2002/11/24(Sun)

　アップの時、ほかの選手たちより早くピッチに登場した満男選手は、ボールを軽く転がしたり、またぎフェイントのように何回もまたいだりして、暖かい陽が差す中、のんびりした情景を見せます。ただ、体調は万全ではないようで、足の後ろ側を伸ばすストレッチは、一部、ほかの選手たちと同じ動作ができず、ウォーキングの途中に、急に立ち止まってアキレス腱のストレッチをし、足首をグルグル回したりもしています。

　今日の帯同選手は青木選手。ベンチには野沢選手が入っています。その他のベンチメンバーは、高嵜選手、池内選手、内田選手、長谷川選手です。

　試合開始の直前に、サイドスタンドの1Fで、上から何かが落ちてきて人がケガしたらしく、女の子が1人、担架で運び出されていました。大きなケガでないといいのですが。

　キックオフで、アントラーズの選手がボールに触った直後に、先日なくなられた高円宮さまの黙祷を行うという変則的な形で試合が開始されます。アナウンスが流れ、突然、黙祷を告げられたために、観客は立ち上がるきっかけを失って座ったまま黙祷。黙祷が終わったあとの、試合の再開の仕方には、選手たちも少し戸惑ったようでした。

　アントラーズは、曽ヶ端選手、名良橋選手、秋田選手、ファビアーノ選手、アウグスト選手、本田選手、中田選手、満男選手、本山選手、柳沢選手、エウレル選手の、前節と同じメンバー。ただし、フォーメーションは、中盤をボックスに組んだ4-4-2。このフォーメーションで天皇杯に臨むつもりでしょう。

　エスパルスは、戸田選手、三都主選手、バロン選手が出場停止、森岡選手も長期ケガで出場できないなど、メンバーが揃っていません。10月上旬のナビスコカップ準決勝で対戦したときには、確か、4バックだったはずですが、今日は3-5-2にしてきています。2トップは、アン・ジョンファン選手と横山選手です。

　コイントスでエスパルスが勝って、風下側を取ったようです。アウェイ側のサイドスタンドから、ホーム側のサイドスタンドに向かって、強い風が吹いています。アントラーズは、風上から風下へと攻めていくことになります。

　アントラーズは、開始早々に、FKからゴール前、曽ヶ端選手が飛び出したところ、フリーでペツェル選手に合わせられ、危なっかしい立ち上がりになりますが、その後は、ボールを支配して、試合を進めていきます。

　満男選手は、ピッチの中央にポジションを取ることが多く、本山選手と左右のポジションチェンジを、繰り返します。今日も相手選手から、うまくボールを奪うことが多く、特にアン・ジョンファン選手には、厳しく当たって行きます。体を寄せて、ボールを奪い、逆に後ろから倒されてFKを得る場面もありました。

　14分には、本山選手が、満男選手とのワンツーで右サイドを抜け、ゴール前に絶妙のクロスを入れますが、エウレル選手が合わせることができません。

　16分、満男選手が、ペナルティエリアの手前でボールを持ち、切り返して前線のエウレル選手へ。エウレル選手が、落としたところを、本田選手がシュートしますが、DFに当たって、ゴール右に外れます。

　ここからの右CK。満男選手のボールは、中田選手にピッタリと合いますが、ヘディングシュートはポストに弾かれます。さらに、そのこぼれ球を、柳沢選手がヘディングで押し込みますが、これもポストに嫌われてしまいます。

　アントラーズのペースで試合が進む中、33分、攻め込んだところを、ゴールラインから、中盤の伊東選手、アン・ジョンファン選手と縦に繋がれ、最後方にいた秋田選手が抜かれて、見事にシュートを決められてしまいます。カウンターからの1点。思わず、前節と、また同じ展開になるのかと、暗い気持ちになってしまいます。

　この得点から、アントラーズの選手に、こころなしか焦りが感じられるようになります。

　36分、満男選手が右サイドから入れたクロスには、中央でエウレル選手と柳沢選手が合わせますが、かぶってしまって、ヘディングはゴールラインを割ります。

　4日前のアルゼンチン戦をフル出場したためか、中田選手には疲れが目立ちます。38分には、ミスパスから、澤登選手にボールが渡り、フリーでシュートを打たれます。その少しあと、中田選手がロングシュートを狙いますが、ゴール右にそれます。ほかにアルゼンチン戦に出場した、秋田選手、名良橋選手、満男選手も、疲れていることでしょう。

　42分、満男選手の左CKのクリアボールを、名良橋選手がボレーシュート。しかし、ネットの外側です。

　ロスタイム1分で前半終了。引き上げていくアントラーズの選手たちの表情は、とても厳しく、まるで、負け試合のあとのようです。

　陽の落ちたスタジアムは冷え込んで、暗くなり、照明に灯が入ります。

　ピッチで鳥かごをするサブの選手たちは、とても楽しそう。野沢選手は、通りがかったエスパルスのマスコット、パルちゃんにドリブルを挑んだりしています。

　エスパルスの選手たちよりも先にピッチに出てきた選手たちは、体を冷やさないように、小走りに走ったり、体を動かしています。

　後半開始から、エスパルスが攻め込みます。2分、クロスボールにゴール前、アン・ジョンファン選手と曽ヶ端選手が競って、曽ヶ端選手が痛みます。この時、アウグスト選手も左足を痛めたようで、しばらく立ち上がれなくなります。

　柳沢選手と競ったペツェル選手が、アフターチャージで柳沢選手に肘打ちをして倒しますが、主審の片山さんは、プレーを流します。片山さんは、ポイントの位置をうるさく指摘したり、アドバンテージを流さず、すぐに止めてしまったりが多く、アントラーズの選手がイラつく場面も増えていきます。

　5分、左のライン際、高い位置までプレスをかけに行ったところを、簡単に縦にボールをつながれてカウンターをくらいます。ワンツーで抜けて、縦にドリブルで進んだ澤登選手が、角度のないところから豪快に蹴り込んでゴール。これで、0-2になります。アントラーズの失点は、どちらも、ボランチの2人が同時に、攻め上がったところからのカウンターです。

　9分、右サイドの名良橋選手から、中央に入ったボールをスルーして、後ろのエウレル選手に通した満男選手は、すぐに、大きくふくらみながら右のスペースに走り出します。エウレル選手からフリーでボールを受け、目の前に飛び込んだDFを切り返してかわすと左足で、GKの上を狙ってシュート。シュートの瞬間までは、ものすごくいい動きだったのですが、このシュートは、バーを越えてしまいます。満男選手は、悔しそうに、ゴール前で大きく手を広げて仰向けに倒れ込みます。

　アウグストは、ドリブルで進もうとして倒れてしまいます。先ほど痛めた足のせいではないかと思わせる動きです。19分、そのアウグスト選手に替わって、内田選手が左サイドに入ります。

　その直後、満男選手の左CKが、秋田選手の頭にピッタリと合って、アントラーズは、1点を取り替えします。満男選手は、厳しい表情で、試合再開に備え、自陣に駆け戻ります。

　21分、本田選手に代わって、長谷川選手が入ります。長谷川選手の高さに合わせて、得点を奪おうという作戦。アントラーズは、一気に攻め立てます。フォーメーションは、4バックの前に、中田選手と満男選手。そして、その前に、本山選手、エウレル選手、長谷川選手、柳沢選手が4人並んだような形になっています。

　満男選手は、アン・ジョンファン選手の足元から巧くボールを奪って、柳沢選手につなげます。

　エスパルスは、澤登選手に代わって平松選手が入ります。

　24分、本山選手とのワンツーで抜けた名良橋選手のシュートは、わずかにゴール左にそれます。

　25分、満男選手の右CKは、ファーサイド、ゴールから離れたところに立っていた柳沢選手を狙ったもの。柳沢選手の放ったボレーシュートは、低く抑えられ、いいコースに飛びますが、GK正面でキャッチされてしまいます。

　エスパルスの選手が倒れ、アントラーズの選手のファールが取られます。主審に対する不満を募らせたアントラーズのサポーターから、大きなブーイングが飛びます。焦りからか、アントラーズの選手たちもイライラしているようで、FKのボールをセットしようとしたファビアーノ選手は、横山選手を押してもみ合いになります。

　ピッチの悪さも、アントラーズの選手たちを苦しめます。夏よりは、かなりよくなっているとはいえ、ゴール前はボコボコに荒れ、ピッチ中央でも、ところどころで砂が上がる状態。イレギュラーにバウンドするボールに、ミスも多くなっているようです。

　4人が同時に攻め上がって、前線にスペースがなくなるためか、柳沢選手は、右サイドに流れることが多くなります。

　35分、満男選手が柳沢選手に出したパスが、意図があわず、左のラインを割ってしまいます。満男選手に、前のスペースを指さす柳沢選手の表情がイラだっています。この2人は、普段は試合中、プレーの意図が合わなかったときには、穏やかな表情で確認し合っています。柳沢選手の顔つきは、そのまま今のチームの焦りを現しているようです。

　36分、本山選手に替わって、野沢選手が入ります。野沢選手は本山選手のポジションに入ったようです。

　市川選手の上がりに最終ラインまで着いていって守備をした満男選手、倒されてFK。蹴り出したボールに、ポイントを直すように主審がホイッスルを吹くと、激しく抗議します。なんとか追いつこうと必死な様子が伝わってきます。

　44分、名良橋選手のスローインを、長谷川選手が落とし、柳沢選手がつないだボール、満男選手は、目の前でバウンドしたボールをシュートしますが、しっかりとミートできず、GKにキャッチされてしまいます。

　陽がたっぷりと落ちて暗くなったスタジアム。ロスタイム3分が過ぎてホイッスルが吹かれます。

　悔しかったのでしょう、一礼が終わると満男選手は、いつもやっているサポーターへの挨拶さえ忘れて、メインスタンドに引き上げかけますが、あっと思い出してサイドスタンドに向かいます。サポーターからは、肩を落とした選手たちにブーイングが飛びます。満男選手は、短い出場時間、慣れないフォーメーションで、ボールにほとんど触ることのできなかった野沢選手に声をかけながら歩いていましたが、ゴールラインの手前で引き返して行きました。

　前節のサンフレッチェ戦とと同じような負け試合。カウンターから2点を取られ、必死に攻め立てましたが1点返すのがやっとでした。ポストに嫌われるなど、不運な面もありましたが、FWがシュートを打てる形まで、あまり作れていない印象です。天皇杯優勝に向けて、どう修正されていくのでしょうか。