2002/3/21(Thu)

　強風の中、空を飛ぶ2台のヘリコプターのプロペラ音が響きます。地下鉄の出口は、観客の誘導や帰り駅の案内をする拡声器の声が響き、人でごった返しています。遠回りをしていく誘導路の脇には、ベンチに座るホームレスの人たちの姿と、彼らの住みかになっている青いテントが。W杯期間中も、彼らはここで暮らせるのでしょうか。

　入場口では、いつもより入念な荷物チェックと、金属探知器を使ったボディチェックが行われます。

　スタジアムに揚げられた国旗が、強い風に舞います。心配された雨は、午前中で上がり、広がる雲のあいだから時折薄日が差す天気です。午後4時20分、ウクライナの選手たちがピッチに出て来て、ピッチの状態をチェックします。そのあと、すぐにロッカールームに引き返さず、そろってベンチに座ります。フェアプレイフラッグを持つサポーターを選ぶ、お決まりのイベントのあいだも、ベンチでくつろいでいるウクライナの選手たちです。

　4時50分くらいに、トレーニングウエア姿の日本の選手たちが、何人かずつ姿を現し、ピッチをチェックします。

　5時、ピンクのビブスを着けたカメラマンたちが、いっせいに走り出てきます。100人以上はいると思われるカメラマンたちは、ピッチサイドに置かれた折りたたみ椅子のところに駈け寄ると、カメラを置いて席取りです。緑やグレーのビブスの人たちも走り出てきて、熾烈な競争が繰り広げられます。

　5時5分、スタジアムの屋根についたライトが点灯します。

　5時10分頃、ウクライナの選手たちがアップのためにピッチに登場。少しして、日本選手も出てきます。顔ぶれから赤ビブスを着けている選手がスタメンのようです。青のトレーニングウエアを着た満男選手は、ビブスは着けず、ゆったりと歩いて来ます。ビブスなしの選手はピッチの1カ所に集まってから、いっせいにダッシュ。何か面白いことを言われたのか、満男選手は大きく顔を崩して笑います。もう一度、ダッシュをしたあと、1対8の鳥かごです。青いトレーニングウエアを着た選手と、白のトレーニングウエアの選手。どちらも背中にJAPANの字が大きく描かれています。

　ピッチを広く使ってアップをしているビブス組には、注目の高い三都主選手や市川選手選手がいます。赤いウエアを着た3人の韓国の審判も、ハーフライン辺りでジョギング、アップをしています。

　鳥かごの選手は、満男選手、隆行選手、俊輔選手、鈴木秀人選手、久保選手、明神選手、大岩選手、高原選手、波戸選手。満男選手は、出されたボールを、後ろ足を回して軽くカカトで触ろうとしたり、遠くに転がっていったボールを拾いに行って、わざと高く上げたパスで返してみたり、リラックスした様子です。

　スタメン組がアップの場所を変えて、サブの鳥かごも場所を移動。突然、いっせいにダッシュで移動し始めた選手たちに出遅れて、満男選手はわざとのようにゆっくりと歩いて向かいます。みんなに追いついた途端、秀人選手や久保選手に、指を差して笑いながら大声で何か言う満男選手。みんなにはめられて文句を言ってるのかもしれません。

　高原選手が真ん中で、ボール回しをしている時、高原選手が足でボールを押さえた途端に、何がそんなにおかしかったのか、一人、崩れるように倒れて笑い転げる満男選手。再開したパス回しの直後には、何人もの選手が、同じように笑い崩れてしまいます。どの選手も、スタメンで出場できない悔しさは胸に秘め、和やかでリラックスした様子です。

　30分ほどのアップのあと、スタメン組、サブ組が一緒に引き上げていきます。満男選手は、上がりかけにボールを1つ拾うと、切り返しなどやってみてます。通りがかった戸田選手が、満男選手の相手。少しだけ1対1などやって、満男選手も上がって行きます。代表でも、最後までボールを持っているのは、やっぱり満男選手と思ったら、もう1人、ボールと一緒の選手が。それは、俊輔選手でした。

　試合開始少し前、大量のカメラマンが、選手入場口に出てきます。ロープに導かれて位置に着くカメラマンたち。W杯イヤーの第1戦、プレスも過熱しているようです。

　選手紹介。オーロラビジョンに青いユニフォームを着た選手の写真が、1人ずつ映し出されます。満男選手の写真は、少し口元がゆるんでいて、心なしか笑っているように見えます。

　5時50分頃、国旗が入場。サブの選手たちは、一足早くベンチに入ったようで、スタメンの選手たちの入場の時には、もう座っています。隣に座った秀人選手と話し込む満男選手。秀人選手が、片足ずつ足を上げて、シューズの底を満男選手に見せています。スパイクのことでも話しているのでしょうか。国歌の斉唱の前に、立ち上がるサブの選手たち。みんな、黒いベンチコートを着込んでいるのですが、どうやらワンサイズしかないようで、前をしっかりと閉じて着込んだ満男選手の姿は、袖に手が半分くらい埋もれていて、コートを着こなしていると言うより、コートに着られている感じです。国歌が始まる前に、大きなあくびを1回する満男選手です。

　ポーランド国歌の斉唱はボタン式アコーディオンを弾きながらの本格的なもの、そして、君が代の独唱が終わると、真面目な顔をして聞いていた満男選手は、拍手を4回して両手をポケットに入れ、隆行選手と話しながら座ります。

　午後6時には、風も治まり、心配された雨もなく、いいコンディションで試合ができそうです。日本ボールでキックオフ。大きな歓声が沸きますが、入場口の混乱から遅れて席に着く観客も多く、場内は騒然としています。

　ウクライナは、プレーオフでW杯出場を逃し、ユーロ2004と2006年のW杯に向けてのチーム作りを始めるところ。ＡＣミランでプレーするシュフチェンコや、トットナムのレブロフなどの国外でプレーする選手は1人も含まれない国内組のみのメンバー。2日前に日本に着くというハードスケジュールで、この来日には興行的な意味合いを強く感じます。

　日本代表も、海外でプレーするメンバーは含まれません。スタメンは、GK楢崎選手、DF松田選手、宮本選手、中田浩二選手、ボランチに福西選手、戸田選手、右のウイングが市川選手、左が三都主選手、トップ下に森島選手、FWが柳沢選手と西澤選手です。トルシエ監督にとって、この試合は新戦力を試す場という位置づけでしょう。交代枠はフィールドプレーヤー6人に、GK1人。監督が6人の枠を使い切れば、フィールドプレーヤーの2/3はピッチに立つことになります。満男選手にそのチャンスは訪れるでしょうか。

　開始早々、ウクライナのヘディングでのクリアボールが、日本の浅いDFラインの裏に入り、キーパーと1対1の状況を作られます。シュートが枠をそれ、事なきを得ましたが、危険な状態でした。

　満男選手が座っているのはベンチの柱の横の席。ボールが端の方に行くと、その柱が邪魔になるらしく、時々身を乗り出すようにしながらピッチを見ています。

　日本は、ボールをキープしながらも、なかなか攻撃の形が作れません。ウクライナは、1トップにトップ下1人を置く形。このトップ下の選手にボールが入ったときに、宮本選手がラインを崩して潰しに行くのですが、そこから繋がれてしまったときにピンチを招きます。

　ウクライナは、中盤のショートパスがキレイに繋がります。自陣内でボールを回され、西澤選手までもが戻ってプレスに走る日本ですが、なかなか奪うことができません。

　10分、日本の左サイドの裏にパスを入れられ、そこからのクロス、クリアボールが相手選手の前に。ダイレクトの強いシュートを楢崎選手が、キャッチングします。

　13分、押し込まれたところからボールを奪って日本の攻撃、ゴール正面で柳沢選手が倒されFKを得ます。このボールは三都主選手が蹴りますが、惜しくもゴール右にそれます。

　15分過ぎぐらいに、サブの選手のうち5人がコートを脱いで緑のビブス姿になり、ゴール裏にあるアップ場に行き、アップを始めます。満男選手、隆行選手、明神選手、秀人選手、波戸選手です。16番のビブスを着けた満男選手、ダッシュをしたり、軽く走ったりのあと、いつも通り、入念にストレッチをしています。

　18分、福西選手からのパスを、右に流れながら受けた柳沢選手、目の前のDFをフェイントでかわし抜くと、左足でシュート。ゴールの上に大きくそれてしまいましたが、見事なプレーです。

　日本は、中盤でパスをさばくタイプの選手がいないために、市川選手、三都主選手が1本のパスで裏を取るとことができません。森島選手は、FWの2人と入れ替わりながら盛んに動いてはいるのですが、そこにパスが入ってこない状態です。ボランチの戸田選手は、積極的に前までプレスをかけに走っていますが、その分、福西選手が前に上がれなくなってしまい、バランスが悪い感じです。

　24分、CKからのコンビネーション、最後は柳沢選手が戸田選手にきれいに落として、戸田選手のシュートが決まります。戸田選手に駈け寄り、喜び合う選手たち。満男選手は、ピッチに背を向けたまま、マイペースにストレッチを続けています。

　26分、日本は裏を取られますが、市川選手のうまいスライディングタックルで、ピンチを逃れます。ここでウクライナの選手が主審に何か言ったのか、イエローカードが出ます。

　この頃、ベンチに残っていた曽ヶ端選手を含む5人の選手たちがアップを始め、満男選手など最初にアップしていた選手たちは、ベンチに戻ります。

　32分、前に出ていた宮本選手が、相手を追いかけながらディフェンスする形になり、後ろから相手を倒してイエローカードが出ます。

　ウクライナは、コンディションが悪いのか、意識的なものか、30分くらいからペースダウンしていますが、それでも、短くパスを繋がれて、日本は中盤でうまくプレスがかからず、何度か最終ラインまで持ち込まれます。

　35分過ぎくらいから、いったんベンチに戻っていた5人の選手も、またアップ場に戻り、サブの選手全員がアップをしています。満男選手は、その場で駆け足などしながら、試合の方も見ているようです。

　40分、日本の左サイドの裏のスペースにボールが出て、三都主選手が走って戻って応対します。そのプレーで足を痛めた三都主選手、担架でピッチの外に出されます。

　43分、自陣内に押し込められ、1本のパスで裏を取られます。シュートはかろうじて楢崎選手がパンチングします。

　ロスタイムは1分。満男選手は、曽ヶ端選手と並んで、試合を見ながらストレッチをしています。アントラーズでは、サブの選手は特別なことがない限り、前半でアップを始めることはありません。全員が前半の早い時間にアップを始めることに、フィジカル面で、どんな好影響があるのか分かりませんが、極端にチームとやり方が違うのは、体を作る上でも気持ちの上でも、ひどく難しいでしょう。前半終了間近、満男選手と曽ヶ端選手は、もう体もほとんど動かさず、話しながら試合を見ています。

　前半の終了のホイッスルが響くと同時に、バックスタンド側のライン沿いでボールを競りに行っていた三都主選手が足を蹴られて転がります。日本選手たちは、全くそれに気づいていないようで、そのまま引き上げていきます。

　同時に、サブのメンバーもメインスタンド中央の方に引き上げていきます。隆行選手だけが、後半はじめからの出場のために、ピッチ上でコーチとアップを始め、遅れて俊輔選手がそれに加わります。三都主選手のケガのため、急遽交代が決まったのでしょうか。

　ハーフタイム、客席の外の通路は満員の観客でごった返します。売店に並ぶ列とトイレに並ぶ列が通路をふさぎ、体をぶつけなければ通り抜けられない状態です。

　後半開始前、サブの選手たちと一緒に出てきた満男選手、スタッフと笑いながら何か話をしています。

　西澤選手に代わって隆行選手、三都主選手に代わって俊輔選手が入って、後半開始です。ウクライナにも1人、選手交代があります。

　サブ組は、全員で試合の最初からアップをしています。満男選手は、この2年間、途中交代で試合に出たことは、確かひたちなかカップの1度しかないはず。それも、もう1年半も前のことになります。試合に入るための気持ちの作り方も難しいでしょうが、アップを続けている満男選手は、あくまでマイペースで、そういうことを感じさせません。

　2分、日本の右サイドから持ち込まれて、シュートを打たれます。4分には、中盤でうまくボールを回されて、ミドルシュートを打たれます。後半立ち上がりから、全く中盤の落ち着かない日本チームです。

　そして5分、中盤で全くプレスがかからないままに、ゴール前までボールを運ばれ、ペナルティエリアの中、うまい切り返しからシュートを打たれます。これは、ゴールポストのわずか左にそれましたが、決定的な場面でした。

　この直後、サミアコーチがベンチから、アップ場に向かってすごい勢いで走り出します。警備のロープも飛び越えてアップ場に近づくと、その指示を聞いて、猛然とダッシュを始める選手がいます。満男選手です。サミアコーチは、満男選手に近づくと一緒に走ります。ダッシュと、ジョギング、歩くほどにもペースを落とし、またダッシュ。サミアコーチに付き添われて、アップを続ける満男選手です。

　2分ほどして、ベンチのトルシエ監督の前に行き、ビブス、ウエアを脱ぎ、ユニフォーム姿になる満男選手。ごく短い指示を受けると、第4の審判の方に向かいます。ストレッチをすると、山本コーチに声をかけられ、審判員とウクライナの6番の選手と一緒にピッチに向かいます。

　そして後半10分、森島選手に代わって、背番号15番の満男選手が初代表のピッチに駈け出します。指を差して指示をしながら自分の位置に入る満男選手。「ミツオ!!　ミツオ!!　ミツオ!!」とサポーターから大きなコールが起こります。

　最初のボールタッチは、パスカット。右ライン際でカットしたパス、詰められたところを、冷静に相手に当てて外に出し、日本ボールにします。

　満男選手は、積極的に相手にプレッシャーをかけていきますが、また自陣ゴール前までボールを運ばれてしまいます。バタバタとした最終ラインに、しっかりとボランチの位置に入る満男選手です。

　12分、右サイド自陣深く守備に戻っていた満男選手が、相手に体を寄せて、ボールを奪おうとします。繋がれたところを、戸田選手がチェック、相手選手に詰められてルーズボールになり、ウクライナの選手に拾われそうになります。満男選手は、すかさず、その選手の背後からダッシュ、うまくボールと相手のあいだに体を入れ奪います。肩を押され、バランスを崩して前のめりに倒れ、両手をつきますが、すぐに起きあがると、その瞬間に柳沢選手にスルーパス。DFの裏に抜けだし、GKと1対1になった柳沢選手は、落ち着いてゴール右にシュートを流し込みますが、惜しくもバーのわずか外。満男選手がピッチに立って2分もしないうちに生まれた、決定的なシーンです。

　14分、左ライン沿いでもうまく相手にボールを出させ、マイボールにする満男選手。満男選手が入って、すっかり中盤が落ち着いた印象です。

　隆行選手が取った左CKも満男選手が蹴ります。ゆっくりと歩いてコーナーに向かう満男選手。ショートコーナーは、強いキックで中田浩二選手へ。大きくファーに上げられたボールに隆行選手と市川選手が競りますが、これはクリアされ、右CKになります。

　この間に、柳沢選手に代わって高原選手が、福西選手に代わって明神選手が入ります。柳沢選手と満男選手のホットラインを、まだまだ見せてもらいたかっただけに、残念な交代です。

　交代のあいだ、誰もCKの準備をしていなかったのですが、ベンチから声がかかったのか、右コーナーには俊輔選手が向かいます。俊輔選手は、右CKも満男選手が蹴ると思っていたのでしょうか。

　俊輔選手がボールを蹴ろうとすると、コーナーに向かって走り出す満男選手。DFがマークに付いてショートコーナーにはなりませんでしたが、抜け目のないプレーは、アントラーズでいつも見せてくれているとおりです。

　CKのクリアボールがルーズボールになり、味方とぶつかりながら、右の俊輔選手にパスを出した満男選手は、手を挙げながらペナルティエリアの中に走っていきます。俊輔選手のクロスはGKが直接キャッチします。

　16分、センターサークルの前辺りで、ルーズボールを拾った満男選手は、スピードのあるドリブルで前に進みます。前の高原選手にパスを出すふりをして、右足のフェイントでDFを抜くと、ペナルティエリアのライン上で左足でシュート。このボールは低くなりGKにキャッチされてしまいますが、これも決定的な場面。サポーターから、ミツオコールが響きます。

　19分、満男選手がついていた選手から、縦に長いボールが入り、ウクライナにゴールライン近くまで持ち込まれますが、運よくシュートは決まりません。

　その直後、左サイドの俊輔選手から、スピードのあるサイドチェンジのボールが市川選手に。そして、もう一度、俊輔選手に戻り、俊輔選手のクロスはDFにクリアされます。クリアボールを拾った戸田選手が満男選手に横パス。満男選手は、ペナルティエリアの少し外から、ダイレクトでシュートを放ちますが、ゴールのわずか上を越えてしまいます。「ミツオ!!　ミツオ!!」とまたコールが響きます。

　20分、左サイドで2人に囲まれ、縦に俊輔選手にパスを入れますが、俊輔選手が倒されてしまいます。

　21分、俊輔選手からのスローイン、満男選手が受けると、すかさず俊輔選手を左の裏のスペースに走らせるパスを出しますが、これは俊輔選手が感じられず、ラインを割ってしまいます。悪い悪いと、手で合図する俊輔選手です。

　左サイドで相手選手に体を寄せ、パスミスを誘う満男選手です。

　23分、ウクライナの選手の3人目の選手交代があります。

　守備の場面では、満男選手はなるべく高めの位置を取り、FWの2人と3角形を作っていますが、決定的なシーンでは、ボランチの位置に入りに戻ります。

　高原選手に大きく指を差して、俊輔選手にパスを出すように指示する満男選手。このチームでも冷静な指示を、出しています。

　24分、ウクライナの選手、4人目の交代です。ウクライナも、今回の試合は、選手を試す場と考えているようです。

　相手からボールを奪うと、鋭くボールを後ろに戻す満男選手。難しくボールをこね回すことをせず、さばくところは簡単にさばいていきます。相手フリースローやFKの度に、マークを確認して指示を出す姿は、いつもアントラーズで見慣れているとはいえ、大きく、頼もしく見えます。ユニフォームの裾がパンツから出かかっているのも気にせず、ピッチを駈ける満男選手。スパイクのソールのアントラーズレッドが輝きます。

　31分、俊輔選手のフリースローを、走り込みながら受けに来た満男選手。DF3人に囲まれ、倒れながらも、なんとかボールをキープしようとします。味方のフリースローの度に、ポジションを取り直して、ボールを受ける動きを怠らずに行う満男選手です。

　32分、左サイドライン沿い、3人の選手に囲まれて、冷静に相手に当てて出し、スローインを取ります。

　33分、市川選手に代わって波戸選手が入ります。

　34分、ゴールから30メートルほどのところで得たFK、ポイントには満男選手と俊輔選手が立ちます。ちょんとボールに足で触って、位置を決めた俊輔選手が、やはり蹴ってきます。クリアボールを、ペナルティエリアの少し外でウクライナの選手が前を向いて持ったところに、正面から詰めていく満男選手。左足で、足元から奪います。ゴールの方に高く上がったボールに、高原選手が走り込み、GKと1対1になりますが、残念ながら、これは高原選手が打ち切れません。

　満男選手は、この時、相手に右足の上に乗られてしまい、少し足を痛めたようですが、その後も、プレーは途切れません。軽く足を引きずりながらプレーを続ける満男選手です。

　36分、右サイドから、ロングボールを前線の高原選手に。この辺りから、満男選手の取るポジションが、やや後ろになった印象があります。戸田選手、明神選手が、積極的に前に上がります。

　37分、高原選手の鋭いシュートはGKにキャッチされます。

　39分、中央を上がって行く選手に後ろから追いつきディフェンスをする満男選手。俊輔選手と囲んでボールを奪うと、俊輔選手にそのボールを預けます。

　44分、攻め込まれて、なんとかゴールラインを割らせゴールキックになります。満男選手は手を叩いて味方を鼓舞します。

　ロスタイムは2分です。

　45分、左サイドで相手ボールを奪いに行き、体を寄せますが振り切られ地面に転がります。

　フリーの選手に、ダッシュでボールを奪いに行く満男選手。目の前でパスを出されますが、その選手が進む方向に体を入れ、リターンパスを受けにくくします。

　試合終了のホイッスルが吹かれます。センター付近にいた満男選手は、汗をぬぐいながら真ん中まで行くと、ももに両手を置いてかがみ込みます。少しして、左足のストッキングを降ろしてスネを見ています。何か気になることでもあるのでしょうか。

　集まってきた選手たちとタッチをしたり、言葉を交わし合う満男選手。挨拶がすむと、選手たちはベンチ前に集まります。満男選手は、水のボトルを受け取ると首筋にもかけているようです。暑いのでしょう、右足のストッキングを降ろしかけますが、思い直したように上に引き上げます。

　表彰式が終わるのを待って、場内1周。明神選手と話しながら歩いている満男選手は、コーチにタオルを手渡されて首筋を拭き、そのタオルを首にかけます。その表情は柔らかで、充実して見えます。ゴール裏に手を挙げて、今度は楢崎選手と話。バックスタンドの前辺りでは、サミアコーチと話し込んでいます。そして、また、明神選手と並んで歩きながら、ホーム側のゴール裏にも片手を挙げる満男選手。みんなとともに、メインスタンド下に去っていきました。

　A代表デビューとなったこの試合で、自分自身を表現しきった満男選手。34分の出場時間の中で、立て続けに4つの決定的なシーンを作り、この試合で一番輝いていました。代表選手のなかでも目立つボールを奪うテクニックや、体格の大きな選手相手にも当たり負けしない、優れたボディバランス。Jリーグの中だけではなく、もっともっと、いろいろな相手と戦っているところを見てみたいと思わせられる試合でした。