2002/2/21(Thu)

アジアクラブ選手権 準々決勝リーグ 安養LG戦

　曇り空から雨が降り始めた4時少し前に、それまで行われていた水原三星vs大連実徳が終了しました。結果は、2-0で水原三星が勝ち。これで、アントラーズは安養に勝ちさえすれば、決勝トーナメントに進むことができます。

　今まで試合をしていた選手たちがピッチから姿を消すと、入れ替わるように、アントラーズと安養の選手たちがアップのためにピッチに現れます。満男選手は、ウインドブレーカーに長ズボン姿。日差しがないにもかかわらず、それほどの寒さは感じず、風の強かった2日前の昼の試合よりも暖かいくらいです。

　満男選手は、シュート練習でも押さえたシュートを何本も打ち、調子は悪くなさそう。20分ほどで、選手たちはアップを終えて、上がって行きます。

　ここ5日間で5試合が行われたピッチは、かなり荒れてきているようで、特にアウエイ側のゴール前は、芝がはげてしまっています。

　この試合、アントラーズのベンチはアウエイ側ですが、水原三星戦の最中から、アウエイ側に陣取り、横断幕を広げた、50人ほどの安養のサポーターは、試合が終了しても動こうとせず、少人数のアントラーズサポーターはホーム側に陣取ります。柳沢選手の大きな写真入りの横断幕や、アントラーズの選手・スタッフが勢揃いした写真入りの横断幕が広げられているのは、地元、韓国のファンのものでしょう。

　試合開始時間が近づくにつれて、次第に雨が激しくなっていきます。

　4時半過ぎ、FIFAのテーマソングが流れ、フェアプレイフラッグと、アントラーズ、安養のフラッグに続いて選手の入場です。主審は、どうやらアラブ系の人に思えます。

　チームの先頭に立っているのは、ペナントを持った本田選手。前の試合で、途中交代だった熊谷選手は、多分、どこかを痛めているのでしょう。ベンチには入っていますが、スタメン出場はではありません。

　写真撮影のためにコートを脱ぐ選手たち。安養のユニフォームは赤。アントラーズは白のアウェイ用のユニフォーム。満男選手は、手袋をはめています。

　ピッチに散ったアントラーズは、いつも通りの4-4-2。曽ヶ端選手、名良橋選手、秋田選手、ファビアーノ選手、アウグスト選手、本田選手、中田選手、満男選手、本山選手、柳沢選手、隆行選手。2列目は、満男選手が右、本山選手が左に入っています。

　4時35分、安養のボールでキックオフ。アントラーズは、メインスタンドから見て、右から左に攻めていきます。試合開始すぐに、満男選手が左に流れ本山選手が右になります。左右のポジションチェンジは、かなり頻繁ですが、満男選手が左にいる時間の方が、多いように思えます。

　安養は3-5-2の布陣。トップ下の10番の選手と、ボランチの18番の選手は、顔つきが韓国人ではないようです。ブラジルの選手でしょうか。

　6分、満男選手は22番に足を蹴られて倒れ、ファールです。

　9分、ゴール前でボールを持った本田選手が、左を上がった名良橋選手に横パス。名良橋選手が思いっきりシュートしますが、バーに当たってしまいます。跳ね返ったボールは、ゴール前に落ちましたが、誰も詰められません。

　12分、満男選手が相手選手の肩をつかんで倒し、ファールになります。

　13分、左寄りからの隆行選手のシュートを、GKがパンチングで逃れます、そのボールを右から詰めていた柳沢選手がシュートしますが、DFに当たったのか、ゴール右にそれます。その直後の満男選手の右CK、ショートコーナーから名良橋選手がファーサイドの隆行選手に合わせますが、隆行選手のシュートは、枠を外れてしまいます。

　14分、右ライン沿いで、ボールとともにジャンプするようにして一人抜いた満男選手、相手選手に囲まれながらも、ボールをキープ。一人抜いて前を向いたところで、相手選手にこづかれて倒されファールをもらいます。

　16分、右ライン沿いで、相手選手を倒し、本田選手にイエローカードが出ます。

　18分、自陣中央当たりで相手FKのこぼれ球を拾った満男選手、一気に、前線に残っていた本山選手に50メートルほどのパス。これは見事に通ります。その後、ゴール前まで詰めて、こぼれ球をシュートする満男選手です。

　本山選手は、この試合では、相手の3バックに合わせてか、3トップ気味に高い位置に張ることが多いようですが、ボールに触る回数は、すごく少なく感じます。

　22分、柳沢選手が倒され、相手選手にイエローカードが出ます。

　23分、安養の選手の豪快なミドルシュートを、曽ヶ端選手がパンチングで防ぎます。

　24分、相手陣内、左ライン沿いで満男選手が倒され相手ファールになります。FKを早く蹴ろうとする満男選手の前から、安養の選手がどかず、主審に注意されます。

　26分、ゴール前、25メートルほど、やや左寄りからのFK、中田選手と満男選手が並び、満男選手が蹴りますが、これはDFにクリアされたのか、ゴール左にそれます。

　30分、相手のボランチの選手の交代です。この試合、この交代のあとも、満男選手は、それほど徹底的なマンマークは受けません。

　辺りが暗くなり、照明灯の光が明るく感じてきます。

　32分、安養のミドルシュートは、バーのはるか上に外れます。

　アントラーズの選手は、少しミスパスが多く感じます。降り続いている雨のせいでしょうか。

　36分、曽ヶ端選手のフィードボールを、満男選手は相手選手と思いっきり競り合い、相手を倒してファールになります。

　41分、相手選手が倒れて、担架が入ります。満男選手は、ベンチのスタッフからペットボトルを受け取り、給水します。

　45分、相手FKはバーの上です。

　ロスタイム1分が終了して、引き上げてくる選手たち。満男選手は、一瞬、うまくいかないなと言いたげに、天を仰ぎます。

　後半開始前、平瀬選手が出場の準備をし、柳沢選手に代わってピッチに立ちます。前半、特にひどく痛がっている様子はなかった柳沢選手ですが、多分、どこか痛めているのでしょう。

　午後5時38分、後半開始。開始前には満男選手が右、本山選手が左にいたのですが、ワンプレーで左右を入れ替わります。

　後半5分、右から名良橋選手が上げたクロス、ゴール前に隆行選手と平瀬選手が詰めます。絶好のチャンスに平瀬選手のヘディングは、ゴール右にそれてしまいます。

　8分、相手に押し込まれシュートを放たれます。アントラーズのピンチです。

　平瀬選手が左から入れたボールに本山選手が詰めますが、GKに阻まれます。

　9分、ついにアントラーズのゴールが決まります。満男選手の右CK、ニアを狙ったところを、DFがクリア。そのボールを拾った本山選手が、ダイレクトでミドルシュート。これが、前の選手の隙間を見事に抜いて、ゴール右の方に。喜び合う選手たち。満男選手は、少し遅れてハーフライン近くで、本山選手と笑顔でハイタッチします。

　11分、いままで小走りにCKに向かっていた満男選手が、ゆっくりと歩いてコーナーに。主審にホイッスルを吹かれ、注意されます。

　13分、アントラーズの選手が2人同時にピッチに倒れ、満男選手が、ボールを出します。ボールが出た頃には、2人とも起きあがっていたのですが、安養の選手は、このボールをきちんと帰してくれます。

　17分、自陣ゴール前の秋田選手のヘディングクリアが、本山選手につながり、前線の平瀬選手と隆行選手が走り出して、きれいなカウンターになりますが、満男選手は上がりません。

　20分、本山選手から、オフサイドぎりぎりの隆行選手に通ったパス、隆行選手のシュートはバーの上です。

　22分、自陣内の相手FK、満男選手はFKをすぐに蹴られないように、ボールの直前に立ちながら、FKのポイントがずれていることを指さして指摘しますが、主審は直しません。

　27分、相手選手がドリブルで真っ直ぐにゴールに突進していくのを、満男選手は、ペナルティエリアの中まで追って行き、なんとか防ぎます。

　満男選手が右サイド寄りから、DFの裏のスペースに出した大きな展開のパス。隆行選手と本山選手が走り込み、中央の隆行選手が受けますが、オフサイド。満男選手はしゃがみ込みます。狙いとしては、左寄りにいた本山選手に出したかったのかもしれません。

　満男選手は、バランスを見てか、あまり上がらなくなっています。

　安養の右サイドからクロス、ダイビングヘッドで放たれたシュートは、かろうじてゴール左にそれます。このピンチに、満男選手、手を叩いて集中をうながします。

　満男選手がこぼれ球を拾い、ロングパスが通りますが、オフサイドの判定。セレーゾ監督はベンチ前で、飛び上がって怒っています。

　この頃から、相手に押し込まれて、アントラーズ陣内でのプレーが行われることが多くなっています。

　隆行選手が相手選手をつかんでイエローカードをもらいます。

　40分、隆行選手が池内選手と交代になります。多分、このあと、3バックになったのだと思います。

　ファビアーノ選手、タッチラインで痛み止めのスプレーをかけてもらい治療します。昨日の練習を、ずっと座ってみていたファビアーノ選手、足を痛めているようです。

　41分、自陣深いところで、ラインぎりぎりまでボールを追ったアウグスト選手、満男選手に繋ぐとオーバーラップを仕掛けます。大きく空いた左サイドの裏のスペースに、満男選手のグラウンダーのロングパス。長い距離を走って追いついたアウグスト選手は、そのままドリブルでゴール前に進みます。相手選手と1対1でゴール左隅まで来たアウグスト選手ですが、角度がなくなってしまい、ゴール前に詰めて来た本山選手にマイナスのパス。絶好のチャンスだったのですが、残念ながら、これはゴールに結びつきませんでした。

　そして、そのチャンスを逃したあとの43分、アントラーズの選手が、ゴール前にドリブルで進んできた相手を倒して、安養のFKになります。ペナルティアークのほんの外側、ゴール真正面。アントラーズの選手は全員が戻って壁に入ります。満男選手も、壁の中で、相手と激しくやり合っています。ポイントの前に立ったのは、アンドレという18番の選手。

　アンドレ選手が蹴ったボールは、きれいな弧を描いてゴールネットを揺らします。曽ヶ端選手は一歩も動くことができません。スタジアムのデジタル時計の表示は「89」。赤いユニフォームを着た選手たちが、一斉にベンチ前に駈け寄り喜び合うなか、白のユニフォームの選手たちは、茫然と動くことができません。見ている側も茫然としているその時、白いユニフォームを着た一人の選手が、まっしぐらにボールを蹴りながらセンターサークルに向かいます。満男選手です。

　試合再開の直後に出たロスタイムの表示は4分。さっきの満男選手の勢いにきっと点が取れると信じて試合を見続けます。アントラーズの選手も、懸命に攻撃します。

　46分、ゴールから約30メートル、やや右よりの位置でボールを持った満男選手、一瞬間を置いて、前線の選手たちの動きやGKの位置を見定め、ループシュートを放ちますが、バーの上を大きく外れてしまいます。ピッチに大の字に倒れる満男選手です。

　47分、本田選手に代わって長谷川選手が入ります。

　攻め続ようとするアントラーズですが、なかなか決定的なチャンスに持ち込めず、満男選手も、ハーフラインくらいから、前線の長谷川選手に、「ハセさん、お願い!」とでもいうようなパスを出しますが、シュートには結びつきません。

　逆に、相手に、ゴールネットの上に乗るロングシュートを放たれてしまいます。

　そして、試合終了のホイッスル。その瞬間、満男選手はヒザに手を当て、一瞬の間のあと、崩れ落ちるように正座ます。じっと動けなくなる満男選手の上に、ますます強くなってきた雨が降りつけています。負け試合のあとピッチに倒れ込む姿を見せることが、決してない満男選手。いったい何を考えているのでしょう。

　立ち上がった満男選手は、ぎこちない足取りでピッチの真ん中に歩いて行くと、わずか20人ほどでコールを送り続けたアントラーズのサポーターの方に歩いて行きますが、それも数歩だけ。大きく手を挙げると、またぎこちない足取りで、手袋を外しながら、メインスタンド下に去って行きました。

　終了寸前の失点で、アジアクラブ選手権決勝トーナメント進出の夢を断たれたアントラーズ。しかも、3戦して1勝もできない結果は、今シーズンのアントラーズの困難な出発を予感させてなりません。でも、一つ一つ壁を乗り越えて、大きく成長してきた満男選手、今度の壁も、もちろん乗り越えて、また一回り大きくなってくれるでしょう。水原三星戦よりも、ずっと内容のよかった安養LG戦、そのとっかかりは、満男選手の中には、もうあるのかもしれません。