2001/11/3(Sat)

　ポツポツと降る雨の中、わたしが席に着いたときには、ちょうど、アップが終了するところ。満男選手は、いつものように、ボールを拾うと、右足でグラウンダーのシュートを、見事にゴールに入れて、去っていきます。

　試合前には、傘なしでも過ごせるくらいの小雨だったのですが、試合が始まる直前になって、雨足が強くなってきます。メインスタンド前で、ジュエルという女性15人くらいのダンスグループのパフォーマンス。両チームのゴール裏の人数は、同じくらいでしょうか。公式発表された観客は3万人ちょっと。雨を避けて、2階に座ったお客さんも多かったようです。

　アウェイ用の白いユニフォーム、全員が長袖で登場したアントラーズの選手たち。今日は、雨もあって、寒いくらいの天候です。

　試合直前、ピッチに散ってのパス交換。満男選手のパスは、すべてグラウンダーのものです。湿っているピッチの具合を確かめるように、四方にパスを出しています。

　選手コールのタイミングが遅くなって、小笠原コールは、試合開始のホイッスルと同時ぐらい。満男選手は、答ることができません。

　アントラーズボールでキックオフ。真っ先に前に飛び出していく満男選手です。このところ、キックオフ直後に飛び出す姿をあまり見ていなかった気がするので、体調がいいのかと、うれしくなります。

　10月10日から、週2回ペースでの試合が続いたアントラーズ。どの選手もコンディションを落としていたようですが、ようやく持ち直してきたのか、この試合では、最初から激しいプレスをかけていきます。去年のチャンピオンシップ第1戦、同じこの横浜国際競技場で行われた試合の、美しく激しいプレスを、少し思い出させる感じです。

　前節、ジュビロが負けたため、この時点で、勝ち点差3で単独首位のアントラーズ。出場停止だった柳沢選手も戻って、今の時点でのベストメンバーといえる顔ぶれ。体調が悪かったのか、前節にはベンチ入りしていなかった本田選手も、ベンチに控えています。

　対するF・マリノスは、現在、年間総合順位で14位。J2降格圏の15位ヴェルディとは、勝ち点、わずかに3の差です。ちょうど、1週間前のナビスコカップ決勝で、ジュビロと120分を戦い、PKで優勝を手にしたとはいえ、3日前の第11節も引き分け。120分の試合を、1週間に2回戦ったマリノス、体力的に、かなり厳しいものがあるはずです。しかも、レギュラーの波戸選手、ナザ選手、ブリット選手を、ケガや出場停止で欠いています。

　この試合で、F・マリノスの取った戦法は、引いて守ってカウンターというもの。3-5-2の布陣ですが、攻撃は、トップの2人と俊輔選手に任せている感じ。両サイドの選手も、時にドゥトラ選手が左から、鋭いドリブルで上がって来てチャンスを作るのみで、ほとんど、上がりを見せません。

　さっそく、パスを受けた俊輔選手に寄せていく満男選手です。

　2分、左サイドから、長いクロスをゴール前に入れる満男選手。ヘディングでDFにクリアされます。

　5分、右サイドを上がった熊谷選手から、ゴールラインまでえぐった名良橋選手にパスが通ります。名良橋選手のクロスを、ビスマルク選手がシュートしますが、らしくないミスキック。決定的なチャンスを逃します。内転筋を痛めて、昨日まで、この試合に出られるかどうかすら分からないと言われていたビスマルク選手。このあとも、らしくない目立ったミスがありましたが、その分を、運動量でカバーするかのように、よく走っていました。

　7分、満男選手は、ボールを持った遠藤選手に厳しく詰めていき、ファールを取られます。

　8分、アントラーズのCKの時、満男選手、ファビアーノ選手にファーの方を指さして、そちらに行くように指示します。

　10分、右サイドで、名良橋選手が入れたくさびのパスを、柳沢選手が満男選手に落とします。満男選手は、ライン際で、ワンタッチでボールを浮かせると、目の前にいたDFの頭の上を越したボールは、右サイドのスペースへ。柳沢選手と名良橋選手が、そこに走り込んでいますが、DFにクリアされてしまいます。

　14分、DFにボールを預け、上がって行こうとする満男選手に、俊輔選手がマークに入ります。F・マリノスは、非常に守備的で、俊輔選手も、攻撃だけではなく、守備にかなり力を割いています。

　16分、中央、やや左寄りにいた満男選手、右のライン沿いの名良橋選手にボールが渡るのを見ながら、後ろの選手に上がるように指示を出します。

　20分、F・マリノスの左サイド、何回か突破してチャンスを作っているドゥトラ選手を、名良橋選手と2人でチェックします。

　25分、俊輔選手のサイドチェンジのパスを、自陣でカット、満男選手に預けると、そのまま全力で上がって行く名良橋選手。アントラーズ、カウンターのチャンスに、満男選手も上がりながら、タイミングを見ています。名良橋選手が、併走するドゥトラ選手を抜いた瞬間、ドゥトラ選手が足を掛けます。悪質なファールですが、ボールがないところだったせいで、主審が見逃したのか、カードが出ません。

　28分、ボールを持った俊輔選手にチェックに行く満男選手。ライン際、足元にあるボールに巧くチャレンジして、アントラーズボールにします。俊輔選手は倒れますが、ホイッスルが吹かれず、地面を叩いて悔しがります。

　この直後、鈴木選手が、くさびのボールをキープしながら、左コーナーのスペースに出しますが、ラインの後ろで受けようと思っていたのか、満男選手の足が一瞬遅れて、間に合いません。ゴールラインの手前で、DFと競った満男選手、相手を倒してしまいファールになります。

　満男選手、相手陣内で、パスを散らしたり、サイドに流れたりしながら、攻撃を組み立てますが、なかなか決定的なチャンスになりません。カウンターでは、ディフェンスラインまで走って戻ります。運動量が多く、体が動いているようです。

　32分、左ライン沿いで、DF3人に囲まれる満男選手。倒されながらも、アウグスト選手にパスを通し、ボールを奪われません。

　35分、ゴール前、こぼれ球に詰め寄る満男選手ですが、相手GKにキャッチされます。

　36分、俊輔選手が中田選手をつかみファールになります。抗議する中田選手。満男選手も主審に、話しかけにますが、表情は穏やかです。

　その少しあと、左サイドを、満男選手とのワンツーで駆け上がるアウグスト選手。ファーサイドにいいクロスを上げますが、隆行選手のヘディングシュートは、バーの上。惜しいシーンでした。

　37分、一瞬のすきを突いて、坂田選手にミドルシュートを決められてしまいます。守ってカウンターのF・マリノスの、ゲームプラン通りの展開になってしまいます。

　39分、アウグスト選手が入れたクロス、DFの後ろで受けた柳沢選手が、後ろに落としたボールに走り込んだ満男選手、シュートを放ちますが、足元にスライディングに来た俊輔選手にブロックされてしまいます。飛び上がって衝突を避け、地面に転がる満男選手です。

　40分、左サイドから、大きなサイドチェンジのボールを満男選手が出します。走り込む名良橋選手のチェックに入るドゥトラ選手を、ボールのないところで隆行選手が倒し、イエローカードが出されます。

　42分、右サイドで、前線の選手に、右寄りに移動するよう手で合図を送りながら、ライン際の名良橋選手にボールを預ける満男選手です。

　44分、アントラーズカウンター、自陣からドリブルで駆け上がりながら、右前方の柳沢選手にパスを出す満男選手ですが、相手の残っている選手が多く、速い攻撃ができません。このあと、ゴール前の混戦で、前向きの柳沢選手に、短く浮かせたパスを出しますが、シュートに結びつきません。

　前半は、1点ビハインドで終わります。

　後半は、F・マリノスのキックオフで開始。右サイドで、最初から、プレッシングに行く満男選手です。

　F・マリノスは、さらに守備的にゴール前を固めてきます。

　2分、左からのアウグスト選手のミドルシュートは、GKにはじかれます。

　3分、左サイド沿いでパスを受けた満男選手、平間選手に体を寄せられながらも倒れず、逆サイドに上がった、熊谷選手にグラウンダーのパスを通します。熊谷選手は、これを、後ろから走り込んできた名良橋選手にパス。名良橋選手のミドルシュートはクリアされ、後ろから走り込んできた中田選手が、もう一度、シュートを放ちますが、すぐ前にいた満男選手を直撃してしまいます。

　4分、ドゥトラ選手が倒れて、右サイド、自陣ゴール近くでのFKになると、アントラーズの選手たちが、いっせいに、主審の片山さんに抗議します。指さす方向からして、副審に何かを確認してくれと言っているのかもしれません。満男選手も指さし、抗議します。それほど、しつこい抗議ではなく、選手たちは、すぐに離れていったのですが、主審の目の前で熊谷選手と一緒に壁になる満男選手だけが、もう一度、指を差して抗議を続けます。左手で、自分の胸を叩いて何やら激しい言葉を言ったらしく、思わず、片山さんが、詰め寄ります。それでも、抗議を止めない満男選手。熊谷選手が、2人のあいだに割って入って、片山さんを押し留めるようにします。いい加減にしろよと言うように、満男選手を横に押す熊谷選手。片山さんも、何かいいながら、自分のポジションに行きますが、満男選手は、熱くなっているのでしょう、最後まで何やら言っているようです。この場面、熊谷選手がいなければ、イエローカードが出てもおかしくない雰囲気でした。

　7分、熊谷選手を倒して、ドゥトラ選手にイエローカード。退場にならないのが不思議なくらい、ラフなプレーの多いドゥトラ選手です。

　ハーフラインの10メートルくらい前、相手のボランチの手前ぐらいで、左右のサイドを上がる選手にパスを散らすことが多かった満男選手、9分、中央で、縦パスを入れ、そのまま上がって行きますが、クリアされます。

　前半早い時間に、本山選手がアップを開始します。

　10分、ペナルティエリアの中から下がって、ビスマルク選手のパスを受けた満男選手、背中に着いたドゥトラ選手を、ボールを後ろに下げるふりをして外し、すかさずターンすると、グラウンダーのシュートを放ちます。これは、わずかにDFの足が触れたのか、少し弱いボールになってしまい、GKにキャッチされますが、素晴らしい動きでした。

　12分、右ライン際でドゥトラ選手、遠藤選手に囲まれた満男選手、足の裏でボールをコントロール、左に抜け出そうとしますが、これは、ドゥトラ選手に取られてしまいます。

　14分、熊谷選手に代わって、本山選手が入ります。熊谷選手、試合中に足を痛めたのでしょう、このリードされている場面でも、タッチラインまで走って行くことができません。この交代で、満男選手の、守備的な役割が増えたように思えました。

　15分、ハーフラインの少し前で、オーバーヘッドでパスカットする満男選手ですが、これは味方には繋がりません。この直後、中村選手から永山選手にパスが渡ったところで、全力で追っていった満男選手、体を寄せるようにしてボールを奪います。ドリブルで上がる満男選手、出しどころないままに、つぶされて、FKを得ます。

　左寄りからのFK、満男選手は、ボールをセットすると、遠くに離れていた名良橋選手を手招きして呼び寄せ、名良橋選手が後ろに、満男選手が左寄りに立ちます。満男選手、2度ほど蹴ろうとして、壁の様子が気になるのか、途中で動きを止めます。結局、最後も蹴ったのは満男選手。壁の脇を、カーブをかけた低いボールで抜きますが、GK正面で、キャッチされてしまいます。

　17分、アントラーズDFのミスから、城選手が曽ヶ端選手と1対1に。城選手のシュートは、枠を外れます。

　22分、右サイド沿いでこぼれ球を拾った満男選手、前方からスライディングに来た小原選手の足先で、本山選手にボールを渡すと、小原選手を飛び越して、前に上がっていきます。

　なかなか同点に追いつけないアントラーズ、隆行選手に代わって、平瀬選手が入ります。

　左サイドライン際で縦パスを受けた満男選手、永山選手、中村選手にチェックに来られて、体勢を崩しながらも、右前方のアウグスト選手にパスを通します。思わず、スタンドがどよめくプレーです。

　27分、クリアボールのこぼれ球をシュートしようと、後ろから走り込んだ満男選手ですが、ペナルティエリアの中の本山選手がそれに気づかず、ボールを下げてしまいます。

　29分、F・マリノスの左CK。中村選手のキックに備え、普段ならペナルティアーク付近に構える満男選手が、ペナルティスポット辺りにまで入り込んでいます。

　ビスマルク選手のサイドチェンジのパス。近くにいた満男選手、ボールに触らないように、ちょっと飛び上がって後ろにどきます。

　30分、ピッチの中央で、パスミスを拾った満男選手、裏の左のスペースにロングボールを入れますが、ビスマルク選手には合いません。

　32分、アウグスト選手からの短いパスを、左寄りで受けた満男選手、右サイド、ハーフラインの前まで上がってきた秋田選手に横パスを出します。秋田選手の上げた、ファーサイドへの長いクロスを、平瀬選手が落とし、ゴール正面で、ビスマルク選手がヘディングでコントロール、アウグスト選手に合わせます。GKの目の前で、アウグスト選手は左足でボールを押し込みゴール。アントラーズ、ようやく同点に追いつきます。

　34分、DFのクリアミスしたボールが、柳沢選手の目の前にこぼれますが、柳沢選手のシュートは、GKにはじかれてしまいます。

　前半から、名良橋選手、アウグスト選手が高い位置に上がることが多く、中田選手がバックラインの左に入って、3バックにしか見えない場面も多いアントラーズ。中田選手も、左足に違和感があり、本調子ではありません。

　35分、平間選手に代わって、満男選手とも親交のあるという古賀誠史選手が入ります。同時に、城選手に代わり、安永選手が入ります。

　36分、左のライン際で、その古賀選手に、激しくチェックに行く満男選手ですが、ファールを取られます。

　39分、ペナルティエリアの手前で、クリアボールに飛び込む満男選手、うまくコントロールすることができません。

　40分、F・マリノスのカウンター、上がって行く松田選手を30メートルほど全力で追った満男選手、スライディングを仕掛けます。

　42分、満男選手が、縦パスを、DFを背負った本山選手の胸に入れますが、うまく落とすことができません。

　平瀬選手からの横パスに、後ろから走り込んだ満男選手、ミドルシュートを打ちますが、目の前の中村選手に、左足で防がれます。

　ここで、坂田選手に代わって、上野選手が入ります。

　43分、少し下がってボールを受けに来たビスマルク選手、満男選手とかぶる位置でパスを受けると前に走り出します。試合開始直後から飛ばしていた満男選手は、少し動きが悪くなっているようです。ケガを押して出場しているビスマルク選手の方が、この時間帯には、運動量が多かったかもしれません。

　ハーフラインの少し手前、フリーでパスを受けた満男選手、DFラインの左にいる、平瀬選手にいいパスを通します。平瀬選手のクロスのクリアボールを、かけ上がって、DFラインの裏に入れる満男選手ですが、オフサイドです。

　ロスタイムは2分。90分で決着がつかず、延長戦に入ります。強く降り続く雨、ピッチの横に置かれた、緑のシートの部分に、雨水が貯まっています。ピッチ上、水の浮く部分はありませんが、刻々とコンディションが変わっていることでしょう。

　ベンチの前に歩いていった満男選手、スタッフの差し出すベンチコートを断ると、まず、タオルとペットボトルを受け取り、給水し、それから、コートをもらって着込みます。

　ピッチ上では、本田選手が、ペースを上げてアップを行っています。スタッフと選手で大きな円陣を組むと、里内コーチにストレッチを手伝ってもらっていたビスマルク選手が、最後に輪に加わります。コートをスタッフに預けると、ピッチに散り、延長開始です。本田選手は、柳沢選手に代わって入ります。

　アントラーズボールで延長のキックオフ。本山選手は、いきなり、大きく前にボールを蹴り出します。それぞれのチームは、自分たちのサポーターを背に攻めていきます。

　ライン際で、相手スローインのボールを奪おうと、動き回る満男選手。運動量は落ちても、ポイントでは、キッチリと動いています。

　4分、本山選手を倒して、松田選手にイエローカードが出ます。

　7分、自陣、右のライン際でボールをキープしようとした満男選手、後ろから押されて倒され、相手のファールになります。

　13分、延長前半のロスタイムを知らせるボードが、準備されます。

　ビスマルク選手が短く入れた縦パスを、ペナルティエリアの端に戻って受けた平瀬選手、ワンタッチで、裏のスペースに斜めに流し込みます。左寄りで、オフサイドラインギリギリから飛び出した中田選手が、それをうまくコントロール。左足でシュート。Vゴールです。

　コーナーポストに駈け寄り、喜び合う選手たち。満男選手は、勝利の瞬間に、その場に崩れ落ちてしまいます。コーナーポストから、20メートルくらいのところに、仰向けに倒れた姿に気づいた名良橋選手、近づいて屈み込み、声を掛けます。

　一礼が終わると、ゴール裏に向かって歩き出す選手たち。満男選手も中田選手に声を掛けますが、歩き方は、もう、いっぱいいっぱいといった感じです。ようやく、ゴールの脇まで来ると、歩みを止めてペットボトルを拾い上げ水を飲みます。そして、もう一度、スタンドに向かって歩き始めますが、同じく、いっぱいいっぱいだっただろうビスマルク選手と一緒に、看板の前には出ず、軽く手を上げると、メインスタンドに向かって帰っていきます。

　オーロラビジョンには、勝ち点を取れず、降格の危機の迫ったF・マリノスの松田選手が、両手で耳をふさいている姿が、大きく映し出されていました。

　この日、同時刻に試合を行っていたジュビロは、同じく、延長Vゴール勝ち。勝ち点差は、これまでと同じく3のまま、アントラーズが首位。残りは、あと3試合です。