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2002/12/25(Wed)

天皇杯準々決勝 フロンターレ戦

 冬のナイトゲーム。試合開始前からしんしんと冷え込む寒さと、薄いもやがスタジアムを包んでいます。平日の夜にもかかわらず、ホーム側のサイドスタンドを、大勢のアントラーズ・サポーターたちが赤く染めています。今日は、クリスマス。サンタクロースの格好をしたサポーターの姿もちらほらと見かけます。

 準々決勝の対戦相手は、J2で唯一ベスト8に勝ち上がってきたフロンターレ。サポーターは、アウエイ側のサイドスタンドの自由席、バックスタンド寄りの見やすい位置に陣取っています。人数は200人ほどでしょうか。

 ピッチでは、フロンターレのみがアップを行っています。アントラーズは、いつものように、スタジアムの外のアップ場を利用しているのでしょう。場内に流される選手紹介は、なぜかスタメンの選手のみ。サブメンバーの紹介がありません。

 午後7時。ベンチコートを着込んで選手たちが入場してきます。アントラーズは、3日前の4回戦と同じメンバー。フロンターレには、元アントラーズの鬼木選手、ベンチには小林選手がいます。

 写真撮影のあとに、ピッチに散った満男選手は、秋田選手にロングパスを送りますが、それてしまい、ボールはピッチの外まで点々と転がります。4回戦の前のアップ中も、パスの精度が悪いように見えた満男選手、調子が悪いのでしょうか。それとも、ピッチの状態がよくないのでしょうか。

 イン・ファイトから送られる小笠原コールに、満男選手は、普段通り、片手を軽く上げて応えます。

 アントラーズのボールでキックオフ。満男選手は、クリアボールを拾おうとして、足を滑らせて倒れます。その後も、本山選手が足を滑らせたり、何げないパスがミスになったり、少しプレーがやりづらそうです。雨は降っていませんが、もやがかかる天気。芝が湿っているのでしょうか。

 満男選手のコーナーキックから、名良橋選手のミドルシュート。名良橋選手は、流れからもミドルシュートを放ち、積極的です。今日のアントラーズは、3日前とは全く違う動きを見せ、前線からプレスをかけ、高くラインを押し上げています。フロンターレも、守備的ではなく、コンパクトに戦ってきています。フィールドの全選手が20メートルほどの幅の中にいることもあるくらいで、両チームの積極性が目立ちます。

 フロンターレのCKキッカーは、今野選手。大船渡高校出身の満男選手の先輩で、この試合は、大船渡高校OBの、プレースキッカー対決でもあります。

 満男選手は、DFラインの裏を狙って、柳沢選手にパスを送ります。満男選手を中心に、うまくボールが回っている印象です。15分、曽ヶ端選手がキャッチしたボールを、満男選手にスロー。満男選手は、左前のスペースに、柳沢選手を走らせる見事なロングパスを送りますが、惜しくも、柳沢選手のトラップがミスになってしまいます。

 積極的に、前線にも出ていく満男選手。本山選手からのパスは合いません。

 21分、中田選手からのパスに、DFの裏に抜けた柳沢選手はシュートを打ちますが、惜しくもゴール左に外れます。

 フロンターレのCKのクリアボールが、相手選手の前に落ち、シュートを放たれますが、曽ヶ端選手がなんとか防ぎます。アントラーズの方が、やや優勢に試合を進めていますが、フロンターレにも攻め込まれます。フロンターレの選手のクロスの精度の悪さや、ゴール前での落ち着きのなさに救われている感じです。ブラジル人選手が、全員、帰国してしまったフロンターレ、決定力には欠けるようです。

 エウレル選手がペナルティエリアの左端からループシュートを狙いますが、ゴール上に外れます。

 26分、攻め込むアントラーズ、ゴール前の混戦から柳沢選手が倒れながら戻したボールを、本山選手が満男選手につなぎます。満男選手は、すかさず、前に走り込む柳沢選手にピッタリのパスを出し、GKと1対1になった柳沢選手は、ボールを浮かせてゴールを狙いますが、GKが、なんとか片足で防ぎます。

 今日も、青木選手は、積極的にミドルシュートを狙っていっています。

 エウレル選手は、守備時に下がり気味のポジションを取り、前線からのプレスに参加しない場面もみられます。ケガから復帰して、もう2ヶ月ですが、コンディションは戻ってこないようです。

 守備にも頑張る満男選手。自陣深くまで下がり、ボールをクリアします。

 38分、こぼれ球を拾った満男選手、左足でシュートを放ちますが、ゴール左にそれてしまいます。

 自陣、深い位置で、アウグスト選手からボールを受けた満男選手は、ヒールで青木選手につなごうとしますが、鬼木選手にカットされてピンチを招きます。満男選手らしくない軽いプレーです。

 44分、池内選手が、相手FWを倒しイエローカードを受けます。相手選手は担架で運び出されます。

 ロスタイムは1分。今野選手が狙ったFKはバーの上に外れ、0-0でハーフタイムを迎えます。積極的に攻めに来ているフロンターレ。逆に、DFラインの裏には大きなスペースがあり、後半には、得点ができる気がします。

 後半開始時、フロンターレは、選手を交代します。前半終了間際に傷んだ黒津選手が、川田選手に代わります。

 いっそう冷え込んできたスタジアム。後半開始早々、フロンターレの選手が傷んで手当を受け始めると、曽ヶ端選手は、ゴール前を走って行ったり来たりして、体を冷やさないようにしています。

 アウグスト選手のスローインを受けた青木選手。グラウンダーのミドルシュートを放ちます。アントラーズ、後半も積極的です。

 柳沢選手の落としたボールを、本山選手が右サイドからクロスを上げ、中央でエウレル選手がヘディング。辺りが薄く、ゴール左に外れます。長身のバックラインを相手に、高いボールでは、なかなか競り勝てそうにありません。

 フロンターレのカウンター。アウグスト選手は、ものすごい速さで駈け戻ります。

 7分、相手陣内中央でパスを受けた満男選手は、本山選手とのワンツーで、前線に走り込みますが、一歩、間に合いません。この試合、本山選手が満男選手をうまく使う形での攻撃が見られています。

 9分、柳沢選手とのワンツーで上がろうとした満男選手、3人の選手に囲まれボールを奪われます。その時、相手選手に当たったのか右肘を曲げ、痛そうな様子を見せます。プレーが続行している中、様子のおかしい満男選手を心配して、ベンチからドクターとトレーナーが飛び出してきます。痛がりながらもプレーを続ける満男選手に付き添うように、2人はライン外をついて歩きます。

 腕を振ったり、しばらく苦しんでいた満男選手ですが、大きなケガではなかったようで、ドクターのチェックを受けることなくプレーを続けます。

 その後、少ししてから、今度はアウグスト選手が肩を痛めた様子でラインの外に出ます。治療を受けたアウグスト選手は、副審の許可を得てピッチに戻りますが、主審への合図はなかったようです。本来ならイエローカードをもらってしまう場面かもしれません。

 14分、ボールを奪って中田選手にパス、リターンをもらおうと、ペナルティエリア内に走り込んだ満男選手は、鬼木選手に足をかけられ倒されます。1回転した満男選手は、どこか痛めたのか、立ち上がることができません。プレーが続く中、戻したボールから、もう一度、アントラーズが攻め込むと、オフサイドにならないように、なんとか立ち上がります。

 右のCK、満男選手は、2回立て続けにニアサイドの池内選手に低いボールを蹴ります。

 ベンチには、本田選手が準備しています。

 19分、柳沢選手が落としたボールを、満男選手は、ワンタッチで左前のスペース、オーバーラップするアウグスト選手にピッタリにパスを送ります。追いついたアウグスト選手は、得意の、ゴールから離れる方向にカーブがかかったクロスを上げます。そのボールは、ゴール正面に走り込むエウレル選手とキーパーの頭を越え、ファーサイドに走り込んだ本山選手が、ゴールエリア内でダイレクトボレー。キーパーに当たったボールは、そのままゴールに吸い込まれます。アントラーズ、念願の先制点です。

 ゴール裏に向かって喜びのポーズを取る本山選手。普段なら、ゴールした選手におぶさりに行くアウグスト選手は、余力がないのか、そのまま自陣に小走りに戻り、満男選手とハイタッチします。

 中田選手からの縦パスを受け、体の動きで、うまく相手をかわした満男選手は、ゴールライン際からマイナスのパスを出しますが、これはDFにクリアされます。満男選手、今日は比較的、高い位置でプレーができているようです。

 アントラーズは攻撃の手をゆるめず、ペースをつかみパスを回します。

 24分、林選手に代わって、元アントラーズの小林選手が入ります。

 柳沢選手の走り出しに合わせ、パスを送る満男選手。ミスパスになりDFにカットされると、裏を狙うパスだと意図を伝えるように、片手を上げ柳沢選手に合図を送ります。

 フロンターレの右サイドから、小林選手にクロス。曽ヶ端選手が出て、防ぎます。

 27分、柳沢選手に代わって本田選手が入ります。アントラーズは、4-3-2-1のフォーメーションでしょうか。

 ゴールから30メートルほどの距離、やや左寄りからのFK、ポイントには満男選手が立ちます。直接狙うと見せて、素早くボールを受けに動き出した、壁から離れた位置にいた右の中田選手にパス。中田選手がワンタッチで前に走り込む秋田選手にボールを送り、秋田選手はヘディングで右のエウレル選手に落としますが、惜しくもシュートになりません。

 アントラーズは、中田選手、アウグスト選手、満男選手と左サイドで、うまくトライアングルを作ってパスが回ります。

 33分、本山選手に代わって野沢選手を入れます。ポジションは本山選手と同じところ、2列目の左のようです。

 野沢選手は、高く上がったクリアボールを、低く抑えたボレーでゴールを狙いますが、右にそれます。

 35分、エウレル選手に代わって長谷川選手が入ります。主審に急かされて、エウレル選手はタッチラインから外に出ます。

 名良橋選手の右からのスローインに、満男選手はスルスルとゴールライン近くまで上がります。名良橋選手のボールを、満男選手はワンタッチでゴール前の長谷川選手に送りますが合わず、GKがキャッチします。

 フロンターレは、今野選手に代えて木村選手を入れます。4バックになったようです。

 左からのFKを、野沢選手が蹴ります。ここからのカウンター、左サイドからのクロスを曽ヶ端選手がガッチリキャッチします。フロンターレの焦りが見えます。

 40分、満男選手が、自陣深い位置で、ボールを奪おうとして相手を倒しフロンターレにFKを与えます。このFKを、ファーに飛び込んだ小林選手がフリーでニアに落とし、フロンターレに決定的な場面を作られます。飛び込んだ選手と1歩合わず、ボールはそのままゴールラインを割り、アントラーズは命拾いします。

 42分、左寄りでボールを受けると1人交わして、前に飛び出した満男選手。ゴール前にパスを出しますが、かろうじて相手DFがクリアします。

 アントラーズのミスが、2つほど続きます。

 ロスタイムは2分。満男選手が最後の力を振り絞って、最前線で相手DFにプレスをかけに走り込んだところでホイッスルが鳴らされます。1-0。最少得点でアントラーズの勝利です。

 両チームが1列に並んでの挨拶のあと、鬼木選手と小林選手にアントラーズの選手が寄っていきます。鬼木選手の頭を軽く叩く秋田選手。満男選手も、2人と声をかわします。同じアントラーズユース出身の曽ヶ端選手も、明るい調子で小林選手に声をかけています。

 ホーム側のサイドスタンドの観客に、ほかの選手と一緒に来た満男選手は、軽く手を上げて声援に応えます。名良橋選手に声をかけられ、何やら話しながら、満男選手はゆっくりと右腕を曲げ伸ばしします。後半の始めに傷めた肘の痛みは、プレー中は感じさせませんでしたが、どうやら、まだ違和感があるようです。満男選手は、右肘を、曲げたり伸ばしたり気にしながら、メインスタンド下に去って行きました。

(ホーム側サイドスタンド後列、バックスタンド寄りから観戦)

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