2001/10/13(Sat)

　2ndステージ全勝で1位を走るアントラーズを、勝ち点3差で追うジュビロ。今年の2ndステージは、この2チームが、抜けた力を持つと思われるだけに、今日の直接対決は、とても重要な試合になりました。アントラーズが、ここでジュビロを叩ければ、優勝へ大きく前進することになります。

　わずか3日前に、暴風の中、水の浮くピッチでの激闘を0-0で分け、ナビスコカップ決勝へ進めなかったアントラーズ、今年は、2敗1分けと、まだジュビロに勝ち星がなく、意地でも負けられない1戦です。

　エコパスタジアムは、秋晴れ。気温も高く、日なたでは少し暑く感じるくらいの、観戦日和です。

　アップのためアントラーズの選手たちがピッチに現れます。1人の選手が少し深刻そうに香取ドクターと話しています。左腿の付け根のところに違和感があるようです。遠目で誰だったのか、はっきり分からなかったのですが、内田選手かもしれません。

　いつも通り、背筋を伸ばし、ゆっくりと歩いて出てきた満男選手は、新しいシューズをはいています。銀か白色に、赤いラインが1本入ったデザイン。日陰でも、光っています。アップを始める満男選手ですが、どこか体のキレが悪い感じ。シュート練習も、シュートがいつもほどは決まりません。ダッシュに入る前に、転がっているボールを拾って、スピードのあるループ気味のシュートを放ちます。これは、きれいに入りました。

　アップの最中に。メインスタンドの真ん前で、ダンスグループがダンスを始めます。ヒップホップ系の音楽を大音量で鳴らし、派手な踊りです。普段は、変わったことがあるとすぐに反応して、そちらを見る満男選手が、今日は、全然、見ようとしません。いつもと違う感じ、それも、何となく悪い予感のする感じです。

　ダッシュが終わって引き上げていく選手の中、満男選手は、ゴール手前に転がっているボールを拾おうとしますが、寸前にイッカGKコーチに取られてしまいます。どうしても、シュートを打ちたかったらしい満男選手は、ゴール正面まで、ボールを拾いに戻ると、シュート。ゴール左にそれます。満男選手は、そこで終わらせたくなかったらしく、もう1つボールを拾って来ると、シュート。でも、これも、全く同じコースに外れてしまいます。GKも置かないフリーのシュートを、全く同じところに外すなんて、満男選手らしくもなく、やはり調子が悪いのだろうかと心配になります。

　試合開始前、ピッチでのボール回しで、満男選手が名良橋選手に出したミドルパスは長すぎて、名良橋選手を走らせてしまいます。思わず、天を仰ぐ満男選手。どうも、思うようにいかないようです。次に、狙いを定めて出したパスは、ぴったりと名良橋選手の足元に収まりました。

　午後2時過ぎ、アントラーズボールでキックオフ。ジュビロは、後半にアントラーズが、落ちていく西日に向かって攻めなければならないように、ピッチを選んだようです。

　、隆行選手、アウグスト選手が出場停止で、アントラーズのスタメンは、偶然にも、昨年の2ndステージで、ジュビロに快勝したときと同じメンバー。一方、ジュビロは、名波選手が膝の手術のために、メンバーから外れています。

　開始直後、満男選手は、ビスマルク選手からボールを預けられ、センターサークルの前側から、左の裏のスペースに、平瀬選手を走らせるパスを、左足で出します。7分にも、同じ辺りから、今度は右足で、右のスペースの平瀬選手にパス。平瀬選手の速さを生かして、裏のスペースに走り込ませようという意図を感じます。

　試合が始まった直後から、満男選手の体のキレは悪く、運動量も普段より少なく感じます。相手に寄せる守備も、スピードがない感じです。

　立ち上がりのアントラーズは不安定で、3分には、左サイドからクロスを入れられ、秋田選手のクリアがポストへ。もう少しでオウンゴールになるところ。6分にも、相手左CKをファーサイドで大岩選手にヘディングシュートされますが、これも、運良く外れます。

　この試合で、昨年の12月以来のスタメン出場になった相馬選手ですが、やはり、まだ本調子には戻らないようです。守備面でも、やや不安定な感じがあり、攻撃面でも、左を攻め上がってくロスを上げるという場面は、ほとんどありませんでした。コンビネーションで上がって行くタイプだけに、少し時間がかかるのかもしれません。今年の2ndステージでは、アウグスト選手がボールを触る回数がとても多く、アウグスト選手と左サイドに流れた満男選手で攻撃を作る場面が多かっただけに、攻撃のバリエーションが減ってしまった感じもあり、予想していた以上に、アウグスト選手の出場停止の穴を感じます。

　右サイドにいた満男選手、8分のビスマルク選手の右CKの時に左に流れ、そのまま左にいたのですが、10分のゴールキックの時、慌てたように右に走っていきます。右にいるようという指示が出ていたのでしょうか。

　満男選手は、13分、相手選手に詰めようとして、主審とぶつかってしまいます。

　この少しあと、名良橋選手からのボールを受けようとして、福西選手に後ろから倒され、福西選手のファールになります。

　代表遠征でヨーロッパに行っていたきた中田選手、前節のぬかるみの中での試合の影響もあってか、足の具合が悪いようです。やはり、代表に行っていた柳沢選手も、今ひとつキレが見られません。

　14分、名良橋選手が奥選手にスパイクでタックルされ、担架で外に出ます。満男選手、ピッチの中央にいる、熊谷選手の方に行って、何やら確認しているようです。右サイドに熊谷選手が入るようにということでしょうか。確認が取れて、走って戻ってくる満男選手です。

　19分、ファビアーノ選手がヘディングで出したパスを、満男選手、浮き球のまま右足でトラップ。前から詰めてくるDFを、高く上げた足にボールを吸いつかせるかのようにして、クルリと180度ターンして交わします。思わす「巧い!」と、客席からも声が出るプレー。そのままボールをキープ、ハーフライン上から、DF裏のスペースに柳沢選手を走らせるパス。ボールはGKにキャッチされましたが、これだけでもスタジアムに足を運んで見る価値があると思わせられます。

　21分、後ろの熊谷選手からボールを受けた満男選手、前を向きながら、前方を確認、DFのあいだを通す、長いグラウンダーのスルーパスを出します。裏に走り込んだ柳沢選手には、わずかに長く、GKに直接キャッチされてしまいますが、見事なプレーです。

　26分、右サイドライン際で、名良橋選手からの速いパスを後ろ向きで受けた満男選手。背後からチェックに来る、奥選手を避けて、ライン際を下がります。前から田中選手に詰められ、奥選手を腰で押さえるように止めると、180度ターン。さらに前方から詰めて来る、服部選手の横を通し、ラインギリギリに熊谷選手にパスを出します。

　28分、自陣、左ライン沿いでパスを受けた満男選手、2人のDFを詰めさせておいて、右に外すと、右足で、DFラインの右の柳沢選手にロングパス。柳沢選手がトラップしたところをDFに奪われてしまいますが、見事なパスです。

　33分、自陣中央当たりで、クリアボールを胸トラップで受けた満男選手、DFが詰めてくる間合いを見計らって、右サイド、ビスマルク選手にパスを出します。ビスマルク選手、柳沢選手、名良橋選手、ビスマルク選手とワンタッチでボールが回り、テンポのある攻撃になりますが、DFラインを崩すことはできません。

　バタバタしていたアントラーズですが、徐々に、ペースを取り戻します。

　36分、自陣右寄りで後ろからボールを受けた満男選手、前線、柳沢選手に大きなサイドチェンジのボール。アントラーズのチャンスに、熊谷選手が走り込んで来ますが、倒されてしまいます。

　これがFKになり、柳沢選手と満男選手は、何やら言葉を交わします。ビスマルク選手は、横の満男選手にボールを出し、満男選手は低く強いボールを放ちますが、壁に当たってはね返されてしまいます。このボールを拾おうとした満男選手、後ろから来た選手に奪われてしまいます。やはりキレが悪くて体がついていかない感じです。

　39分、ビスマルク選手からのパスを受けた満男選手、前後にDFに詰められながらも、ライン際を走り出した名良橋選手のスペースぴったりの速いパスを出します。名良橋選手はタッチラインギリギリでボールに追いつき、ダイレクトでクロスを上げましたが、ゴール前にいた平瀬選手にはあいませんでした。

　41分、藤田選手がボールを持つと、激しく体を寄せて倒し、ファールを取られる満男選手です。

　43分、相手陣内で前を向いてボールを持つと、激しく詰めてくる福西選手の一歩手前で、柳沢選手にパスを通します。福西選手は、そのまま満男選手にぶつかっていき、満男選手は転がされてしまいます。

　44分、ビスマルク選手の左CKのクリアボールに満男選手が飛び込みますが、相手に取られ、そのままカウンター攻撃を受けます。満男選手、前向きに飛び込んだために、戻りも1番遅くなりますが、それにしても、かなり疲れがあるのでしょうか、上がるペースが遅いです。田中選手のシュートを、曽ヶ端選手が片手1本をギリギリに伸ばしてセーブ。失点を逃れます。

　45分、自分のクリアしたボールを、奥選手に拾われた満男選手。正面から向かっていき、体を反転させながらボールを奪おうとしますが、奥選手を倒してしまいます。両手を大きく広げて、押していないことをアピールしますが、イヤな場所でのFKになります。

　ロスタイムは1分。前半は0-0で終了です。

　後半、出場してきた満男選手は、半袖に着替えています。アントラーズは、後半、西日に向かって攻めなければなりません。

　満男選手は、中盤でボールを持つと、縦にFWにボールを入れていきますが、FWへのジュビロのチェックが激しく、ミスパスになったり、FWが落としたボールに寄せられてしまったりします。

　11分、曽ヶ端選手のDFラインの右を狙ったフィード、満男選手は体を寄せられながらも、巧いトラップを見せて、裏のスペースに抜け出しますが、DFにクリアされてしまいます。

　相手ゴール近くで、右タッチラインを割ったボールを走って拾った満男選手、スローインをしに来た名良橋選手にボールをポンと投げて渡すと、すかさずゴールラインに向かって走り出します。まるでサインプレーのように、即座に満男選手に向かってスローインをする名良橋選手。ライン際でボールを受けた満男選手が、すぐに名良橋選手にパスを返すと、名良橋選手は、ワンタッチでファーサイドにクロスを上げます。ボールは直接、相手GKにキャッチされてしまいましたが、抜け目ないプレーで作り出した、絶好のチャンスです。

　13分、アントラーズのCKのクリアボールを、左サイドライン寄りで拾った満男選手、藤田選手に目の前に立たれながら、ポンと右足でクロスを入れます。ペナルティエリア内の中田選手の頭にぴったりと合い、ヘディングシュート。これは、弱くてGKにキャッチされてしまいました。

　そして、直後の14分。致命的な誤審が起きてしまいます。ジュビロのGKのゴールキックは、ワンバウンドして、曽ヶ端選手の方に飛びます。両手を頭上高く上げてジャンプ、キャッチした曽ヶ端選手の腹に、DFを振り切って抜け出した中山選手が腰からぶつかります。後頭部をぶつけるように倒れた曽ヶ端選手が、ボールをこぼします。中山選手の明らかなファールで、アントラーズの2人のDFだけでなく、中山選手も一瞬動きを止めますが、ホイッスルは鳴りません。それを確認した中山選手は、ボールをゴールに蹴り込みます。

　アントラーズの選手たちは、主審に詰め寄ります。場内のオーロラビジョンでも、中山選手が曽ヶ端選手にぶつかっていくところが2回はっきりと流れ、選手たちは、それを指さして副審にも詰め寄りますが、判定は覆りません。遠くにいた主審は、このプレーをはっきりと見られなかったかもしれないにせよ、すぐ近くにいた副審に見えなかったはずはないのですが。

　後半に入って、流れがアントラーズに傾いてきたところだけに、試合の流れを大きく変えてしまうジャッジです。

　自陣内で、ビスマルク選手、ファビアーノ選手、平瀬選手などが、副審に詰め寄っているあいだに、主審がセンターラインで、試合再開の動作をしているのを見た満男選手は、走って、中央に行き、柳沢選手と並んで立ちます。全く、納得のいかない得点ですが、ともかく、あと30分で点を取らなければなりません。気持ちを切り替えて、得点を狙いにいっていることが、よく分かります。

　ここまで、積極的に攻め上がることしなかった満男選手、左サイドをドリブルで上がろうとしますが、ボールを奪われてしまいます。前に3人の選手がいながらも、1人で抜けていこうというプレーに、がむしゃらに攻め上がって行こうという気持ちを感じます。

　19分、左サイドをドリブルで上がろうとした満男選手、福西選手と金沢選手に詰められて、コーナーフラッグのところまで追いつめられてしまいます。何とかボールをキープして、サイドライン沿いに抜けようとしたところを、福西選手に足をかけられ、倒されます。判定は、フリースロー。満男選手は、判定を聞いた途端にもう一度倒れこみ、悔しがりますが、起き上がると、冷静にボールを福西選手に渡します。

　この少しあと、ヘディングで競って、転んでしまった満男選手、ボールが近いところにあるのに、立ち上がることができません。自分の近くにボールが飛んでくるのを見て、ようやく立ち上がり競りに行きます。どこか痛めた様子もないのに立ち上がれないのは、もう、かなり疲れがきているのでしょうか。

　攻めなければならないアントラーズですが、なかなか速い攻撃ができず、ボールを持った満男選手も、前から詰められて、下がらざる得ない場面もあります。

　22分、センターサークル内でビスマルク選手が、相手選手と交錯して倒れこみます。ジュビロの選手から、アントラーズの選手がボールを奪うと、満男選手は、周囲をすばやく見回し、ビスマルク選手が倒れていることを確認。ボールを出すように手で指示します。

　23分、DFラインからのFK、満男選手はボールを受けると、相手GKが前に出ていることを確認し、センターサークルの一番前辺りから、ループシュートを放ちます。久々の銅像シュートは、ぴったりと枠の中に飛びますが、GKにキャッチされてしまいます。

　25分、熊谷選手に代わって、本山選手が入ります。熊谷選手は、ピッチを出ると、ドクターに左腿をチェックしてもらいます。もしかしたら、腿を痛めたのかもしれません。

　この交代で、満男選手は、かなり下がり目の位置になります。

　29分、センターサークルの後方から、右の本山選手にロングパス。DFの手前で、このパスを受けた本山選手は、高く浮かせてDFを抜こうとしますが、倒されてしまいます。

　31分、疲れの見えた柳沢選手に代わって、長谷川選手が入ります。

　前がかりになるアントラーズに、ピンチが訪れます。32分には、藤田選手がシュート、これは曽ヶ端選手がキャッチしますが、危険なシーン。

　そして、33分、ジュビロのDFに渡ったボールに前線の選手たちが詰め、本山選手、平瀬選手、長谷川選手、そして満男選手も一番前まで行ったときに、左サイド深くの、中山選手にミドルパスを通されてしまいます。アントラーズのDFも、数は足りていたのですが、藤田選手の巧みな動きに着ききれず、フリーにしてしまい、中山選手のクロスから、きれいにゴールを決められてしまいます。

　この直後、セレーゾ監督は、本田選手の交代の準備を始めます。

　34分、すでに1枚のイエローカードをもらっていたビスマルク選手が、相手選手を倒すと、満男選手は、主審の方に、両腕を打ちつけるジェスチャーをしながら寄っていき、必死の表情で、正当なチャージであるとアピールします。

　37分、自陣で前を向いてボールを持つと、服部選手がものすごい勢いで寄せてきます。足をかけられて倒され、ボールを奪われてしまう満男選手。クルリと前転して起き上がると、主審の方を向き、ファールでないことに心外そうな表情を見せます。

　38分、交代のために、本田選手がライン際に立ち、8番のボードが掲げられます。満男選手は、小走りにタッチラインに向かいます。疲れた表情の満男選手は、ベンチ前で、関塚コーチに迎えられると、トレーナーの方にタオルを渡され、ベンチに座ります。しばらく、身動きせずに座っていた満男選手、数分間経ってから、ようやく、ストッキングを下げ、スネ当てを外します。

　先に下がっていた熊谷選手と、少し距離を置いて座り、会話は交わさず、じっと試合の様子を見守っています。時には、背もたれに寄りかかって、のけぞるようにして見ていたりもしますが、よくやるストレッチは今日はしないようです。

　試合途中で、少し足を引きずるような様子を見せながら熊谷選手が上がって行きます。そのあとも、じっとベンチにいた満男選手ですが、試合終了直前、クイックスタートからの絶好のチャンスを、フリーの平瀬選手が大きくゴール上に外してしまった直後に、立ち上がります。

　足がつりかけているかのように、わずかに両膝を曲げながら、ぎこちない足取りで数歩歩いたあと、すたすたと歩き始めた満男選手ですが、メインスタンドの張り出しの下の通路で、突然、スパイクを脱ぎ出します。右足のスパイクを普通に脱いだあと、左足は、手を使って脱ぎかけたあとに、立ち上がって、慣れた様子で、つま先でスパイクをヒョイっと放り上げます。1回転したシューズは、ぴったりと左手の上に収まり、満男選手は手にスパイクを持って引き上げていきました。

　アントラーズは、得点を取れないまま試合終了。2日前、豪雨のぬかるみの中、45分間以上を、11人のジュビロに対して、10人で戦わなければならなかったアントラーズ。そのことが響いてしまったのでしょうか。ライバル相手に、全力でぶつかってやるという気迫よりは、疲ればかりを感じてしまって、それが一番気になる試合でした。