2002/3/16(Sat)

　土曜日とはとても思えないほど、人出の少ない国立競技場。空には厚い雲が広がっていますが、風もなく、寒さは感じません。東京では、桜の花が咲き始めたことがニュースになっていて、もう、すっかり春の陽気です。

　入場者数は1万5千人ほど。試合が始まる時間には、アウエイ側、アントラーズのゴール裏は、最上段まで赤く染まりましたが、ジェフのゴール裏は寂しく、まるでアントラーズのホームゲームのような雰囲気です。バックスタンドも、2階席は閉められ、1階にだけパラパラとお客さんが座っています。

　昨シーズン年間3位のジェフは、新監督ベングロシュさんののもとで、今シーズン2連勝中。対するアントラーズは、新シーズンになって7試合、まだ勝ちがありません。

　なぜか早々とフェアプレイフラッグだけが、音楽もなく入場し、TV用にかピッチ中央に長時間掲げられたあと、ちょっと間の抜けた感じで選手入場です。BGMが遅れたタイミングで弱々しく流れるのは、何か機材のトラブルでもあったのでしょうか。

　珍しく最後尾で入場してきた満男選手は、列に並ぶ選手たちを追いかけて、珍しく小走りに列に着きます。ピッチに散ってパス交換を始めるときに、右手と左手、交互にお腹のところに持っていっていますが、押さえているわけではなさそうです。

　アントラーズのメンバーは、曽ヶ端選手、名良橋選手、秋田選手、ファビアーノ選手、アウグスト選手、熊谷選手、中田選手、満男選手、本山選手、柳沢選手、隆行選手。足のケガで前節欠場したファビアーノ選手が、今節は戻ってきて、リーグ戦が始まって初めて、今季のレギュラーメンバーがそろっての試合になります。対するジェフもケガで欠場していた阿部選手がスタメンに戻り、ベストメンバーが組めているようです。

　2時4分、アントラーズボールでキックオフです。主審はスペインのフェルナンデス・マリンさん。先週に続いて、今までに当たったことのない外国人審判です。アントラーズは、ホームのゴール裏に向かって攻めていきます。2列目には、満男選手が右、本山選手が左に入っています。

　3分、バックラインからのパスを、右サイド寄りで、うまい体の向きで受けた満男選手。相手選手に詰められる中、前に走り出した熊谷選手にピッタリのパスを出します。

　4分、本山選手のクロスのクリアボールが、目の前にこぼれて、満男選手のシュートは、目の前のDFに当たってしまいます。

　名良橋選手のパスをハーフライン付近まで戻ってきて受けた満男選手、軽くアウトサイドで、背後にいる隆行選手にボールを流すと、すぐに反転して右サイドを前に走り出します。隆行選手が自陣の中田選手にボールを戻すと、中田選手はダイレクトでスペースに飛び出していく満男選手にパス。右のライン沿い高い位置でパスを受けた満男選手は、ファーにボールを蹴りますが、これはミスキックでしょう、反対側のサイドラインを割ってしまいます。

　前節の試合では、前からのチェックを激しく行っていたアントラーズですが、今日は、それほど見られません。前節は途中からペースダウンしてしまった感がありました。ペース配分を考えているのでしょうか。

　6分、名良橋選手からのクロスに柳沢選手と隆行選手が飛び込みますが、かろうじてGKがパンチング。クリアボールが、本山選手の前にこぼれ、ファーの中田選手にクロス。中田選手はDFにつかまれながらも、ヘディングしますが、ゴール右にそれます。

　7分、左サイドでアウグスト選手からのクロスが上がった瞬間に、こぼれ球を狙って、ペナルティエリア内に入っていく満男選手です。

　8分、相手陣内中央で、前節と同じようなスルーを見せる満男選手。背後でボールを受けたのは、やっぱり熊谷選手です。

　9分、スピードで裏に抜け出し、GKと1対1になる大柴選手。シュートは曽ヶ端選手がキャッチします。

　13分、ジェフの選手が蹴ったボールが、至近距離の本山選手の顔に当たって、満男選手の前にこぼれます。満男選手は相手3人に囲まれながらも、隆行選手にパスを出しますが、合いません。

　15分、アントラーズ初めてのCK。左から満男選手が蹴ります。この流れから、最後に中田選手のシュート。これは、大きく外れます。このCKで、今日、初めて満男選手が左にポジションを取ります。

　16分、中田選手の大きなヘディングを、前線の隆行選手に。隆行選手がそらせたボールは、柳沢選手に繋がりますが、隆行選手がファールを取られてしまいます。

　20分、アウグスト選手のクロスがクリアされ、左CKを得ます。満男選手が蹴ったボールは、DFにクリアされて、ペナルティエリアの外の本山選手の前に。本山選手は、ふわりとしたボールをファーに上げます。それを見て、後ろに下がりながらジャンプした柳沢選手は、GKの伸ばした手に競り勝って、ヘディングシュート。見事にコースを変えられたボールは、ゴールに吸い込まれます。

　柳沢選手を祝福する選手たち。満男選手は、その輪に加わらず、サイドラインの方に行きます。

　23分、ライン際でムイチン選手が倒れ、そのまま動けなくなります。誰も気づかないのかプレーが途切れず、何人もの選手を経由したあと、ボールを出したのは逆サイドの満男選手です。担架も運び込まれる中、満男選手は、左のシューズのひもを直しているようです。

　24分、秋田選手が相手選手と競って左肩から落ちたきり、動けなくなります。ものすごく痛そうな様子で、もしかしたら去年のチャンピオンシップの時にした脱臼が癖になっているのかもしれません。

　この時間の間に、満男選手は左サイドのラインの方に走っていきます。スパイクを気にしている様子です。ドクターとともに、ラインの外に出た秋田選手は、すぐに戻ってきます。反対側のサイドで、満男選手は、プレーが途切れるのを待ってピッチに戻ります。

　1点が入ったあとから、ジェフの前に出ようという動きが増えてきたように思えます。

　29分、大柴選手のクロスを、相手選手と競りながら、曽ヶ端選手がキャッチします。

　30分、自陣ゴールライン近くまで攻め込まれ、アウグスト選手が坂本選手からボールを奪って、満男選手に繋ぎます。そこで、3人の選手に囲まれプレッシャーをかけられて、ペナルティエリア内に追い込まれ、ボールを奪われてしまいます。ピンチを招きましたが、なんとかクリアするアントラーズです。

　32分、左サイドで取ったボールを横パスで熊谷選手に繋ごうとしたところを奪われ、取り返そうとした熊谷選手がファール。満男選手は、思わず下を向きます。

　このFKの流れから、クリアボールを拾った満男選手は、一直線に前に駆け出すと、足や頭を使ってボールをコントロール、DF裏右のスペースに、柳沢選手を走らせるロングパスを蹴ります。素晴らしいパスでしたが、ペナルティエリアを飛び出してきたGKにクリアされます。

　34分、本山選手のクロスに飛び込んだ柳沢選手、相手選手と交錯、お腹を痛めたようで、しばらく立ち上がれません。ボールが出され、プレーが途切れます。

　36分、ゴール前で大柴選手が動けなくなります。オフサイドのあとの、フリーキックを蹴ろうとする曽ヶ端選手の目の前です。曽ヶ端選手は痛んでいる選手がいることを主審に告げますが、主審はプレーを続行させます。

　39分、満男選手の右CK、ゴール前の混戦から中田選手がシュートを打ちますが、DFにクリアされます。

　41分、ペナルティエリアの外、右の角当たりでボールを受けた満男選手、目の前のDFを交わし中央に進むと左足でシュートを放ちますが、バーの上を越えます。

　アウグスト選手が主審に何か言ったのでしょうか、イエローカードが出ます。

　42分、本山選手が相手選手に足をかけて倒してしまい、イエローカードが出ます。

　ロスタイムは2分です。

　45分、最終列のミリノビッチ選手からロングボールが入ります。チェ・ヨンス選手がダイレクトでシュートを打ちますが、曽ヶ端選手ががっちりキャッチします。

　前半終了。アップのためにピッチに出てきたサブの高嵜選手は、ジェフのサブの選手の一人と、肩を組んで親しげに話しています。去年1年、ジェフにいた高嵜選手。後半始まる前には、ピッチに出てきた、櫛野選手と話を交わしたり、ジェフの選手に手を振ったり、懐かしそうな様子です。

　後半、ピッチに出てきた満男選手は、シューズの紐を直し、熊谷選手と話しながら円陣に入ります。

　ジェフボールでキックオフ。高い位置のアウグスト選手のフリースローを、左コーナー付近で受けた本山選手、ワンタッチでマイナスのクロス、戻りながら追いかける隆行選手のところに、満男選手が後ろから走り込んできます。ペナルティエリアに入ったところでボールに触った満男選手、右の足の裏でボールをコントロールしながら1回転し、左足でシュート。GKが飛びついてキャッチします。

　後半2分、秋田選手が相手選手をつかんで倒し、イエローカードが出ます。ここからのFK、阿部選手のボールを曽ヶ端選手が直接キャッチすると、その瞬間、満男選手は前に走り出します。タイミングよくボールが来ず、オフサイドにならないように、満男選手が戻りかけたところで、曽ヶ端選手からボールが来ます。

　満男選手と本山選手が左右を入れ替わります。

　5分、名良橋選手が相手選手を倒しイエローカードが出ます。

　7分、左からアウグスト選手が下げたボールを受け、長いクロスを上げる満男選手。柳沢選手が飛び込みますが、GKが直接キャッチします。

　8分、中西選手のハンドにイエローカードが出ます。ここからのFK、ゴール正面、やや左寄り、25メートルほどのところです。イエローカードじゃなくて、レッドカードだろうと抗議する本山選手、柳沢選手の横で、満男選手はミリノビッチ選手からボールを受け取ると、2人が退くのを待っていたかのように、ボールをセットします。アウグスト選手もやってきますが、ポイントに並んだのは満男選手と中田選手。壁は7人です。蹴るのは満男選手。ボールは、ジャンプした壁のさらに上を越えて、鋭くカーブし、ゴール左側のサイドネットに突き刺さります。GKにはノーチャンスの素晴らしいボールです。ファビアーノ選手、中田選手、本山選手と次々に選手たちが飛びついて祝福します。最後はもちろんアウグスト選手。今年初めて満男選手におんぶします。満男選手も自信に満ちた笑顔を見せます。

　チャンスに、柳沢選手、隆行選手、熊谷選手も前に駈け出す中、満男選手は、後方に構えていることが多いようです。相手のカウンターに備えているのでしょうか。ボールを持っても焦ることなく、他の選手の上がりを待ちます。

　やや、アントラーズペースで試合が運ぶ中、17分、大柴選手のヘディングは、ゴール右にそれます。

　18分、坂本選手に代わって、一昨年まで一緒にプレーしていた増田選手が入ります。入ると同時に、FWと同じくらい高いポジションを取る増田選手ですが、ポジションは右サイドのようです。アントラーズの左サイドで、満男選手が増田選手に対応します。

　20分、ジェフのシュートがコースが変わり、ゴール左にそれます。

　22分、満男選手はボールを持つと、阿部に後ろから当たられ倒されて、FKを得ます。

　名良橋選手のクロスに走り込んだ中田選手が、ゴールラインで大きくジャンプすると、アントラーズのゴール裏から「コージ!!　コージ!!」と黄色い歓声が上がります。

　23分、ルーズボールを拾い、ダイレクトで隆行選手にスルーパスを出す満男選手。残念ながらオフサイドです。

　27分、ドリブルで進むムイチン選手に対応してボールを奪った満男選手、すぐに左サイドの前側にいた隆行選手に繋ぎます。隆行選手は、ドリブルで進むと中央を上がってきた柳沢選手にパス。DFから離れながらボールを受けた柳沢選手は、ボレーシュート。惜しくもゴール右にそれますが、いい攻撃でした。

　31分、中央に下がっていた柳沢選手がルーズボールを本山選手に落とすのを見て、左サイドを満男選手が駈け上がります。本山選手は満男選手の前のスペースに、すかさずスルーパス。キレイに通って、満男選手はフリーでボールを受けます。シュートを狙いますが、うち切れず、後ろに戻したところを、上がってきた中田選手がすかさずシュート。バーを越えましたが、いい攻撃です。

　ジェフは、阿部選手に代わり、羽生選手が入ります。

　33分、名良橋選手のファールに、主審が注意を与えます。

　36分、右CKに小走りの格好はしながらも、歩くような速さで向かう満男選手。ホイッスルを吹いて、主審が早くコーナーに行くように注意を与えます。このCK、満男選手はペナルティエリア外の本山選手を狙い、本山選手はダイレクトでシュートを放ちますが、ゴール上にそれます。

　この後、満男選手と本山選手は左右を入れ替わります。この試合、前節で見られたような2人の頻繁なポジションチェンジはなく、こういったセットプレーのタイミングで左右を入れ替わることが多かったようです。

　38分、秋田選手が相手選手を手で抱きかかえるようにして止めます。主審がイエローカードを出し、今日2枚目のイエローカードで、秋田選手は退場です。抗議する秋田選手をなだめに来る満男選手と熊谷選手。去っていく秋田選手に、主審がキャプテンマークを引き継ぐように指示します。秋田選手は、自分の腕から外すと、ポンと熊谷選手に投げます。

　セレーゾ監督はすぐに本山選手を下げ、金古選手を入れ、守備を固めます。金古選手はセンターバックの右側にファビアーノ選手と並んで入ります。ペナルティエリア内に攻め込まれ、ファビアーノ選手がボールを蹴り出します。この試合、ファビアーノ選手のプレーの安定感が目立ちます。

　41分、相手選手を倒した隆行選手にイエローカードが出ます。

　この試合に勝つだけではなく、なんとか無失点に押さえたいアントラーズは、攻め込まれますが、全員で守ります。ロスタイムは4分。

　46分、高い位置でボールを奪った満男選手、体を寄せられながらもボールをキープ、倒れながら相手選手を引っ張って倒しファールを取られます。

　47分、隆行選手に代わって平瀬選手が入ります。

　ホイッスルが鳴って試合終了。満男選手は、両腿に手を当ててうつむきます。一礼が終わると、サイドスタンドに手を挙げて挨拶。そして、みんなと一緒に増田選手の方に行って言葉を交わすと、ヒーローインタビューに向かいます。

　淡々とした表情でヒーローインタビューに答えた満男選手は、インタビューが終わると、広報の野見山さんに声をかけられます。ゴール裏に向かって少し歩き始めますが、ベンチの前辺りで、両手を挙げて挨拶をすると、引き返していきます。翌日の新聞によると、満男選手は風邪の発熱を押して試合に出ていたそう。くたくたに疲れ切っていたに違いありません。

　これで、ようやく今季1勝目を挙げることができました。そして、来週からは代表に合流です。この試合、運動量を抑えめに90分間戦い抜いてくれた満男選手。どうか、コンディションよく代表のトレーニングに向かえますように。