2001/5/6(Sun)

　急に暑くなった関東地方、強い日差しが照りつけて、汗ばむような陽気です。ダニーさんのDJで、スタメン紹介。満男選手の名前が呼ばれると、エスパルス・サポーターから、盛大なブーイングが起こります。天皇杯決勝の活躍で、すっかり忘れられないプレーヤーになったよう。嫌がられるプレーヤーになりたいと語る満男選手。なんだか誇らしく感じられるブーイングです。

　試合開始の4時になっても、ピッチの熱気は去りません。フェアプレイフラッグに続いて入ってくる選手たちも、多くが半袖。満男選手も半袖姿です。1列に並んだ中で、満男選手、ちょっと足を気にしているようなそぶりがあります。

　ピッチに散って、ハーフライン寄りの右スミでパス交換。ハーフラインを越えたボールを追いかけているときに、小笠原コールが起こります。軽く、左手を上げて答える満男選手です。

　円陣に入る前に、ストレッチをしたり、足を気にするそぶりのある満男選手。左足の方を気にしているように思えます。

　アントラーズサポーターの、キックオフへの長い長いコールのあと、ホイッスルが吹かれます。今日の主審は、モットラムさん。2試合に1回は、満男選手にイエローカードを出す人で、どうも、相性がいいとは思えません。1stステージで、すでに2枚イエローカードをもらっている満男選手。3枚目のイエローが出てしまうのではないかと、心配になります。

　試合開始直後、前線に飛び出すことなく、ゆっくりと歩き出す満男選手。去年の2ndステージと、ゼロックススーパーカップ、アントラーズは、3バックのエスパルス相手には、満男選手が高い位置をとって、3トップ気味になる戦法を取ってきましたが、どうやら、今日は違うよう。満男選手自体も、少し体が重そうではありますが、それだけでなく、上がりを控えて、特に右サイドで、アレックス選手へをケアしていく作戦に思えます。

　左サイド、根本選手がボールを持つと、右サイドで大きく手を上げる満男選手。根本選手はクロスを選択しますが、FWにうまく渡りません。プレーが途切れると、満男選手、もう一度、大きく手を上げて、根本選手に、自分がフリーだったことを知らせます。

　試合中の、プレーの確認は、去年の2ndステージの始まりの頃には、何度も目にすることができたのですが、今シーズンはあまり、そういう姿がなく、気になっていたことの1つでした。今日は、このあとも、満男選手が内田選手と確認しあったり、熊谷選手が、回りの選手に身振り手振りで確認したりする場面が、何度も見られました。こういうところにも、自分たちのリズムを、少し取り戻しつつあることが感じられます。

　暑さのせいがあるのか、両チームとも、試合開始時の運動量は抑え気味に思えます。

　満男選手、右サイドでボールを持つと、平松選手のファールで、後ろからつぶされます。

　中央でパスを受けると、浮かせた巧いトラップで相手選手を交わしますが、体を寄せられてボールを奪われます。

　相手DFラインがボールを持つと、FWより高い位置まで、チェイシングする満男選手です。

　6分、ビスマルク選手の縦パスに、DFの裏を取った柳沢選手が冷静にファーサイドに流し込んで1点。アントラーズ先制です。自陣に戻りながら、柳沢選手に声をかける満男選手です。

　7分、右サイドから上げられたクロスで、ゴール前の混戦。ビスマルク選手のクリアミスから、バロン選手のシュートがバーを叩いて真下に跳ね返ります。ゴールラインギリギリで本田選手がクリア、命拾いをします。このプレーで、高桑選手がバロン選手と接触、足を痛め、ゴール前にうずくまってしまいます。関ドクターのチェックを受け、自ら大丈夫と立ち上がる高桑選手ですが、そのあとも、足を引きずり、かなり痛そうな様子です。

　名良橋選手から、ビスマルク選手に渡ったボール、中央の満男選手に戻され、ワンタッチで柳沢選手、そして、走り込んだ名良橋選手へと渡りますが、シュートにはなりません。

　この直後、満男選手と柳沢選手のワンツーから、満男選手ペナルティエリア手前、中央で、DF4人を引きつけ、右斜め前の平瀬選手にスルーパス。平瀬選手が、左足で打ち切れず、持ち直して打ったシュートはGKにキャッチされました。

　左サイド、自陣から、前方柳沢選手への20メートルのグラウンダーの速い縦パス。これは通りません。

　斜め後ろから来るDFが詰めてくるタイミングを見計らって、前方、柳沢選手に通したパス。これを、柳沢選手が奪われて、そこからカウンター。アレックス選手についた満男選手、相手が切り返した瞬間にボールを奪おうとしますが、足がかかって倒してしまいます。主審のホイッスルに、右手を軽く上げて、謝るそぶり。モットラムさんは、満男選手を呼ぶと、大きく指を1本立てて示します。もう1度やったらイエローカードだぞという、警告でしょう。あと1枚カードをもらうと、警告累積で出場停止になってしまう満男選手、態度が普段よりも柔らかく見えます。

　DFラインで秋田選手がボールを持つと、前線に飛び込んでいく満男選手、熊谷選手も大きく手を上げて、満男選手を指さします。古賀選手に体を寄せられた満男選手は、ヘディングで負けてしまいますが、こぼれたボールをゴールラインまで追いかけてCKを取ります。

　本田選手が前に出したパスが高く上がると、満男選手、柳沢選手に、自分の足元を指さして示します。柳沢選手が、指示通りに胸で落としたボールがワンバウンドしたところを、満男選手、左前のスペースにボレーで強いパスを送り込みます。平瀬選手が何とか追いつきますが、DFにクリアされてしまいます。

　ここから得た、左からのCK、ショートコーナーで根本選手が戻して、ビスマルク選手が上げたクロス、柳沢選手のヘディングは、バーの手前でGKがクリア。もう一度、今度は右からのCKです。

　今日は、またショートコーナーを使うビスマルク選手。名良橋選手の上げた、緩く高いクロスに、ファーサイドで、フリーになった金古選手が頭で合わせて、見事なゴール!　前半17分、金古選手、Jリーグ初得点です。

　満男選手も、ゴール前の金古選手に駈け寄って行って、祝福します。

　21分、柳沢選手が、相手FKを納得せず、自分で蹴ろうとボールを置き直したところで、イエローカードが出されます。

　満男選手は、ルーズボールを拾うと、目の前のDFを交わして柳沢選手に短いパスを出します。これを起点にアントラーズのカウンターになりますが、熊谷選手の上げたクロスは、ゴールラインを割ってしまいます。

　最終ライン左から、根本選手が、DFの裏を狙った長いパスを入れると、ハーフライン中央から、前に走り出す満男選手。柳沢選手が折り返したボールを、満男選手は思いっきりシュート。惜しくも、ゴール左に外れます。

　ハーフラインから、右のスペースに柳沢選手を走らせる満男選手。追いついた柳沢選手、倒されてボールを奪われますが、ファールになりません。

　25分、ゴール前にドリブルで進む安永選手を、後ろから倒して、名良橋選手にイエローカードが出ます。

　26分、自陣左サイドで、満男選手が戸田選手からボールを奪おうとして、倒してしまい、相手FKになります。クイックスタートを防ぐために、すぐさまボールの目の前に手を広げて立つ満男選手。戸田選手が、蹴ったときに、片足を大きく上げる満男選手ですが、ボールに触れるとFKの妨害になるので、それ以上のことはできません。このとき、満男選手より後ろの、アントラーズの選手たちの集中が、一瞬途切れていたよう。パスは、フリーの伊東選手に渡り、名良橋選手がクリアしきれなかったボールを、アレックス選手に決められて、1点を失います。この試合で、これが1番悔やまれるシーンかもしれません。

　左サイド、根本選手がボールを持つと、ゴール前に走り込む満男選手。DFに遮られて、根本選手からのクロスには合わせることができません。

　31分、右サイドライン際でボールを持ったアレックス選手に、名良橋選手が前からタックルに行き、倒してしまいイエローカードが出ます。今日、2枚目のカードで退場です。

　交代選手の準備ができるまで、熊谷選手が右サイドバックに入り、満男選手がボランチに下がります。一気にエスパルスに攻め立てられる形になって、DFラインが下がってしまったアントラーズ。自分たちのボールになると、満男選手が、もう少し上がるように、後ろに手で示しますが、なかなか押し上げることができません。

　37分、トップの平瀬選手に代わって、内田選手が入ります。満男選手は、ライン際で、セレーゾ監督の指示を聞いているようです。右サイドに内田選手が入り、ボランチが右から、満男選手、熊谷選手、本田選手と並んだ、4-3-1-1のフォーメーションになります。エスパルスの威力のあるサイド攻撃を、右は、満男選手と内田選手、左は、熊谷選手と根本選手の2人がかりで止めようという形に思えます。

　2列目に1人になった、ビスマルク選手も必死の守備も見せますが、第6節、第7節と戻っていたコンディションが、ゴールデンウイークの連戦で、また悪くなってしまったのか、体がひどく重く見えます。前半7分のような、らしくないミスもあり、ここまでの試合展開でも、自分で持ち込むよりは満男選手にボールを預けることが多いくらいです。10人になって、運動量の少ないビスマルク選手を交代させるという選択肢もあったと思えるのですが、結局、ビスマルク選手は、最後までプレーしました。

　39分、ビスマルク選手が巧く、胸トラップで落としたボールを受けて前を向いた満男選手、ハーフラインより後ろから、右裏のスペースに、ロングパスを送ります。追いついた柳沢選手、しっかりとボールをキープして、他の選手の上がりを待ちます。ビスマルク選手から送られたボール、軽く浮かせてDFラインの裏に出す満男選手ですが、タイミングが合わず、柳沢選手が追いつくことができません。

　FKを取ったアントラーズ、金古選手が出したパスを、右サイドの前の方で受けた満男選手、前に切れ込もうとします。アレックス選手がボールを蹴り出し、フリースローを得ます。

　ロスタイム3分が過ぎて、前半終了です。

　後半に入って、エスパルスは頭痛を訴えたという戸田選手に代わって、吉田選手が入ります。満男選手は、内田選手と話しながら出てきます。

　後半になっても、満男選手はボランチのポジションです。並びが、前半とは違って、右から、熊谷選手、本田選手、満男選手の順。前半の終了頃には、押し上げられなかったDFラインも、比較的高く保て、後ろに下がり気味だったビスマルク選手が、2列目の位置にいることで、ものすごくバランスがよくなります。1人少ないことで、守ってカウンターの形ですが、守備の面では、昨年のリズムを取り返したかのようで、DFラインが3人も、昨年とは違うとは思わせません。チームの若手にも戦術が浸透しているということなのでしょうか。

　ボールを持っている市川選手にアプローチして抜かれてしまった満男選手、安永選手のシュートが、ポストの左に外れると、根本選手と何か話している様子です。

　満男選手は、ボールを持つと、まず、なるべく高い位置まで運び、全体を押し上げようとしているように思えます。DFに囲まれる、逆サイドに、サイドチェンジをする満男選手です。

　右サイド、内田選手を走らせるパスは、少し長くてゴールラインを割ります。

　金古選手のクリアボールを拾った満男選手、すかさず前を向くと、50メートルほどのロングパスを柳沢選手に送りますが、これは、裏をとれませんでした。

　7分、ボールをキャッチするために前に出た高桑選手が、左膝を痛がって、ボールを抱えたまま立ち上がれなくなります。ようやく立ち上がった高桑選手を見て、満男選手は、ボールを外に投げ出すように、大きく手を上げて指示します。プレーが止まり、また、関ドクターのチェックを受ける高桑選手ですが、かなり痛そうな様子です。

　高桑選手は、プレーに戻りますが、シュートを足で止めたあとに、また痛そうな様子。完全に足を引きずっています。ボールが外に出されることなくプレーが続き、ようやく途切れます。何ともないはずはありませんが、高桑選手はプレーを続行します。

　11分、アントラーズのカウンター、上がっていった熊谷選手がシュートを打ちますが、バーの上です。

　17分、ビスマルク選手がヘディングで前にすらしたボールを、柳沢選手が受けると、今まで、上がりを見せていなかった満男選手が、センターサークルの後方から、一気に走り出します。柳沢選手を追い越し、一気に50メートルを駆け上がって、DFの前にうまく体を入れて、パスを受けると、ペナルティエリアの中でシュートしようとしますが、DFに後ろから押されて倒れてしまいます。

　ホイッスルは鳴らず、ペナルティエリアの中で、少しのあいだ体育座りになっている満男選手です。

　味方DFのクリアボール、自陣中央を速いスピードで前に転がっていくのを、全速力で追いかける満男選手。カットに来た市川選手の前に何とか体を入れますが、倒れてしまいます。その、市川選手のパスをカットした熊谷選手に、大きく手を広げてボールを要求する満男選手。ワンタッチで、裏の右のスペースに柳沢選手を走らせるロングパス。柳沢選手が、相手DFと競り合いますが、ゴールラインを割ります。

　19分、満男選手が放った、バックスピンのかかった縦パスですが、柳沢選手に届かず、DFにクリアされてしまいます。

　アレックス選手のCK、手を叩き、大声を出して、集中をうながす満男選手です。

　左サイドで、高桑選手のフィードボールを受けた満男選手、相手選手に囲まれてしまいます。高桑選手が、また足を引きずっているのを見て、GKにバックパスせず、味方に渡そうとする満男選手。ライン際でボールをキープして、相手選手をかわし、前に蹴りますが、ミスパスになってしまいます。

　25分、根本選手のロングシュート。これは、GK正面でキャッチされます。

　26分、平松選手に代わって、澤登選手が入ります。入ると同時に、ボールを持った満男選手のユニフォームを後ろからつかんで倒す澤登選手。もちろんファールです。

　27分、自陣、右サイドでボールを持った熊谷選手が中央に進みながら、相手選手の股抜きをしますが、そのボールが、そのまま市川選手に渡ってしまいます。取り返そうとする熊谷選手が、さらに左に流れ、満男選手と2人で市川選手に着きます。ここまで、横に並んで、距離を取り、絶妙のバランスを取っていた3人のボランチが、この一瞬、バランスを崩し、右サイドが空いてしました。そこを見逃さないエスパルス、完全にフリーになっていたアレックス選手にパスが渡り、そこから入れられたクロスから、最後は安永選手に決められて、同点にされてしまいます。

　追いつかれたアントラーズ、点を取るために、選手たちは、自主的に今までのバランスを崩し、満男選手が少し前目に出て、攻撃的なポジショニングを取ります。

　しかし、そのことで、少しバランスを崩したのでしょうか、直後に、市川選手が上げたクロスを、前に出てキャッチしようとした高桑選手が、キャッチミス。アレックス選手に決められて、逆転されてしまいます。

　少ない人数ながらも、攻めに転じなければならなくなったアントラーズ、満男選手が上がり気味になります。特に、ベンチの指示ではなく、チーム全体が、得点差によってフォーメーションを変える様子は見事です。今何をやるべき時間帯かということを、選手たちが、しっかりと分かっていることが感じられます。

　ここから、満男選手の攻撃的なプレーが見られるようになるかと思ったのですが、すぐに、本田選手に代えて、隆行選手が投入されます。これで、また満男選手が下がり気味になります。

　相手CKのこぼれ球を拾うと、すかさず柳沢選手に縦パスを出す満男選手。カウンターの起点になりますが、柳沢選手、ボールを奪われてしまいます。

　37分、ビスマルク選手が、最終ライン右から出したロングパスに、隆行選手がDFの裏に抜けて、ペナルティエリアの中で倒されます。すかさず、レッドカードを出すモットラムさん。斉藤選手が退場になり、これで10人対10人になります。

　これで得たPK。キッカーはビスマルク選手。満男選手は、ペナルティーアークのラインギリギリではなく、少し後ろに構えています。ビスマルク選手のPKは左のことが多く、去年は何本か止められているはず。GK真田選手もその辺りのデータは頭に入れていたでしょう。ビスマルク選手が蹴ると同時に、左に飛びます。蹴られたボールは右。見事に決まります。

　満男選手は、ビスマルク選手が助走を始めると同時に前に走り始め、ボールを蹴ると同時に、ペナルティアークの内側に、誰よりも速く飛び込んでいきます。ゴールが決まったあとも、速度をゆるめることなく、ゴールからボールを拾い上げ、ハーフラインまで走って戻ります。同点になって終わりではなく、これからが勝負だということを、まさに体で示しているようです。

　これで、同じ人数での、同じ条件での戦い。とはいえ、もう、1時間近く1人少ない人数で戦ってきたアントラーズ。疲労は、格段に違うはずです。

　ロスタイムは5分。46分にアレックス選手の放ったシュートは、クロスバーに当たって、ゴールの向こう側に落ちます。

　47分、右サイドを上がる熊谷選手を見逃さずに、満男選手が、いいサイドチェンジのボールを入れます。熊谷選手が落としたところを拾った内田選手に、右前のスペースに出すように手で指示する満男選手。その通り出されたボールに、熊谷選手が走り込んでシュートしますが、クリアされてしまいます。

　49分、安永選手が放ったシュートが、ポスト左に外れ、その直後にホイッスル。延長戦です。

　満男選手は、ベンチ前に歩いていくと、タオルを受け取ります。スタッフがベンチコートを渡そうとするのですが、それは受け取らず、ペットボトルを受け取ると、ブラブラと歩きながら給水。ゴロンとピッチに倒れこみますが、すぐに起き上がってストレッチを始めます。トレーナーの人が、やって来てくれて、前から支えてもらい、さらにストレッチです。ストレッチの最中に、セレーゾ監督が通訳の人と一緒に来て、話をしていきます。分からないところがあったのか、通訳の人に聞き返す満男選手ですが、監督はもう、別の選手のところに行ってしまっています。

　ストレッチが終わり、水を口に含んで、吐き出すと、作戦ボードを前に説明をしているセレーゾ監督のところに行って、ボードをのぞき込む満男選手。羽田選手が、元気にアップをしていて、言葉を交わします。いつものように、選手、スタッフ全員で円陣を組むアントラーズ。羽田選手は、根本選手に代わって、左サイドバックの位置に入ります。

　後半に入ってすぐに、左サイドライン際で、澤登選手と交錯して倒れる満男選手。左のスネのところに、澤登選手のカカトが当たってしまったよう。満男選手、ものすごく痛そうに顔をしかめると、すぐに座ったままストッキングを下ろし、左のスネを確認します。以前、練習中に左スネをかなり気にしていたという満男選手、何かケガを持っているのかもしれません。

　立ち上がって、ストッキングを上げると、また、足を引きずりながら走り始める満男選手。少しして、普通に走れるようになりました。

　直後のボールタッチは、左サイドでボールを受け、隆行選手へのスルーパス。これは無難にこなしましたが、その次のミドルシュートは、ゴールのはるか右にそれてしまいます。プレーのあとで、顔をしかめる満男選手。蹴ったのは右足でしたが、左足の痛みで、軸足の踏み込みがうまくいかなかったのかもしれません。

　その次のミドルシュートも、走り込みとタイミングが合わず、羽田選手へのパスになってしまいます。

　相手CKのこぼれ球、満男選手はとっさに右足アウトサイドで前線に送りますが、これは少し短く、相手選手に渡ってしまいます。

　延長前半6分、上がっていく市川選手を、後ろから手で止めようとした柳沢選手にイエローカードが出ます。2枚目のイエローカードで退場。これで、アントラーズが、また1人少ない戦いになります。

　左ライン際で、無理な体勢のところにビスマルク選手から預けられたボール、満男選手は、DF2人に囲まれ、奪われてしまいます。

　ロスタイムは1分。エスパルス優勢の内に、延長前半終了です。

　延長後半、開始少しして、ゴール前のこぼれ球を拾おうとした満男選手、伊東選手に奪われて、取り返そうとして、体を切り返したところで足を滑らせて転んでしまいます。もう、かなり足にきているのかもしれません。伊東選手のシュートは、GK正面で、高桑選手ががっちりとキャッチします。

　後ろから預けられたボールを、タイミングを見て、前の隆行選手にパスを通す満男選手。パスを出したと同時に、上がっていきます。ほんの10日前の練習試合の時には、明らかに具合が悪そうで、十二指腸潰瘍がまだ治っていないと言われている満男選手。体調が万全になっているはずはありませんが、この時間まで、誰よりも走っています。

　ベンチで青木選手の交代の準備が進められ、TVの解説では満男選手と交代の予定だったとのこと。左足のストッキングを下げて、スネを確認することを、プレー中に2回、そして、試合終了後にもしていた満男選手。もしかしたら、ケガの影響もあったのかもしれません。

　延長後半3分、ゴール前の混戦から、バロン選手に押し込まれて得点を入れられてしまいます。ここで、10人対9人、得点4-3の壮絶な戦いは終わりました。

　倒れこむDFたち。満男選手は、倒れる気力すらなかったように、ただ立っています。ゆっくりと中央に歩みを進めると、まだ審判も他のプレーヤーも来ていないピッチの中央に、1人、茫然と立ちます。

　一礼がすむと、真っ直ぐにゴール裏の方向に歩き出す隆行選手と満男選手。ホームゲームは、バックスタンドにも挨拶するのが恒例ですが、そんなことも考えられない状況だったのでしょう。秋田選手が声をかけます。満男選手は、すぐに気づいて、バックスタンドに足を向けますが、隆行選手は、もう周囲の声も耳に入らないのか、しばらく歩き続け、何度目かの秋田選手の呼びかけに、ようやくバックスタンドに方向を変えます。

　バックスタンドに片手を上げると、ゴール裏に向かう満男選手。ゴール裏にも片手を上げると、スタンドの方までは行かず、ゴールの手前を通って、メインスタンド下に引き揚げていきました。

　最後のプレーで、バロン選手と競ったときに痛めたのか、ひどく背中が痛そうにしていた羽田選手は、あとの検査で腰椎の骨折の診断。ずっと足を痛がっていた高桑選手は、左膝の剥離骨折が判明。2人も骨折者を出す、本当に壮絶な戦いでした。

　結局は負け、勝ち点を得ることはできなかったけれど、選手たちが、人数が少ない、圧倒的に不利な条件の中でも、試合を投げず、誇りを持って、最後の最後まで戦い抜いてくれたことで、強く記憶に残る試合になったと思います。