2002/9/21(Sat)

　秋になって、アップにピッチに出てきた選手たちは、みんな長袖。新加入になったばかりの西澤選手も、30番のウインドブレーカーを着込んでジョギングしています。選手たちの中に、熊谷選手の姿が見当たりません。ピッチに出てきたフィールドプレーヤーは、14人と、普段より1人少なく、どうやら、熊谷選手は急遽アップを取りやめたようです。

　満男選手は、今日も、黒に白いラインの新しいスパイク。自分の蹴ったボールを誰も受け取ってくれず、コロコロと相手コートの方に行ったのを気にして、関塚コーチに報告します。給水中、笑顔の池内選手に話しかけられて、チラッと首を傾けて小さく笑ったりもしています。

　柏の葉競技場は、ホーム側もアウエイ側もサイドスタンドは満員。アウエイ側のピッチサイドには、警備員と係員が2列になって並び、警備に当たっています。メインとバックには、ちらほらと空席も見えるでしょうか。

　中2日での試合が2試合続いて、選手たちの疲労が心配されますが、満男選手の身のこなしは、思いの外、軽いようです。狙ったループシュートは、1本目はバーに弾かれ、2本目をきれいにゴール中央に決めます。

　午後3時半、入場してきた選手たちは、柳沢選手以外は半袖姿。全員での挨拶の時、満男選手は、口を一文字に結んで、メインスタンドに軽く手を挙げます。

　レイソルボールでキックオフ。選手たちが走り出すと、砂が舞い上がります。ピッチは一見は緑に見えるのですが、芝の上に大量に砂があるようで、まるでビーチサッカーをしているような状態です。

　開始5分で、満男選手はさっそくミドルシュートを狙ってきますが、当たりが弱く、南選手にキャッチされます。

　アントラーズは、エウレル選手、ファビアーノ選手をケガで欠き、前節と同じスターティングメンバー。GK曽ヶ端選手、DF名良橋選手、秋田選手、池内選手、内田選手、MF本田選手、中田選手、満男選手、アウグスト選手、FW柳沢選手、本山選手。

　ここ数ヶ月勝ち星に見放されているレイソルは、大野選手を外すなど、1stステージに当たった時とは全く違ったメンバー構成。軸になっているのは、ボランチのサンパイオ選手、トップ下のリカルジーニョ選手、FWのエジウソン選手のブラジル人トリオ。特に、サンパイオ選手は、2試合連続の出場停止が明けての出場で、コンディションも整っていると思われます。

　主審は、岡田さん。去年、同じ柏の葉競技場でのレイソル戦で、柳沢選手を一発退場にしたことが、イヤでも思い出されます。序盤、ファールを取られた柳沢選手が岡田主審に拍手を送ります。挑発的に見えて心配になります。

　前半13分、右CKを、前節サンガ戦のゴールと全く同じように、ニアの池内選手に合わせた満男選手。ボールはラインを割りますが、OKというように、池内選手と手でサインを交わし合います。

　名良橋選手が痛んでピッチを離れると、満男選手は本田選手に指示を出して、右SBのポジションを守らせます。右サイドを攻められて、相手FK。2人で細かくパスを回すところに、思いっきり走り込んで体をぶつけていきます。ファールになって、納得できない顔で主審に話をしますが、表情には余裕があります。

　激しいプレーに、芝のあちこちがめくれ上がります。

　20分。アントラーズがいい形で攻撃します。右寄りにいた満男選手が、名良橋選手のボールを受けると、柳沢選手にくさびのパスを入れます。ワンタッチで柳沢選手から戻ったボールを、ワンタッチで、満男選手が、右サイドを上がった中田選手にパス。中田選手がオーバーラップした名良橋選手を出すと、名良橋選手がクロスを入れます。このボールは、ゴール前でDFにクリアされますが、満男選手が左サイドまで走って拾いに行きます。満男選手の左からのクロスは、逆サイドの柳沢選手には合いません。

　本山選手も岡田主審に何か抗議したのか、注意を受けます。カードの累積は、あとあとの試合にまで響くこと。誰かにカードが出ないかと、また心配になってしまいます。

　満男選手へのマークは、今日もキツく、前を持ってボールを持つと、すぐに寄せられます。速いテンポでパスをさばいている満男選手ですが、23分、サンパイオ選手とリカルジーニョ選手に寄せられ、ボールを奪われます。

　ボールを持っている時間は、アントラーズの方が長く感じるのですが、レイソルは速い攻撃でシュートまで持ち込みます。秋田選手が抜かれた場面は、オフサイドで救われます。

　中盤に下がってボールを回す本山選手。満男選手はプレーが途切れると、上がるようにジェスチャーします。相手の3バックに対して、柳沢選手が1人でいることが多く、前線に人数が足りないように思えます。

　25分、左寄りからのFK、満男選手の蹴ったボールに、GK前まで走り込んだ中田選手が触れたでしょうか。南選手は、片足を伸ばして、ギリギリで弾き返します。素晴らしいFKです。

　その少しあと、ペナルティエリア内、右寄りにいた満男選手の目の前にクリアボールが落ちます。満男選手はボールを持ち直してシュートを狙いますが、サンパイオ選手に倒されボールを奪われます。ノーファール。惜しい場面です。アントラーズのペースになってきているようです。

　中盤に下がってくる本山選手に対して、満男選手がFWの位置に上がって形を作りますが、プレーが途切れると、位置を交代します。

　時に、開いてしまう右サイドのカバーに、満男選手は全力で走ります。

　36分、決定的なチャンスに、エジウソン選手がゴールを外してくれ、アントラーズは助かります。

　サンパイオ選手がボールを持つと、満男選手は自由にパスを出させまいと、体を寄せて追い回します。

　41分、DFをかわした柳沢選手の放ったシュートは、ゴールの左。42分、左に開いた本山選手に満男がパスを出し、本山選手はファーサイドの柳沢選手に低いクロスを入れますが、柳沢選手は、惜しくも触ることができません。44分、満男選手のふわりと浮かせたパスが、ゴール前の本山選手につながり、ワンタッチで落としたボールに柳沢選手が走り込みますが、オフサイドになってしまいます。立て続けのチャンスに、アントラーズは点を取ることができません。

　満男選手は、名良橋選手に預けられたパスを、DFに手で押さえられながらも、足裏でキープ。オーバーラップのタイミングを計って、ピッタリと名良橋選手に返しますが、名良橋選手のグラウンダーのクロスは、DFにクリアされてしまいます。

　ロスタイムは1分で、前半終了。ピッチ上では、池内選手と内田選手が話し込んでいます。前半、満男選手は、攻撃のタクトを振ると同時に、中盤で、レイソルの攻撃の芽を摘む仕事を、着実にこなしていました。

　ハーフタイムには、チアリーダーのショーが行われます。カントリーソングにカントリーハット。サッカーのまるで人気のないアメリカの物まねを、どうしてここでするのか、趣向の分からない企画ですが、かわいそうなのは、グランドキーパーたち。荒れたピッチを少しでも回復させようと、前半終了と同時にピッチに散ったのですが、ショーのために隅っこに追いやられ、じっと、踊りのステップで荒らされていくピッチを見つめる羽目に。ショーの終了と同時にピッチ中央に飛び出し、チアリーダーたちが記念撮影をする後ろで必死の補修を再開します。

　その補修作業が終わらないうちに、アントラーズの選手たちがピッチに戻ってきます。満男選手は、立ち止まって、両手を後ろに回すと腰を押さえます。腰の具合が、少し気になるようです。円陣を組んだあと、なぜか左サイドの方にゆっくりと歩いて行きますが、少しして、いつも通りの位置に戻ってきます。

　後半開始、本山選手がGKのところまで、ボールを追って走ります。

　後半4分、ペナルティエリア内で本田選手が短くクリアしたボールが満男選手に。満男選手は、前を向くと、前線の柳沢選手に60メートル以上ありそうな、ロングパスを送ります。相手DFの頭を越え、柳沢選手に落ちたボール。柳沢選手のシュートは、大きく枠を外れてしまいます。見事なダイレクトプレー。満男選手の正確なボールコントロールの光るプレーです。

　ボールを取られたら取り返す満男選手。攻め込んだ場面で、サンパイオ選手に奪われ、すかさず追って奪い返そうとしますが、タックルに入ったところで相手が倒れてしまい、ファールを取られます。

　後半に入っても、相手のマークは厳しく、パスを出す満男選手の軸足を蹴り、リカルジーニョ選手が倒します。少しのあいだ起きあがれない満男選手です。

　後半開始以降、ペースのつかめないアントラーズ。8分、左サイドを破られて、エジミウソン選手にゴールを決められてしまいます。ここ2試合、逆転勝ちをしてきたアントラーズですが、また追う展開になってしまいます。

　満男選手は、ボールを奪おうと、池内選手が対応するサンパイオ選手に体をぶつけていき、うまくボールを奪います。

　22分、マリオコーチがサブの選手を呼びに走ります。呼ばれたのは、長谷川選手と青木選手。池内選手と本田選手に代わってピッチに入ります。

　早めの、セレーゾ監督にしては珍しい、2人同時の選手交代は、選手たちの連戦の疲れを考え、フレッシュな選手で一気に流れを変えたいということなのでしょうが、アントラーズはペースをつかむことができません。30分には、本山選手に代わって野沢選手が入りますが、3人とも、荒れたピッチに戸惑ってか有効なプレーができず。かえって、ミスパスからリズムを崩す形になってしまいます。満男選手は、野沢選手に近づくと、何か打ち合わせをします。

　39分、右サイドの野沢選手から、逆サイドの満男選手を前に走らせるパスが出ます。満男選手は、一足遅く、ボールに追いつけませんでしたが、このところあまり見ることができなかった、満男選手のゴールライン近くまで上がる動き。これが繰り返されれば、得点になるかもしれません。

　いいプレーもある野沢選手ですが、青木選手とともに、うまく試合の流れに乗れていないようです。青木選手から、野沢選手への短いパス。意図が通じていなかったのか、野沢選手が見逃し、タッチラインを割ってしまいます。近くで見ていた満男選手は、一瞬、動きを止め、イライラを自分にぶつけるように、両手で両腿を思いっきり叩きます。

　43分、左CKがクリアされ、2本目のCK。満男選手の蹴ったボールは、ニアで飛んだ青木選手の頭にピッタリと合いますが、ボールは、ゴールのわずかに右にそれてしまいます。

　ロスタイムは3分。夕闇が迫ってあたりは薄暗くなり、いつの間にか照明灯がともされています。

　アントラーズは、得点を取れないままホイッスル。満男選手は、列に並ぶと、下を向いています。野沢選手が、満男選手を、元気づけるように軽く叩きます。

　けだるそうにユニフォームをパンツから引き出した満男選手は、重い足取りでサイドスタンドに向かいます。サポーターに対して片手を挙げたあと、引き上げていく姿は、うつむき加減で、疲労感をにじませたものでした。