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2001/10/20(Sat)

2nd 第10節 レイソル戦

 午後3時キックオフの柏の葉競技場。快晴で、メインスタンドの大屋根の影が大きくピッチの上に落ち、日陰と日なたのコントラストが鮮明です。レイソルサポーター達は、ホームスタジアム移転の決定に反対する署名を集め、ホーム側のゴール裏にも、反対を表明する多くの横断幕が貼られています。

 バックスタンドには「Fair Play,Please」と書かれた大きな横断幕が、10枚も並べて貼られ、乱闘騒ぎを何度か起こしているレイソルのホームとしては、なんとも皮肉な光景です。

 アップが始まるまでの時間、メインスタンド下の狭いスペースで、アントラーズのスタッフや選手たちが、ボール回しをしています。うれしそうにボールと戯れる関ドクターが印象的です。

 アップのために、ウインドプレーカーを着てピッチに出てきた満男選手は、ストッキングを思いきり上げ、パンツを少しずり下げていて、膝小僧が見えません。冬が近づいてるのねと、季節感を感じさせる姿です。スパイクは、前節、セレッソ戦でもはいていた、このところ見慣れたもの。どうやら、13日のジュビロ戦のときだけ、違うものをはいていたようです。

 アップの様子は、1週間前よりは元気がある気がしますが、本山選手とのロングパスの交換でも、ボールが長くなってしまったりしています。シュート練習では、サイドからのグラウンダーのクロスに走り込んだのに、間に合わず、空振りしてしまうシーンもあって、少し心配になります。

 アップを見守るアウエイ側のゴール裏は満員。新スタジアムの完成以降、国利競技場開催のゲームがなくなったので、東京近郊のファンが集まってきているのかもしれません。

 8節でジュビロに破れ、勝ち点で並ばれたアントラーズ。ジュビロの安定した戦いぶりを考えると、今節も、絶対に勝ち点3を取らなければならない試合。前節、腿の張りのために出場していなかった中田選手が、まだ、コンディションが悪いながらも、なんとか出場。2試合出場停止が続いていたアウグスト選手が、スタメンに復帰しています。

 選手入場。満男選手を始め、ほとんどの選手たちが長袖のユニフォームを着ています。キックオフは、レイソルのボールで。アントラーズが陣地を選んだ訳ですが、前半、強い西日に向かって攻めなければならず、日差しを直接受ける曽ヶ端選手はかなり苦労しそうです。

 ゴール裏からの選手コールのタイミングが少し遅れて、キックオフ直前に小笠原コール。ハーフライン近くに立って、ホイッスルを待つ満男選手は、これから始まるゲームに集中しているのか、答えることはしません。

 右寄りでプレーを開始した満男選手、ライン際で、ルーズボールを拾いますが、平山選手、明神選手、柳選手に囲い込まれます。ボールをキープした満男選手ですが、後ろに返すしかなくなってしまいます。前々から、満男選手のことを高く評価しているレイソルのペリマン監督、この試合では、ビスマルク選手に対してよりも、満男選手に対しての方が、マークがきつかったかもしれません。

 2分、カウンター攻撃でドリブルで上がる明神選手に、詰めていく満男選手。前節まで、体が重そうで、キレも悪く見えていたのですが、かなりキレが戻ってきているようです。この試合では、いつもに近い運動量で、ピッチの広い範囲を動くことができていたと思います。

 6分、アントラーズはさっそくビッグチャンスを迎えます。ペナルティエリアの左端を縦に切り込んだ柳沢選手、ファーサイドにクロスを上げます。走り込んできた満男選手が、ジャンプ、ヘディングで落としたボールに、アウグスト選手がダイビングヘッド。ゴール!と思ったのですが、ライン上で平山選手にクリアされてしまいました。

 11分、左サイドで、杉山選手に詰め寄り自由にさせない満男選手。守備面の厳しさも、今日は目立ちます。

 アウグスト選手がいなかった2試合、右にもポジションを取ることが多かった満男選手ですが、この試合では、ほとんどの時間、左に流れています。アントラーズの攻撃も、特に前半は、ほとんどが左から。満男選手は、ボールタッチの多いアウグスト選手の回りで、攻撃を組み立てたり、かなり低い位置まで下がって、アウグスト選手が上がったあとのスペースの守備に気をつけたりしているようです。

 12分、ゴール前で明神選手に足をかけられ倒されてしまいますが、アントラーズボールだったせいかプレーは流されます。

 その直後、ゴール正面からやや左寄り、25メートルくらいのところでビスマルク選手が倒されFKになります。なかなか立ち上がれずにいるビスマルク選手の前に、満男選手はボールをセットし、ポイントに立ちます。立ち上がったビスマルク選手がポイントに近づきますが、確か名良橋選手が声をかけ、ビスマルク選手は壁の方に向かいます。やって来たアウグスト選手とも、名良橋選手が会話。満男選手、名良橋選手、アウグスト選手がボールの後ろに立ちます。満男選手の真剣なボールセットの様子から予想した通り、蹴ったのは満男選手。残念ながら落ちきれず、ゴールの上を越えてしまいました。

 14分、ゴール前に前向きに進む満男選手を、ファン選手が後ろから押して倒しますが、ファールはありません。

 18分、ルーズボールを後ろ向きに拾った満男選手、ポーンポーンと2回高くリフティングすると、高いパスを後ろの中田選手に出します。

 大野選手に厳しく体を寄せていく満男選手。この試合では、明神選手とのマッチアップも多く見られました。

 22分、隆行選手に入ったくさびのボールを受けた満男選手、前向きのいい形でボールを持つことができますが、DFに寄せられ、FWにパスを渡すことができません。この試合、なかなか、いい形でボールを持つことができず、簡単にパスを横にさばくことの多かった満男選手ですが、このチャンスを生かすことができませんでした。

 23分、後ろからのパスを、ターンしていい形で持つことのできた満男選手ですが、これも、FWにパスを出すことができず、DFに倒されます。

 これで得た、ゴール前30メートルほど、やや右寄りのFKで、アントラーズは面白いプレーを見せてくれます。ポイントの左に満男選手、右にアウグスト選手が立ち、名良橋選手が、ポイントと壁のあいだに、GKからボールを隠すように立ちます。蹴ったのはアウグスト選手。壁の端に立った隆行選手が思いきり体を屈めたところを狙い、ぴったりと枠の中に。GKの南選手は、いったんはこのボールをこぼしますが、残念ながらゴールにはなりませんでした。

 このFKは練習していたんでしょうね。なんとなく、選手たちがアイデアを持ち寄ってFKの形を作っている様子が目に浮かんで、少し楽しくなるプレーでした。

 28分、左サイドを縦にドリブルで上がろうとした満男選手、ボールを大きく蹴り出して、対応していた杉山選手を抜こうとしたところで倒され、FKを得ます。

 30分、名良橋選手からのロングパスを、ライン際高い位置で受けようとした満男選手。パスの出しどころの方に気を取られてしまったのか、トラップをミスしてラインを割ってしまいます。この他に1回、珍しく目立つミスのあった満男選手。セレッソ戦の交代後に関ドクターに見てもらっていた、アキレス腱かふくらはぎ辺りに、軽い故障を抱えているのかもしれません。

 32分、相手陣内中央でビスマルク選手からの横パスを受けた満男選手、ゴール前にいるFWへのパスを狙う態勢のまま、左サイドを上がってきたアウグスト選手にぴったりのパス。アウグスト選手がワンタッチで上げたクロスは、FWに合いませんでしたが、いいプレーでした。

 34分、左サイドから上げたクロスは、DFにクリアされてしまいます。

 38分、明神選手、大野選手に前後から詰められながら、長い横パスを名良橋選手に通します。

 42分、右サイドで、熊谷選手と一緒に平山選手に対応する満男選手。43分には、左ライン沿いで、中田選手と杉山選手に対応します。

 45分、アウグスト選手からのパスを受けて、左ライン沿いを縦に抜け出した満男選手、少し下がりながら、ファーサイドペナルティエリアの中に入ったビスマルク選手に、クロスを入れますが、DFにクリアされてしまいます。

 ロスタイムは1分。0-0で前半終了です。レイソルの中盤のチェックが、予想ほど厳しくなかったこともあって、アントラーズペースの45分間でした。引き上げていく選手たちに声をかける本山選手。満男選手にも、軽く声をかけているようです。

 後半開始直後から、アントラーズの選手にミスが目立つ気がします。ナビスコカップを含め、この11日間で4試合。疲労が溜まっているのは間違いないでしょう。満男選手だけではなく、運動量多く動き回る熊谷選手にも、代表戦から試合に出続けている中田選手にも、この試合ではミスが目立ちます。体が絞れて来ず、コンディションの上がらないビスマルク選手も、前2節に比べると動けてはいるようなのですが、パスを受ける瞬間に、両足を着けて棒立ちになってしまうことが2回ほどあって、コンディションの悪さをうかがわせます。

 8分、隆行選手が返したくさびのパスを、満男選手、得意の転びながらのスルーパス。右サイドを駆け上がって来た名良橋選手にぴったりのパスになりますが、クロスはシュートに結びつきませんでした。

 10分、右サイドを上がった熊谷選手へのパスも、チャンスには結びつきません。この試合でも、熊谷選手が上がって行くと、必ずと言っていいほどパスを出す満男選手です。

 11分、渡辺毅選手との競り合いで、お互いが倒れ、ホイッスルが鳴ります。主審は柳沢選手のファールを取りますが、柳沢選手にはその動作は見えず、相手ファールと思ったのでしょう、ボールを抱えます。ボールを取り返しに向かっていく渡辺選手。柳沢選手は、それを強く振り払い、渡辺選手は派手に倒れます。この行為で、岡田主審は、柳沢選手にレッドカードを示します。

 ここまで何回もやり合ってきた2人。柳沢選手もこらえきれないものがあったのでしょう。レッドカードを宣告されると、一瞬意外そうな顔を見せ、腹立たしさが抑えきれないように、ボールを高く蹴り上げて、ピッチを去っていきます。肩を抱くように話しかける秋田選手。ピッチを出た柳沢選手には、コーチ、ドクター、トレーナー、そして、ベンチにいた選手たちみんなが近づいて、声を掛けているようです。

 これで10人で戦わなければならなくなったアントラーズ。不利な状況です。しかし、これで逆に、全員の集中力が高まったのでしょうか、チーム全体がまとまって、いいプレーを見せてくれるようになります。優勝を争うジュビロは、1時間早く試合を終え、2-1でコンサドーレを下しています。ハーフタイムに、そのことが選手たちの耳にも入っていたかもしれません。今日は、勝ち点2だけではいけないゲームです。

 満男選手は、やや前よりのポジションを取るようになります。守備に攻撃にと、さらに幅広く動くようになります。

 14分、高い位置で、明神選手の背後から足を出し、巧くパスをサイドに流れた隆行選手につないだ満男選手ですが、クロスを上げることができません。

 22分、足を取られ転びながらも、北嶋選手のボールを奪おうと、必死に向かっていく満男選手です。

 攻め込まれるアントラーズ、ペナルティエリア内に後ろから走り込んだ明神選手に対応して、ボールを奪う満男選手です。

 29分、左サイドのフリースロー、すぐ近くに来たアウグスト選手にボールを渡さず、自ら投げる満男選手。一刻も早く得点を決めようという気持ちが伝わります。

 32分、ゴールラインまでディフェンスに戻り、砂川選手の対応をする満男選手です。

 34分、DFラインの左裏のスペースに走り込もうとする満男選手に、ビスマルク選手からパスが出ますが、大きくて、追いつくことができません。

 ハーフライン付近、左サイドで中田選手にボールを預けると、ライン沿いを真っ直ぐ上がって行くアウグスト選手。中田選手からのパスは満男選手に。満男選手はラインに背を向ける形でターンし、アウグスト選手にノールックパスを出します。このボールは、ぴったりと合いますが、クロスはGKに直接キャッチされてしまいます。

 アントラーズは、攻め上がって行っても、ゴール前の人数が足りず、なかなか決定的なチャンスを作れません。

 37分、満男選手が、ペナルティエリアの左外くらいから放った、右足のミドルシュートは、ゴール右にそれてしまいます。思わず、天を仰ぎ悔しそうな満男選手です。

 右サイドでボールを持った平山選手に詰めていく満男選手。後ろから倒してしまいファールになります。

 43分、右サイドを上がった熊谷選手に、アウグスト選手から、長いクロスが入ります。熊谷選手がヘディングで後ろに落としたところボールを拾った満男選手、ゴールに向きながらボールをキープ、背後をオーバーラップした名良橋選手にショートパスを出します。パスを受け、対応しようとした明神選手を、見事にかわした名良橋選手、グラウンダーのシュートを放ちます。アウトにかかったボールはカーブがかかって、GKの手の先を通りすぎ、ゴール左隅に。待望のゴールです。

 コーナーフラッグの手前で膝をつき両手を突き上げた名良橋選手のところに、選手たちが駈け寄り、抱きしめ、祝福します。満男選手も少し遅れて、とことこと走っていきます。苦しみながらの1点だけに、本当に、どの選手もうれしそうです。

 あと数分守りきれば、勝ち点3を取れるアントラーズ、激しい守備を見せます。満男選手と、ビスマルク選手が、2人で相手選手に詰め寄り、ファールを取られます。

 ロスタイムは3分。明神選手から巧みにボールを奪った満男選手は、もう無理に攻めることはしません。ボールをキープしようとしているところ、薩川選手に、後ろから足を思いっきり蹴られます。これで、薩川選手は2枚目のイエローカードで退場です。昨年の1stステージの1発レッドカードに続いて、満男選手と絡んでの、2度目退場です。

 終了ギリギリに、隆行選手に代わって、相馬選手が入ります。その直後に、長いホイッスルが吹かれ、試合終了。

 ピッチの中央に戻る満男選手に、熊谷選手が寄ってきてタッチします。秋田選手、曽ヶ端選手とタッチを交わした満男選手、名良橋選手に近づくと、自分から抱きつきます。喜びのアントラーズのメンバーとは逆に、レイソルの選手の何人かは、最後の一礼にも加わらず、引き上げていきます。

 ゴール裏に歩き出した満男選手の歩き方はぎこちなく、足が疲れ切っている様子です。後ろから来た、アウグスト選手が、飛びつくように満男選手におぶさりますが、ちゃんとおんぶすることもできません。でも、アウグスト選手と満男選手、やっぱり、言葉を越えたコミュニケーションが取れていそうです。

 看板の手前で、マネージャーさんからボトルを受け取り、立ち止まって水を飲んだ満男選手、そのまま、看板を越えずに帰って行ってしまうかと思ったのですが、もう一度、ゴール裏に向かって歩みを進め、看板のすき間を通って前に出ると、片手を上げて挨拶、そして、メインスタンド方向に歩いて行きました。

 メインスタンド下の通路の入り口には、マリオコーチや、マネージャーさんたちなど、笑顔で選手たちを迎え入れるスタッフの笑顔がありました。

 アントラーズのサポータも笑顔にあふれていましたが、場違いなのは、そのゴール裏のすぐ前のグランドに、三重になって仁王立ちする警察官たち。レイソルサポーターの移転反対の暴動を恐れ、この試合には警官100人が警備に当たっていたそう。スタジアムの外には、盾を持った機動隊が30〜40人は待機していたようでした。

 この試合、10人になりながら、貴重な勝ち点3をもぎ取ったアントラーズ。しかも今シーズン初の完封です。2ndステージ、残り試合はあと5つ。1つも落とせない戦いは、まだまだ続きますが、このいい流れは次にも持ち越されそうな、いい予感のする試合でした。

(バックスタンドより観戦)

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