

　10分、柳沢選手が落としたボールを、野沢選手が右に走り込んだ満男選手に出しますが、DFにクリアされます。野沢選手、よく満男選手のことを見てプレーをしています。

　12分、野沢選手からのパスを受けた満男選手は、2人のDFにつぶされます。ヴィッセルの菅原選手は、特に満男選手を意識してマークしているようです。

　満男選手は、暑さの中で、運動量をやや抑えているようにも見えます。満男選手と野沢選手のポジションは、試合はじめからずっと固定されていたのですが、15分くらいから、ポジションチェンジが頻繁に、行われるようになります。

　21分、柳沢選手が倒されて取った、ゴールやや左寄りの30メートルほどの距離のFK。満男選手がホイッスルと同時に横に出したボールを、後ろから走り込んだ名良橋選手が豪快に蹴り込みます。ポストのわずかに外、ボトルを直撃する惜しいシュートです。
　引き気味でのヴィッセルですが、この時間帯、守備に入ると、FWの2人も含めて11人全員が自陣に下がってしまいます。

　いつも通り、守備の意識も高い満男選手。33分には、左サイドでゴールラインまで下がってヴィッセルの選手に対応します。

　31分、初めてのヴィッセルのCK。普段は、こぼれ球を拾えるペナルティアーク当たりにいる満男選手が、ゴール前の集団に入って行きます。三浦知良選手の動きを意識する満男選手。ゴール脇のボトルで、カズ選手が給水するところまでついて行きます。カズ選手をマークする役割を与えられているようです。

　ヴィッセルの選手の蹴る右CKは、ファーサイドで、満男選手のマークを外すようにゴールから離れる方向に動いた、カズ選手のヘッドにピッタリと合ってしまいます。至近距離からのシュートを曽ヶ端選手が体を張って止め、こぼれ球に反応した北本選手のシュートもバーに当たって外れ、アントラーズはピンチを逃れます。

　続くヴィッセルのCKでも、満男選手はカズ選手のマークに入ります。

　33分、ゴール前でエウレル選手からのパスを受けた満男選手は、タイミングを計り、得意の倒れながらのパスを、ゴール前に走りこんだエウレル選手に出しますが、GKにキャッチされます。

　35分、柳沢選手とのワンツーから、満男選手がワンタッチで、左サイドを上がる中田選手にパスを出します。手前にいたエウレル選手がオフサイドになってしまいましたが、速いテンポのいい攻撃です。中田選手、今日は本田選手とコンビを組んでいるせいか、前に上がる回数が多いようです。

　この時間帯くらいから、満男選手の走り方が、どことなくだるそうに見えるようになります。サンガ戦でも、試合途中で運動量が落ちていた満男選手。ハードスケジュールと暑さで、やはり、動けなくなってきているのでしょうか。

　40分、名良橋選手が痛んで担架で運び出されるあいだに、給水をする選手たち。セレーゾ監督は中田選手に盛んに指示を出します。関塚コーチが満男選手に近づいて、短い指示を送ります。

　43分、右サイドでパスを受けた満男選手は、オーバーラップをかける名良橋選手にヒールパスを送ります。追いついた名良橋選手は、逆サイドに強いパスを出しますが、ボールはDFにかすってしまい、野沢選手がうまくトラップできません。

　ロスタイム1分で、前半は終了します。エウレル選手が、厳しい表情で、主審に抗議しに行きます。前半途中から、何回か主審に抗議していたのは、ヴィッセルサポーターが突き出す旗のことでしょうか。

　少し前から辺りが煙って見えるのを不思議に思い、遠くに目を向けてみると、煙ではなく霧です。ハーフタイムに入った時には、かすかに煙っていた程度だったのが、15分の休憩のあいだに、みるみる濃くなっていきます。霧は、冷たい空気と一緒にやってきたようで、ひんやりとした湿気がスタジアムを覆います。

　満男選手はピッチに出てくると、両足を広げ、しこを踏むような格好になってストレッチをします。秋田選手が満男選手に話しかけています。円陣を組んだあと、ピッチに散ってから、今度は野沢選手が満男選手に近づいて話しかけます。満男選手も、手を前に指し示したりしながら、プレーの始まる直前まで2人はなにやら相談しています。

　後半開始すぐに、満男選手はハーフラインの後ろから、前線にボールを放り込みます。そのこぼれ球を、さらに前線に入れる満男選手。ハーフタイムに、何か指示が出たのでしょうか。後半開始時のポジションは、満男選手が右、野沢選手が左で、前半と同じですが、すぐにポジションチェンジします。

　アントラーズは、ミスもあって、うまくパスがつながりません。ヴィッセルのミスと、攻撃のつたなさに助けられているような感じです。

　5分、満男選手に落としたボールをDFに奪われ、エウレル選手は大きく手を上げて怒ります。

　7分、野沢選手が倒されての右FKを、満男選手が蹴ります。ボールは野沢選手の頭に合いますが、大きく上がってしまいGKがキャッチします。

　16分、名良橋選手のクロスに合わせ、ファーサイドで岡野選手の前に体を入れた満男選手は、突き飛ばされ倒されてしまいます。場所はペナルティエリアの中。PKと思われるシーンですが、審判はファールを取りません。間合いを計ってから、裏に入る動きが絶妙の、実にいいプレーだっただけに、残念です。

　17分、エウレル選手が倒されて得た、右寄りのFK。近くにいた野沢選手がポイントに立ちます。逆サイドからFKを蹴ろうとポイントのところまで行った満男選手は、野沢選手と一言二言、言葉を交わします。満男選手が譲り、野沢選手がFKを蹴ります。

　18分、左サイドで、アウグスト選手からのボールを奪われ、体を寄せて取り返しに行く満男選手。ヴィッセルの選手たちがパスを回す中、1人、チャレンジに行って粘ります。

　19分、ペナルティエリアのわずかに外、左の角辺りでパスを受けた満男選手は、速い横パスを出します。エウレル選手がスルーして、ペナルティエリア内まで上がっていた中田選手へ。中田選手はDFを背負いながらターンして、右の柳沢選手に出しますが、柳沢選手は倒されてしまいます。倒れながらも出したパスを拾った野沢選手が、右からクロス。飛び込んできたアウグスト選手がヘディングシュート。ボールはバーのわずかに上を過ぎましたが、一連の、流れのいい攻撃でした。

　アントラーズは、優勢に試合を進めていますが、ヴィッセルが引き気味なこともあって、攻めあぐねている印象です。

　23分、右CKは、野沢選手が蹴ります。満男選手、やはり足の調子がよくないのでしょうか。

　24分、アントラーズは、同時に2人を交代させます。本田選手に代わって青木選手。野沢選手に代わって内田選手が入ります。青木選手はボランチの位置に、内田選手は左サイドに入り、アウグスト選手がポジションを上げます。満男選手と2列目で組む形でしょうか。

　霧が少しずつ濃くなって、ボールの行方を、時々見失ってしまいます。内田選手は、それを利用するように、長いループシュートを放ちますが、GKにキャッチされます。

　26分、ピッチ中央で満男選手がワンタッチでさばいたボールからチャンスが生まれます。そのパスを受けて、左サイド、ゴールラインまで上がった中田選手が速いクロス、GKがファンブルしたところに、青木選手、内田選手が詰めますが、シュートを放てません。

　27分、左CKは満男選手が蹴ります。

　28分、名良橋選手のスローインを柳沢選手が受け損ない、ボールがラインを割ってしまいます。満男選手は、激しく手を叩き、声を荒げます。

　霧のせいで涼しくなってきたせいか、体のキレが目に見えてよくなった満男選手、視野の悪い中を、思い切り走り回ります。29分、右サイドをドリブルで上がり、前のアウグスト選手に鋭いパスを出すと、そのまま中に切れ込んでいきます。左の内田選手にパスが渡ると、フォローに行き、内田選手からのパスを素早く、左前方のエウレル選手に。このパスを受けたエウレル選手は、DF2人を抜いて、ゴール前まで持ち込みシュート。2人のDFとGKの横をすり抜けたボールは、ゴールネットを揺らします。エウレル選手の個人技で、貴重な先制点です。

　32分、名良橋選手がボールを持つと、ペナルティエリア内で、エウレル選手、柳沢選手、アウグスト選手が待ちかまえます。ペナルティエリアの後ろでも、満男選手が大きく手を上げています。名良橋選手が後ろに戻したボールを、青木選手は満男選手へ。ダイレクトで放った強烈なシュートは、ゴールの左をすり抜けます。

　34分、ルーズボールを拾った満男選手は、ペナルティエリアの左隅の少し外側から、ループシュートを狙いますが、GKにキャッチされます。

　38分、アントラーズのピンチを曽ヶ端選手が体を投げ出して防ぎます。今日も、最後のところで踏ん張っている曽ヶ端選手。4点くらいは彼の力で止めたでしょうか。

　選手交代のあと、アウグスト選手のポジションが前になってから、左サイドに開いていることが多くなった満男選手。ライン際で、スライディングでの守備も見せます。

　40分、エウレル選手がボールを持つと、手を上げる満男選手。いったん下がってボールを受けるフリをしながら、一気にゴールに向かって走ります。そこにエウレル選手からのぴったりのパス。満男選手はうまくトラップできず、思わず、仰向けに倒れてしまいます。霧でピッチが湿っているのでしょうか。

　奪われたボールを、満男選手はがむしゃらに取り返しに走ります。ショルダーチャージでうまく奪い返すと、すばやく左サイドのエウレル選手に。そこからのエウレル選手のシュートは、GKが片手でパンチングし、逃れますが、絶好のチャンスになりました。

　41分、柳沢選手に代わって、長谷川選手が入ります。

　44分、左CKを蹴った満男選手、クリアされて右CKになると、小走りの格好をしながら、ゆっくりと進み、時間かせぎをしながら右コーナーに向かいます。

　ロスタイムは3分。

　試合の最後の最後に、曽ヶ端選手がまた、ヴィッセルのシュートを防ぎます。そして48分、右サイドで平野選手がボールを持つと、満男選手は思いっきりディフェンスに走ります。最後の最後まで、集中を切らさないプレーです。

　ホイッスルが鳴って試合終了です。満男選手は、歩きながらストッキングを下げます。そして、うつむいてしばらく動けなくなります。ようやく体を起こすと、味方の選手たちと、タッチを交わしながら整列。一礼するとヴィッセルの選手のほうに向かいます。一番、遠くまで歩いていって岡野選手とタッチを交わした満男選手は、内田選手や、秋田選手と話しながらバックスタンドに向かいます。

　バックスタンドに軽く片手を上げるとホーム側のサイドスタンドに。霧の中、サポーターに挨拶です。片手を軽く上げると、ゴール脇のボトルを拾い上げて、飲みながら歩きだします。アウグスト選手が、近づいて肩を抱いて話しかけます。よほど喉が渇いたのか、何回も水を飲みながら歩いていく満男選手です。

　2週間前、W杯のあとの始めての試合になったヴェルディ戦で足がつってしまい、その後の2試合、慎重に動いていたように見えた満男選手。今日の試合で、最後まで運動量が落ちなかったのは、自信になったのではないでしょうか。4試合を残し、首位との勝点の差は10。1stステージの優勝は、ほぼ、なくなってしまいましたが、すぐに始まる2ndステージに向けて、これからが楽しみになってきました。