2000/11/18(Sat)

　田んぼに囲まれた鳥取バードスタジアム、天気は曇り。ときに日が差す陽気でした。

　私服のまま、投げ込みに来る満男選手。ピッチでは、子どもたちのサッカーが繰り広げられていて、そのハーフタイムに出てきたのかな。いつものように、かがみ込んで、両脇に手を下ろして、ピッチを直接触って、状況の確認をする満男選手。今日は、2カ所くらいでそんな姿を見せたあとに、いつも通り、メインスタンドの方向に帰っていきました。メインスタンドに投げ込みをするのかと思ったら、本田選手とゴール裏のほうに歩き始めます。どうやら、ゴール裏の少年サッカーチームの一団を見つけて、そこにグッズを渡していったようでです。

　着替えて出てくると、メインスタジアム下の、アップ場で、鳥かごをやる満男選手。曽ヶ端選手、内田選手、関ドクターなどが相手。とっても楽しそうに見えます。

　今日のアップは、本山選手と組んで。一度、地面にあるボールを蹴ろうとしてかな、なんだか、ボールが足に触れなくて、ずいぶん、妙なプレーがあったのですが、試合中にも1回、空振りしてたと思います（笑）。そうそう、本山選手とストレッチをしながら、ずいぶん、サンフレッチェの選手たちがアップをしている方向を見ていた満男選手。なにを気にしていたのかしら?

　前節に続いて、ビスマルク選手が出場停止。CK、FKを蹴るのは満男選手です。ボール回しの途中で、しっかり止めたボールを蹴る練習もしているようです。

　みんなが揃って同じ動作をするのに、なぜかこの日は、本山選手と満男選手だけヘディング練習を省略。ちょっと長めのパスを蹴りあってました。そして、ダッシュにはいる前に、シュート。これ、はずれちゃって、ゴール裏のサポーターのところに飛び込んじゃったんじゃないかな。バードスタジアムは、サッカー専用スタジアムで、ピッチが近いんだけど、ボール蹴り込んじゃうと、ちょっと格好悪いよね（笑）。満男選手、ダッシュの途中で、すかさず手近なボールを引き寄せて、もう1本。これは、ちゃんと決めてました。そして、帰り際に、確か、いつも通り1本蹴って。これも決まったと思ったけど、今日はコーナーキックの練習はせず、さっさと上がっていきました。

　選手入場後、一列に並んでいるとき、前屈して腿の後ろ側を伸ばすような仕草をする満男選手。円陣を組む前には、手を叩いて気合いを入れます。

　キックオフ時、右の熊谷選手のほうが前側で構えていて、今日はボランチ3人ではなく、中盤を台形にして、熊谷選手が右の攻撃的MFの位置にはいるようです。遠い記憶だから、はっきり憶えてないけど、この日は本田選手が好調。満男選手は、特に前半は、左サイドライン際でプレーすることが多かったと思います。アントラーズ、最初はコンビネーションが合わず、満男選手もあまりしっくりいかないようでしたが、徐々に攻守にかみ合っていきます。

　10分に、平瀬選手が相手選手と接触、左膝を痛めます。プレーを続けていた平瀬選手ですが、痛みが強いらしく、外に出て関ドクターのチェックを受けます。このとき、満男選手、一人出ていることを、大きな身振りでほかの選手たちに知らせていました。結局、平瀬選手はプレーが続行できず、柳沢選手に交代になります。アジアカップで体調を崩して、まだ、コンディションの戻りきっていないらしい柳沢選手。少し、体のふんばりが利かない感じもありました。

　16分、アントラーズのカウンター、隆行選手が、右サイド前方に走る満男選手にぴったりと合わせたロングパス。満男選手、ジャンプして右足の先に当て、きれいにトラップすると、ゴール前に走り込む熊谷選手の前方にクロスを入れます。これはサンフレッチェDFに、かろうじてクリアされてしまいますが、いい攻撃でした。

　ハードなコンタクトで挑んでくるサンフレッチェ。足元にタックルに来た選手を、うまく飛び越してドリブルを続けようとした満男選手を、森保選手が後ろから体を抱きかかえるようにして倒して止めます。カードは出ず、満男選手、審判に抗議します。

　この直後の26分、ゴール右から隆行選手の強烈なシュートは、GK正面。こぼしたボールをクリアしようとするDFとGKが交錯するような形になり、オウンゴールで、アントラーズ先制です。こぼれ球に、すかさず詰めていった熊谷選手の気迫から生まれたようなゴールでした。

　満男選手は、この1点のあと、大きく喜びを表すこともせず、相馬選手となにやら確認。何やらしっくりいかないところがあるようです。

　サンフレッチェのDF2人くらいに詰め寄られても、ボールをキープし、確実に見方に繋ぐ満男選手。大きな声でコーチングも。ボールを持った秋田選手を、「アキ!!

　アキ!!」と呼びます。相手FKの時に、前線に残っていた隆行選手を厳しい口調で「タカ!!　タカ!!」と呼び、守備に入らせたり、満男選手の気迫が伝わります。

　44分頃、カウンターで前に走り込む満男選手、右サイドの裏のスペースで柳沢選手がボールを持ったと同時に、素早く斜め後ろに移動、柳沢選手からのパスは、DFに読まれてクリアされてしまいましたが、満男選手の鋭い体の切り返しの見られたプレーでした。

　ロスタイム、左サイドで、沢田選手の持つボールを奪いに行こうとした満男選手、ライン際で切り返した沢田選手のスネが、右スネに強烈に当たってしまいます。マイボールを主張して手を上げながらも、もう、右足を付くことができず、すぐにピッチの外に出て、関ドクターとトレーナーの方にケアされます。スプレーをかけてもらい、ピッチに戻ります。ほんのわずかですが、足を引きずるように走る満男選手、いったんピッチに立てば、痛みを感じさせるような仕草を見せることなど、めったにない満男選手、よほど痛いのでしょう。サブのメンバーに、野沢選手が入っていないから、ケガがあっても無理して最後までやるしかないのだなと思っていたのですが、こういうイヤな予感は当たってほしくないもの。1stのジェフ戦のときのように、プレーを続けているうちにこじらせはしないかと心配になります。

　久保選手のシュートを、高桑選手が逆サイドに振られながらも、片手1本で止めるスーパーセーブがあって、前半終了。センターサークル内にいた満男選手、ホイッスルが鳴った途端に、その場に崩れ落ちてしまいます。ベンチからかけだしてくる関ドクターに体を支えられて、ようやく立ち上がると、肩を貸してもらい、右足をようやく付くように歩いて、ロッカールームに消えていきます。

　後半、交代することなくピッチに姿を見せた満男選手、サンガ戦のときと同じように、もみあげをいじって整えている様子です。はっきりと足を引きずる様子は見せませんが、痛み止めを使っているのかもしれません。後半、FKを名良橋選手、中田選手に任せることもあったのは、足に負担をかけたくなかったせいかもしれません。

　17分には、前半から激しいコンタクトを見せていたコリカ選手が、満男選手の背後からジャンプしてボールを奪い取ろうと、顔の前にスパイクを上げ、倒れ込む満男選手の後ろ頭を、肘打ちするような形になります。頭を押さえて倒れる満男選手。危険なプレーです。

　20分、サンフレッチェのFK、相手のヘディングが隆行選手の頭に当たり、コースが変わってしまって、ゴール。同点に追いつかれてしまいます。

　前半に比べて、左に流れることの少なくなった満男選手、中央でボールをさばき、チャンスを作り続けます。

　22分、後方、中田選手がボールを持つと、満男選手は前方を確認しながら、素早く寄っていき、フリーの位置でパスを受けます。左足でトラップ、振り向きざまに右足でDFラインの頭を越すミドルパス。裏に走り込んだ柳沢選手が、足に当てることができずシュートになりませんでしたが、足先に少し当たりさえすればという、絶妙のパスでした。

　25分、中田選手からのロングパスを、逆サイドで受けた満男選手、ターンすると中央に進み、タイミングを計ってファーサイドにクロスを上げます。隆行選手がジャンプする、すぐ手前で、GKにキャッチされましたが、いい攻撃でした。

　36分、右サイドで、相手DFのミスパスを胸でトラップした満男選手、すかさず、ペナルティエリア内右寄りにいた隆行選手にパスを送ります。DFに競り勝った隆行選手、角度のないところから思いきりシュートを打ちますが、GK正面。

　39分、右サイドで見方から出たボール、DFに前に入られてしまいます。手を後ろに回して満男選手の体を掴みブロックする上村選手。満男選手は、巧みにその手を振り払うようにして引っ張り、上村選手を後ろに倒します。やられたらやり返す。これがきっちりできるようになって、イエローカードの枚数が、ぐんと減ってきたような気がします。

　40分、慣れないポジションで奮闘していた熊谷選手に替わって、本山選手が入ります。ポジションはそのまま攻撃的MFでしょうか。

　43分、左サイドに出たボールを追って、ゴールライン近くまで進んだ満男選手、中を見て、ペナルティエリアに入ってくる隆行選手に浮き球のパスを出します。巧みに胸でトラップした隆行選手でしたが、打ち切れませんでした。

　ロスタイムに入った45分、中央ハーフライン付近でボールを受けた満男選手、ドリブルで一気に前に進みます。DF3人を引きつけて、ペナルティエリア直前で、左の隆行選手にスルーパス。隆行選手、フリーでシュートしますが、ゴールマウスの左でした。

　勝ち点3の欲しいアントラーズ、全員が必死で攻撃を続けます。ベンチからも「オガ!　オガ!」とセレーゾ監督の大きな声が飛びます。後ろから出たパスに走り込んだ満男選手、前線にパスを送ろうとした瞬間に、前からスライディングで桑原選手に入られ、宙を飛ぶような形で前方に転びます。避けきれず足がかかってしまったようで、手で左足首を押さえるようにしながら、全く動くことができません。満男選手が、まだ立ち上がれずにいる間に、ファビアーノ選手が早いFKを蹴りますが、これでカウンターをくらってしまい、高桑選手の右手1本でのスーパーセーブで、後半終了になります。

　いったんは立ち上がり走り出していた満男選手、立ち上がり方は、それほど痛みを感じさせないもので大丈夫かと思っていたのですが、ホイッスルと同時に、その場に座り込みます。ゲームが続いている間は、攻守にわたって走り続け、チャンスを作り続けて、全くケガのことなど感じさせないプレーを見せている満男選手、ホイッスルが鳴って集中が途切れた途端に、痛みが襲ってくるのでしょうか。その姿に、満男選手の精神力を感じずにはいられません。

　延長に向かう間、満男選手は、ピッチ上で、右スネにあっという間に氷の入った袋を包帯で巻き付けられて、アイシングされます。足首の方は、手当てをしなかったので、特に問題はないようです。

　延長前半は、TVでの放映もなく、メモも取っていなかったので、幻の15分間ですね（笑）。3分に相馬選手に替わって、長谷川選手が入り、中田選手が左サイドバックに。ボランチの位置が本田選手一人になって、満男選手は、少し下がり目でプレーしていたと思います。

　印象的なプレーは、DFを完全に抜いて、ゴール前、やや右よりで、GKと1対1になったシーン。2月のアジアクラブ選手権や、ナビスコカップ準々決勝F・マリノス戦の第1戦と同じように、冷静にキーパーの動きを読んで、一瞬置いてGKの上を浮かせるように打ったんですけど、ゴールの右に外れてしまいました。決定的なチャンスだったんですけど。

　それから、柳沢選手が見事なシュートを叩き込んで、ゴールネットを揺らしたのですが、オフサイド。このアシストは、多分、満男選手だったと思います。

　延長後半に入るところで、右足首を押さえて気にする満男選手。スネのケガで足首に無理がきてなければいいのですが。ゴール前に攻め込み、押し込んではいるものの、1点を取れないまま時間がすぎます。11分、本山選手が、個人技で持ち込みゴール!　ようやく、アントラーズ、勝ち点2を得ることができました。

　ゴールと同時に、ピッチに倒れ込んだ満男選手。多分、痛みのせいではなく、攻守にわたる奮闘でエネルギーを使い果たし、燃えつきてしまったのでしょう。そのまま、しばらく起きあがれずにいました。ゆっくりと整列に向かって歩いていた満男選手ですが、やはり一礼に間に合わず、メインスタンドに手を上げ、ふらふらと柳沢選手に近づきます。柳沢選手、満男選手の頭を抱え込むように健闘を讃えますが、満男選手は、プレーのことが話したかったらしく、ジェスチャーで、DFの裏をとるパスのように左手の壁を右手で越えさせて、なにやら熱心に話します。柳沢選手も、それに答えてしばらく二人で話し込みます。120分近い試合の直後に、もう、次の試合のことを考えている二人。その熱心さに胸が熱くなります。

　ごく軽くですが、足を引きずりながらスタンドに向かった満男選手、小笠原コールに向かって、両手を上げて答えました。いつもは片手を上げるだけの満男選手、今日はちょっとだけ満足感が大きかったのか、それとも、最初にグッズを渡したサッカーチームの少年たちへのサービスだったのかもしれません。

　試合が終わるのを待っていたかのように、ポツポツと雨が降り始め、みるみるうちに本降りになりました。首位をキープしたままラスト2試合に向かうアントラーズ。この後、ガンバ、レイソルと、直接対決が続きます。

（バックスタンドより観戦）