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2001/2/9(Fri)

宮崎キャンプ3日目

午前

  迷いながらキャンプ地に着いたのが、午前10時20分。朝の練習は9時から始まっていたはずで、ほとんどの選手たちは、コート2/3くらいを使ったゲームをやっていました。天気は晴れ。歩いているうちに、軽く汗ばむような南国の陽気です。行われていたのは10対10のミニゲーム。ディフェンダーが前に入ったり、いつもと違った顔を見せてくれてます。 

  満男選手は、白熱したミニゲームを横目で見ながら、金古選手とフィジカルトレーニング。フィジカルコーチのリカルドさんがつききりです。ものすごく険しい顔をして、並べてあるコーンを、ジグザグに走ったり、8の字を描くように走ったり。金古選手と交代でやってもキツイらしく、中に休憩を挟みますが、その休憩の間には、みんながやっているゲームの方を、ずっと見ています。いつもの短パンにウインドブレーカー姿ですが、体を動かしたせいで暑いのでしょう、ストッキングを思いきり下げています。 

  この、別メニュー2人組とはまた別に、地べたに足を広げて、ゲームを見ながらじっとしているのが熊谷選手。スポーツ新聞によると、左太腿の違和感だそうで、わたしが着くまでにどの程度の練習ができたのか。あまり、深刻ではないといいのですが。 

  満男選手と金古選手の行っている、フィジカルトレーニングは、相当きつそうで、満男選手、後ろ向きに走りながらコーンのところでターンしようとして、コーンを引っかけてしまい、照れ笑い。続けて、また、ほかのコーンも動かしてしまいます。足が、少しよれてきているみたい。「このコース……」と、コーンの置き方に文句をつける勢いの満男選手、金古選手は、昨日張り切りすぎたからと言ってなぐさめているようです。 

  リカルドコーチとも、何かしゃべっているのですが、何語なのかしら。コーチ、数は、日本語で数えます。ボールを使って、左右に走りながら、コーチの投げたボールを、ツートラップで返す練習、「キュウ」「ジュウ」と、リカルドさんの声がしてます。ボールを使い始めてからも、ワンセットやる毎に、休んでは、じっとゲームの方を見入っている満男選手です。 

  ゲームが途切れると、満男選手、おもむろにボールを転がしながらピッチの中に入っていきます。ゴールを狙う満男選手に、高桑選手が気づいてくれて、1対1。満男選手のふわりと浮かせたループシュートは、見事に枠の中、バーのわずか下に飛びますが、高桑選手が片手でパンチング。満男選手「クソー」と悔しがります。 

  何セットか、ボールを使ったトレーニングもこなして、満男選手、ばったりと地面に倒れます。どうやら、きついフィジカルトレーニングは、これで終了のよう。ちょっとだけ倒れていた満男選手、さっそくボールを引き寄せると、金古選手と蹴り始めます。最初は短い距離から、だんだんと距離を伸ばして。距離が伸びてくると、どうやら今日は、トラップがうまくいかないらしくて、トラップを、大きく横に反らしてしまって「しまった」。 

  ゲームが終了して、全体練習に参加していた選手たちは、各自クールダウンに入ります。地面に座った選手たちの中、満男選手たちだけがボールを蹴っています。軽く蹴っていた感じだったのに、だんだん、強いボールをお互いに蹴っていて、どうやら、強くボールを蹴る許可も出ているみたい。満男選手も、金古選手も、もうすぐ全体練習に合流できるのではないでしょうか。 

  そんな金古選手には、本山選手が、「金古〜」と声をかけてます。距離がだんだん伸びてきて、ついには、50メートル級、サイドチェンジの長さのパスの交換。満男選手のパス、バシッと、金古選手の胸に届きます。そして、今度は本山選手も入って、小さなトライアングルになってのパス交換。寝転がってストレッチをしている本田選手や、柳沢選手から、盛んに声が飛んでいます。 

  この頃になると、ぼつぼつ選手たちが引き上げていくのですが、満男選手たちはいっこうに引き上げる気配がありません。取材に訪れていたNHKのクルーの一人も、ずっとやってるよと、ちょっと驚いたような声を上げます。いかにもサッカー好きそうな、満男選手の姿、好印象だったみたいです。 

  NHKの他にも、TBSなど、テレビカメラと、そしてカメラマンも沢山。サッカーaiの記者さんも。明るい日差しの中の選手たちを撮影しています。 

  ボールを蹴り終わって、これで終わりかと思ったら、満男選手、おもむろに腹筋を始めます。自分で、体を丸めるようにして腹筋。それから、金古選手がボールを投げて、ヘディングしながらの腹筋。次に、満男選手がボールを投げて、金古選手の腹筋。ものすごく遠くから、ボールを投げつけます。さすがセンターDFの金古選手、それをちゃんとヘディングで満男選手に返します。もう何回も2人で組んで練習をしているのでしょう、慣れたもので、満男選手が回数を数えています。「いち」「に」……「じゅう」……「いち」「に」……「きゅう」「さんじゅう」……。40回を過ぎた頃から、さすがに苦しくなってきた金古選手。満男選手も、ちょっと休憩を置いたり、金古選手を励ますような声を掛けたりしながら50回まで。 

  ここまでは、先輩らしかった満男選手。これで終わるはずがありませんでした。50回終わって、うつぶせに伸びた金古選手の背中に、浮き球のパスを一つ(笑)。コロコロと、金古選手の頭の方に転がったボールを、わざわざそちらに回っていって、寝ている頭にパス。というか、これ、すごく強いボールで、痛そう。そして、続けてまた頭にぶつけて。金古選手、容赦ない満男選手の攻撃に、仕方なく体を半分起こして、ヘディングで返します。 

  そして、なんだか、自然な流れで、横から投げられたボールを、少し体をひねりながら、ヘディングで返す腹筋の訓練。これも、自分が終わって、金古選手にボールを投げながら、「もう1回」と、満男選手、ボールを投げるふりして、金古選手の頭に近づけて、さっとボールを遠ざけて、「もう1回」。またまた、投げるふりして、変なふうにカーブを描いてボールを動かして、「もう1回」。もう、完全にいじめっ子モードに入っちゃってました。 

  柳沢選手は去り際に、ボールを足元に立っている満男選手に「スペース」と声を掛けます。満男選手、柳沢選手の思いっきり前にボールを蹴り出しますが、そちらに向かって走るどころか、動いてもいなかった柳沢選手、全く追いつけず。「スペースすぎるよ。追いつけないよ」と笑いながら言って去っていき、ボールは転々と転がっていきました。 

  スパイクを脱ぎ、ストッキングだけになって、芝の上を歩いていた中田選手、満男選手と金古選手の間を通って、何か声を掛けます。金古選手、パス交換していたボールを、ポーンと中田選手の歩くスピードに併せて、目の前に蹴り出します。飛んできたボールをドリブルしながら持っていってしまう中田選手。待ちかまえる満男選手に怒られるのを恐れたのか、金古選手「返してくださいよ〜」と、ちょっと情けない声を出します。金古選手が困るのが分かっていた中田選手、ポーンとボールを満男選手の方に蹴ります。 

  ピッチのあちこちでは、撮影が行われてます。カメラマンの桜井さん、本田さんと、髪を短く黒くした祥朗選手が体育座りに並ぶツーショットをとっていたかと思うと、トレーナーの竹田さん(?)とやってきます。寝ころんでデジカメを構える竹田さん。いいよ、いいよ、と桜井さんも楽しそう。組んで練習をしている満男選手と金古選手の写真を撮ります。 

  NHKのクルーは、リカルドコーチにインタビューをしています。その、少し後ろ、足元でじゃれ合うような、満男選手と金古選手。もう、ピッチにいる選手は2人だけになってしまいました。それでも、まだ、練習を続ける満男選手。ボールを使わずに、背筋、側筋(?)などしていたのですが、グランドにあった時計が、ぴったり11時になった瞬間に、引き上げていきました。 

  先に引き上げた選手たちは、グランド内で記者さんに取材をされたあと、チームバスに向かいます。女性中心のギャラリーが50人くらいでしょうか、お目当ての選手にサインをもらっています。ファビアーノ選手は、左のふくらはぎをアイシングしながらファンサービス。満男選手と金古選手も、片隅に張られたテントで、準備をして、バスに向かいます。 

  「まだ残ってる選手いるか〜?」とスタッフから声が。満男選手は、右手に書類ケースくらいの大きさの紙袋を持って、左手にはナップザックをぶら下げてます。ちょうど満男選手がグランドの出口に差し掛かって、サポーターに取り囲まれるかと思った瞬間、バスの窓が開いて、顔を出したのは秋田選手。「早くしろ〜、追いてくぞ〜」。秋田さんのこの声を聞いては、満男選手に声を掛ける勇気のある女性はなく、満男選手は、真っ直ぐにバスにたどり着くことができました。そして、満男選手が乗り込むと、すぐにチームバスは発車していきました。

午後

  ちょうど3時半頃、チームバスが到着して、いっせいに選手たちが降りてきます。ジャージ姿の選手たち、後ろの方で、満男選手、ナップザックを背負って、両手をポケットに突っ込んで歩いてきます。 

  テントの中で、荷物を置いたり、シューズを履きかえたり、ごそごそしている選手たち。里内コーチが満男選手に近づいて、何か言ってます。午前の練習で、すっかり元気だったから、午後はもう、みんなと同じメニューかと期待しちゃってたのですが、これは、ちょっとイヤな予感。 

  準備ができると、里内さんが、みんなを集めて話を始めます。手元に何か持って、話をしてるんだけど、満男選手は里内さんの横にぴったりと着いて、その紙をのぞき込みます。結構、長い間、話してたけど、ずっとのぞきこみつづけてました。 

  その話が終わると、選手たち、思い思いにストレッチ。満男選手も、お得意の入念なストレッチ。そこに、関塚コーチがやってきて、ポンと頭を一つ叩いて、笑顔で何やら話しかけます。満男選手はストレッチを続けてコロンと地面にころがったりしながら、結構長いこと話していたようです。 

  午後の練習は、持久走。それぞれの選手が、腕時計のような、心拍数を計る機械を見ながら、自分のペースで走ります。スローに2分くらい走って、速く2分くらいの繰り返して、45分間くらい走る、前にクラブハウスグランドでも見たことのある練習です。 

  里内さんの合図で、いっせいに選手たちがスタート。満男選手と熊谷選手だけが残ります。やはり別メニューかと見ていたら、1分くらい遅れて二人同時に走り始めました。メニューが同じ選手がいれば、心強いだろうと思ったのですが、熊谷選手の方が、明らかにハイペースで、すぐに満男選手は一人で走ることになります。比較的、ゆっくりのペースで走り続ける満男選手です。 

  選手の人数、少し少な目かなと思ったら、午前中に、さんざん満男選手がいじめていた金古選手がいません。具合が悪くなったのでなければいいのだけど。それから、柳沢選手も姿が見えないようです。 

  延々と同じペースで走り続ける満男選手。ときどき、ペッって唾をはくんだけど、前より回数が多いかしら。少し、胃がムカムカするのかなと思うけど、そんなこと、前は気にしてなかったので、回数が増えてるのかどうか、よく分かりません。GK3人は、よこに並んで、ゆっくりしたペースでランニングしています。その横を追い越していくとき、なにやら話をした満男選手、ものすごく、いい顔をして笑ってます。根本選手、幸聖選手の後輩たちに追い抜かれるときも、何か話しているようです。 

  だんだんと苦しい顔になってくる満男選手。左腿か膝辺りが気になるらしく、走りながら、ちょっと触っています。もう1周してきて、同じ場所で膝を気にするから心配していたら、少し立ち止まるようにして思いっきり掻いてました(笑)。 

  30分くらい経って、満男選手、手を大きくぐるぐると回したり、肩をほぐすような仕草をしながら、大きく後ろを振り返ってます。どうやら、後ろから来ている熊谷選手を待っているよう。ほとんど歩くくらいの速さになって待ち受けて、熊谷選手が来ると声を掛けますが、熊谷選手は、ペースを落とすことなく追い抜いていきます。また、ペースを上げて走り始める満男選手。何か、聞きたいことでもあったのかな。 

  それから、2周ほど走ったところで、満男選手はランニング終了。グランドを横切って、ゆっくりとテントのところに戻っていきます。真っ先にクーラーボックスに近づいて、ベンチコートを着込んで練習を見守っていた社長と、笑顔で一言二言交わすと、クーラーボックスからペットボトルを取り出し、その上に座って、水を飲みます。そして、立ち上がって、クーラーボックスの上に足を乗せてストレッチ。その後も、ストレッチを続けます。 

  ストレッチが終了すると、今度は、グランドの真ん中に向かって、ゆっくりと歩き出します。吸い寄せられるように向かったのは、キーパー練習のために使われていたボール。今日はフィールドプレーヤーが持久走だけだから、グランドにはこのキーパー練習のためのボール7〜8個しか出されてないんです。 

  満男選手、練習している選手やコーチと話したり、少しボールを蹴りあったりしながら、その数少ないボールの一つを、せしめてきます。そして、ゆっくりと転がしながら、テント前、コーチたちが集まっているところまで帰ってきます。そこで、コーチから、ボールを蹴ってもいいと許可が出たのかしら、いきなり元気に大きくボールを蹴り始める満男選手。グランドの真ん中に出ていって、一人でリフティング。ポン、ポン、ポーンというリズムで、3回目にボールを大きく蹴り上げ、また、ポン、ポン、ポーン。 

  随分、長いこと落とさずにやっていたのですが、やはり一人ではつまらないのでしょう、大きくコーチの方に手招きして「おーい」と、若いコーチの人を呼び寄せます。コーチの人と2人でパス交換。だんだんに長い距離のボールを蹴っていきます。そのうち、テントの側で練習を見ていたフロントの人が、自分がボールを蹴りたいと志願してくれたみたい。やって来て、満男選手とパス交換を始めます。さっきまで相手してくれてたコーチの人が、引き上げようとするんだけど、満男選手、その帰っていく足元にポーンとボールを出します。コーチが蹴り返して、引き上げようとするところに、またボールをポーン。結局、少しの間、3人でパス交換して、ようやくコーチは引き上げさせてもらえました。周りの人、誰とでもパス交換しようとする満男選手、通りがかった年輩のスタッフの人にも、パスを出して、蹴り返してもらって。サッカーチームって、ボールがコミュニケーションの道具なんですね。 

  来てくれたフロントの人は、ボールを蹴るのが楽しいらしく、満男選手と、いろいろな蹴り方で競ってます。満男選手、長いボールを蹴ったら、コントロールミス。GK練習の方に飛んでいって、「危ない!!!!」とグランド中に響く大声を出します。ボールは一直線に飛んで、コーチの後ろ頭に、きれいに当たってしまいました。 

  持久走をしながら、「死ぬ〜」などど大声を上げていた本山選手も、ボールを蹴りたいのでしょう、死ぬなどと言っていた割には、持久走終わるとすぐに、満男選手たちの方に寄っていって、3人でボールを蹴り始めます。 

  全体練習の持久走が終わった後は、またまた、コーチと2人でボールを蹴りあっていた満男選手、そこに、クールダウンの終わった、野沢選手がやって来ます。ぎゃあぎゃあと大声を出しながら、ボール蹴りあっているうちに、ほかの選手たちはみんな引き上げていきます。グランドを独占した3人、右サイドからフロントの人がクロスを上げて、野沢選手と満男選手が、ゴール前に走り込むことに。クロスをヘディングして、叩きつけられず、ボールがバーのはるか上を越えるのを見て、満男選手「あ〜〜!!」。立て続けにフロントの人が、クロスを失敗するのを見て、満男選手「○○さん、巻くボール蹴れないでしょ」。遠くで聞こえなくて、フロントの人「え?!」。「巻くボール蹴れないでしょ!」。満男選手に挑発されて、フロントの人も頑張ります。満男選手、ゴール前に走り込みながら、「○○さん、カフー!」。フロントの人が、蹴ろうとするたびに、「カフー!!」。1〜2度、満男選手が見事なシュートを決めてました。 

  シュートを失敗して、ゴール裏に張られたネットのところまでボールを拾いに来る満男選手に、広報の野見山さんが近づいて何か言います。「分かりました」と、はきはき答える満男選手、インタビューか何かの依頼でしょうか。 

  その後も、少しだけボールを蹴って、ようやく引き上げていく3人。フロントの人は、さすがに疲れた様子で。「参りました」「とても、およびません」とかって満男選手と野沢選手に、笑いながら頭を下げてます。とっても楽しそうに話しながら歩いていく3人です。 

  帰り支度が整った満男選手、簡単なコメントを求められたようで、クーラーボックスの上に座ってインタビューを受けます。でも、目の前で、お馴染みの記者さんたちがサッカーボールを蹴りあっているので、視線が完全にそっちに引きつけられてます。質問にはちゃんと答えてるんでしょうけど、なんとも、気もそぞろに見える満男選手。インタビューしていた記者さんが、終わってから「お手数おかけしました」と、大選手にでも言うようにお礼を言うのに、ペコリと頭を下げます。 

  50人ぐらいのファンが取り囲む出口、色紙を差し出されたり、声がかかるのですが、満男選手は、いつもの姿勢のいい歩き方のまま、完全に無視してバスに乗り込みました。

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