2002/7/31(Wed)

　今日の練習は、午後4時からの1回のみ。選手たちは、まずはクラブハウス内でミーティング。ビデオでも見てたのでしょうか、グランドに姿を現したのは、4時半近くになってからです。

　パラパラと、クラブハウスから遠いBグランドに移動していく選手たち。満男選手の姿が見当たりません。他の選手たちから、たっぷり3分は遅れて、セレーゾ監督とスタッフ2人、本山選手とロッカールームの扉から出てきます。監督と一緒ということは、2人だけ、特別にミーティングを受けていたのでしょうか。

　満男選手の姿が現れると、見学者から「オガサ!　オガサ!」と声が上がり、境の柵のところまで駈け出してくる女の子たちもいます。夏休みを利用して、遠方から来た子たちでしょうか。明日は、満男選手の夏休み恒例の1日店長。クラブハウスのオフィシャルショップでのサイン&握手会です。整理券の番号を取るために、泊まりがけできている人もいるのかもしれません。

　この夏一番の暑さで、日中の最高気温は35℃。選手たちが体を動かし始める時間になっても、グランドには強い西日が差し、風が通る時だけ涼しさを感じる、汗ばむ陽気です。

　まずは、フィールドプレーヤー全員でジョギング。GK3人は、別メニューで練習です。今年のナイキの練習着は赤。ノースリーブのものもあって、半分くらいの選手はそれを着ているのですが、満男選手は半袖の練習着。裾をキッチリと紺のパンツの中に入れて、赤いストッキングを、ふくらはぎの半分くらいのところまで下ろしています。

　ジョギングが終わると、幸聖選手と組んでストレッチ。そして、ボールを使ったアップです。ハーフラインを挟んで、10メートルくらいの距離でミニコーンが置かれています。選手たちは5組に別れて、コーンからハーフラインまでドリブル、向かい側のコーンのところにいる選手にパスを出して、そちらのコーンまでランニングなどの動きを、ゆっくりと行います。

　フィールドプレーヤーは21人。中に2人、ユースの選手が混ざっているようです。金古選手と羽田選手は、室内トレーニング中なのか、姿が見えません。

　満男選手は、柳沢選手、名良橋選手、秋田選手と組んでトレーニングしています。練習メニューは、だんだんと複雑になって、ハーフラインのところにいる選手にパスを出して、走り寄って受けたりと、変化していきます。

　20分くらいの練習が終わると、一休憩。ようやく日が傾いて、日差しが弱くなってきています。満男選手は、ボールを拾うと、ポーンと30メートルくらいの距離にいたトレーナーさんにパス。水を飲むと、本山選手、幸聖選手と三角形になってパス交換してます。

　次の練習のために、スネ当てを入れると、もう一度、幸聖選手と2人でパス交換。なんだか、幸聖選手と一緒にいることが多いようです。

　黄色のビブスが配られ、ゴールが移動されて、次の練習の用意がされます。ゴールは、試合に使う大きなものが、20メートルくらいの、ごく近い距離で向かい合わせに置かれ、横の広さも20メートルくらいの狭い範囲でのミニゲームです。各チームGK1人と、フィールドプレーヤーが4人。2人がコートの中に入り、2人は、敵チームのゴールの左右に立ちます。コート内の2人が、この味方も使いながらシュートを決める練習のようです。

　満男選手はビブスなし組、見学席から遠い方のコートです。最初に、ゲームに入る人数にあぶれて幸聖選手と2人で立って眺めていたのですが、そのうち、1人だけ、台車に置かれたクーラーボックスの上に座ります。

　狭い範囲で、人数も少ないので、動きも激しく、コートに入った選手は、息をつく暇がありません。ものすごくキツそうな練習です。開始4分ほどするとホイッスルが吹かれて、休憩です。

　2ゲーム目は、ゴール脇に立つ役になった満男選手。コート内の選手から出されるパスを、ワンタッチでゴール前に出し、シュートを打たせます。3ゲーム目に、本田選手と組んで、コートの中に入ります。相手は幸聖選手と石井コーチ。シュートを狙い、激しく動き回りますが、ホイッスルが吹かれると同時に、苦しそうに膝に手を当てます。

　クーラーボックスから大きなペットボトルを取ると、1本をポーンと本田選手に投げ、もう1本取り出すと、口いっぱいに含んで飲みます。

　1分ほどの休憩のあと、再開。どうやら、3〜4分やっては1分休憩の繰り返しのようです。満男選手は、また本田選手と組んで、コートの中。同じチームは、キーパーの曽ヶ端選手、そしてゴール脇には、中田選手と本山選手。相手になる黄色のビブス組は、秋田選手、名良橋選手、石川選手、大谷選手、そしてGK高嵜選手です。

　秋田選手のシュートをスライディングで防ぐ満男選手。激しく動き回り、ホイッスルと同時に、大の字に倒れ込みます。

　立ち上がる満男選手のところに来るセレーゾ監督は、ちょっとうれしそうな笑顔。満男選手は、セレーゾ監督には笑顔だったのですが、苦しそうな表情に戻ると、クーラーボックスのところまで来て座り込みます。

　グランドの、反対側には、ラフな格好をした関係者が数人。シュート練習用のボードの陰に、腰を下ろして見学しています。フロントの人と立ち話をしているのは、どうやら、満男選手の大船渡高校時代の監督、齋藤先生です。インターハイのために、鹿嶋にいらしたついでに、満男選手の様子を見に来られたんでしょうか。

　満男選手は、次の2ゲームは、水を飲みながら台車の上で休憩。その次の2回は、ゴール脇に立ちます。休憩のあいだ、サイドネットに片手をかけて、なにげなくボールに乗せた足のふくらはぎが、なんだか、またたくましくなっている気がします。太い筋が盛り上がっています。

　その次、コートに入ろうと、スネ当てを入れ、ストッキングを上げて用意した満男選手ですが、中に入れず休憩。

　そして、8ゲーム目で、また本田さんと組んで中に入ります。ゴール脇に中田選手と本山選手。キーパーは高嵜選手。ビブス組は、GK曽ヶ端選手に、中に幸聖選手と石井コーチ。ゴール脇に、石川選手とユースの選手です。満男選手は、高嵜選手から短くボールを投げてもらうと、そのままシュートを決めます。そして、次々とゴールを決める満男選手。すっかり、こつをつかんだようです。

　ホイッスルが鳴ると同時に、ピッチに仰向けに倒れ込む満男選手。足を立てた姿勢で、しばらく動きません。よほどキツイのでしょう、台車のところまで来ると、クーラーボックスに座り込み、膝に手を当てて、じっとうつむいています。

　ここで、ミニゲームは終了のよう。汗に濡れた練習着を着替える選手の中で、満男選手も、上半身裸になって着替えます。

　一休憩して、5時40分くらいから次の練習です。黄色いビブスが配られ直し、フィールドプレーヤーが10人ずつに別れます。次の試合、出場停止の名良橋選手はベンチでお休み。ビブスなしがスタメン組のようで、フォーメーション通りにピッチに並びます。前節、脇腹を痛めて欠場していたファビアーノ選手も、スタメン組。次節には出場できるようです。ビブスを着けたサブ組も、フォーメーションを作って、ピッチに並びます。次の対戦相手、グランパスの選手の役割をするようです。

　満男選手は、汗で濡れたパンツの裾を中にたくし上げて、おむつをはいたような姿になっています。本山選手もおむつ姿。見た目はすごくカッコ悪いんだけど、本人たちは涼しいんでしょうか。

　セレーゾ監督がビブスを着けて、サブ組のトップ下の位置に入って、通訳の鈴木さんを通して、長々と説明を始めます。見学席から遠い方に向けられた言葉は、よく聞き取れないけど、どうやら、攻撃の組み立ての説明のよう。ゆっくりとボールを回しながら、選手たちが確認しています。

　右サイドの説明が終わって、今度は見学席に近い左サイド。鈴木さんが、「そっちのサイドも、右と同じな!」と声をかけます。ファビアーノ選手から、ゆっくりとアウグスト選手にパス。アウグスト選手が中に入れたら、それは、セレーゾ監督のやりたいことと違っていたらしくて、やり直し。

　ファビアーノ選手から、アウグスト選手、そして縦に本山選手へ。アウグスト選手にボールが出た時点で、熊谷選手と満男選手が前にゆっくりと走り出します。ビブス組の選手が、満男選手について動きます。「そしたら、クマにスペースができるから、そこを使って!」。本田選手が本山選手に何やら指示。ビブス組の選手についても、動きが分かっていないと確認ができないせいか、周囲が細かく教えています。

　もう一度、同じ形のパス回し。満男選手がDFの裏に出ます。「オガサが裏取った時には、そこ使ってもいいし、モトとエウレルのワンツーも……」

　ファビアーノ選手にボールを戻して、本山選手とエウレル選手のワンツーの形を確認。セレーゾ監督の長い説明に、満男選手のパンツの裾が左側だけ下りてきて、右だけおむつ姿です。最後には、満男選手は、セレーゾ監督の説明を鈴木さんが大声で訳しているのは無視。すぐ近く、ビブスを着けてフォーメーションに入っていた関塚コーチに、大きなジェスチャーで両サイドの後ろを指さしながら話しだします。必要な確認なのでしょうけど、こういう、格式張らないところが、アントラーズの練習のよさかもしれません。

　10分ほどで確認は終わって、どうやら全体練習はこれで終了。1時間半の練習は、1日1回としては、ちょっと短い感じです。先週の1週間に3試合の連戦で、選手たちに疲れが貯まっているのでしょうか。クーラーボックスのところに行って水を飲むと、満男選手は、また幸聖選手とパス交換です。

　右側のゴール前に、人型が置かれます。その前で休むのが、柳沢選手、エウレル選手、中田選手、アウグスト選手、石川選手、そして満男選手。しばらくすると、関塚コーチがついて、FK練習が始まります。GKには、曽ヶ端選手が入っています。

　左側のゴールでは、セレーゾ監督の指導の下、シュート練習。池内選手、野沢選手、幸聖選手、青木選手の若手の中に、なぜだか秋田選手も混ざって練習しています。

　FK練習のほうでは、アウグスト選手が派手な音をさせて、ボールを人型に当ててしまいます。それを見て笑っている満男選手も、自分の番で、同じように大きな音をさせてボールをぶつけてしまい、思わず天を仰ぎます。さっき笑われたアウグスト選手は、派手に笑い返しています。

　柳沢選手がポイントに立つと、曽ヶ端選手が、ホントに蹴るのかよと、からかいます。ところが柳沢選手、カーブのかかったFKを、3本を立て続けに決めて上がって行きます。ゴールを決めやすいように、曽ヶ端選手が1歩も動かなかったこともあるのですが、FK練習の度に、いつも、1本ずつくらい蹴っている柳沢選手。随分、上達したようです。

　居残りの練習に参加していなかった、ファビアーノ選手と熊谷選手も上がっていきます。何本かFKを蹴ったエウレル選手も上がります。満男選手は、左寄りからのFKを4本、立て続けに美しく決めると、後ろで見ていた本山選手にポーンとボールを蹴ります。休憩を取っていた本山選手は、これをきっかけに、シュート練習に向かいます。

　他の選手がFKを蹴っているあいだ、アウグスト選手と満男選手は、何がおかしいのか、盛んにシュート練習を見ては笑っています。アウグスト選手は白いランニング姿、満男選手は、ボールを小脇に抱えて、随分リラックスした様子です。

　10分ほどで、人型を動かすと、今度は右寄りからのFKの練習。満男選手は、また人型にボールをぶつけて、曽ヶ端選手に笑われます。中田選手は、絶対に決めてやるとでも言ったのでしょうか、失敗のFKに、いっせいに選手たちから、からかいの声が上がります。

　満男選手は、こっちの角度からのほうが得意のはずですが、今日は、全く入りません。蹴るボールが、落ちずに、ゴールの向こうに飛んでいってしまいます。随分調子が悪いようです。

　1人上がって行く名良橋選手に、ゆるいロングボールを蹴る満男選手。足元に落ちたボールに、名良橋選手はびっくりして、のけ反るように飛び上がります。その様子が、よほどおかしかったのでしょう。満男選手は、大笑いしながら真似をします。両手を挙げて、片足を後ろに跳ね上げて、ピョン。名良橋選手も苦笑いです。満男選手は、いたずらっ子の顔になって、もう一度、ピョンとはねてみせます。

　右寄りからのFK練習も、10分ほどで終了。コーチが人型を片づけます。センターサークルの手前のところでボールを持つ満男選手。アウグスト選手が、ふざけながらGK役に入ります。今日、これまで1本も強いロングパスを蹴っていなかった満男選手、アウグスト選手に向かって、低い強いボールを蹴ります。ボールはゴール左それていきます。満男選手は、もう1本、強いボールを蹴ります。これが左にそれた時で、「よしとけオガサ!　ボール蹴んなー!!!」、関塚コーチの大声が響きます。

　ボールを蹴ることを楽しんでいた満男選手は、とぼとぼと上がり始めます。あまりたくさん練習するなということは、足の具合が悪いか、疲労が貯まっているかなのでしょう。特にテーピングをしたり、手当をしている様子もなかったので、明らかなケガはないと思うのですが、後ろ髪を引かれるように歩く満男選手の姿は、ちょっとかわいそうな姿です。試合のためを考えて総てを調整していかなきゃならないのは、プロとして当然のことだけど、やはり大変なことなんですね。

　見学していた齋藤先生たちも一緒に引き上げていきます。満男選手と齋藤先生は、ロッカールームの扉の前まで、並んで歩きながら話しをしていました。