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2003/4/26(Sat)

1st 第5節 FC東京戦

 1週間前のヴェルディ戦、今日と同じカシマスタジアムで、大勢のアントラーズのサポーターの目の前で、試合中に満男選手が、指示をきかないエウレル選手を突き飛ばしてしまうという事件がありました。その後、満男選手はエウレル選手に謝罪、丸く収まったという報道もあったものの、それだけでは、人は納得しないもの。この日は、プレー以外の妙な注目も浴びる試合になってしまいました。

 日中は、汗ばむほど蒸し暑かった鹿嶋ですが、試合開始の午後4時少し前には、涼しい風が吹き込んでくるようになります。GWの初日というのに、スタンドの入りは少なく、バス9台を連ねてきたというFC東京のサポーターを合わせても、1万5千人ほど。両方のサイドスタンドの1階は埋まっているものの、メインとバックのスタンドはガラガラです。

 半袖姿で入場してきた満男選手は、写真撮影を終わると、すぐに給水します。足下は、見慣れた黒字に赤いラインのスパイク。新タイプのスパイクをはかないのは、どこか馴染まないところがあるのでしょうか。今日は、ライトは灯されていないので、まぶしいせいではなさそうです。

 FC東京のボールでキックオフ。アントラーズはいつも通りのピッチを取り、ホーム側からアウェイ側へ攻めていきます。外は、かなり強い風が吹いていたのですが、スタジアム内は、あまり影響はなさそうです。

 アントラーズは、前節と全く同じメンバーの4−3−2−1。曽ヶ端選手、名良橋選手、秋田選手、大岩選手、相馬選手、青木選手、フェルナンド選手、中田選手、満男選手、エウレル選手、1トップが平瀬選手です。

 FC東京は、4バックにボランチが2人。アマラオ選手の1トップの下に、右に石川直宏選手、左に阿部吉朗選手、トップ下にケリー選手が入る形のようです。

 水曜日にナビスコカップの予選リーグがあり、中2日でこの試合に臨んだFC東京の選手たちは、試合開始直後から、ひどく体が重そうに見えます。去年対戦したときに感じた、攻撃に移るときの切り替えの速さが、全く見られません。

 DFラインの押し上げも少なく、深いバックライン。その前で、アントラーズがボールを持ちます。

 開始早々の5分、ナビスコカップを戦っていないアントラーズとの、体力差がはっきりと見えているうちに、アントラーズの先制点が決まります。

 アントラーズのバックラインのクリアボールを、自陣に駈け戻って平瀬選手が拾い、左のエウレル選手に。エウレル選手から、横パスを受けた満男選手が、ヒールでちょこんとさわって、ボールの方向を変え、フェルナンド選手へパスします。フェルナンド選手が右に大きく開いた青木選手へ出したパスを、青木選手は強烈なロングシュート。GKがはじいたボールを、相手DFがクリアしますが短く、フェルナンド選手の目の前に落ちます。フェルナンド選手は、左足で狙いすましたシュートを放ち、見事にゴール左下に決めます。あっという間の先制点。アントラーズは、このあとも、優勢に試合を進めます。

 先制点の少しあと、エウレル選手からボールを預けられ、3人に囲まれます。体の切り返しで、抜こうとする満男選手。バランスを崩して、ボールを取られてしまいます。いつものキビキビとした動きではなく、体が重そうに感じられます。

 取られたボールを追いかけるためのダッシュも、必死に足を踏ん張って、なんとか加速する感じ。試合終盤に、こういう姿を見ることは、今までもありましたが、試合開始直後からは、見た憶えがありません。2週間前に韓国戦を真ん中にして、中2日の3連戦を戦い、3戦目のヴェルディ戦では終盤にモモがかなり張っているようでしたが、1週間経っても、まだ張りが取れないのでしょうか。

 それでも、好調のアントラーズのなかで、満男選手もチャンスを演出していきます。青木選手のロングパスから、ゴール前でGKと1対1になった中田選手が、シュートを打ちきれず戻し、エウレル選手につないで回ってきたパスを、ワンタッチで右足の強烈なシュート。GKが右に横っ飛びになってパンチング、防がれてしまいますが、低めにコントロールされた素晴らしいシュートです。

 プレースキックも、相変わらず見事で、FKは左からゴールに向かって鋭いカーブがかかります。CKも、左だけではなく、前半、途中からフェルナンド選手に代わって、右も満男選手が蹴るようになります。

 注目されていたエウレル選手との関係は、全く問題がないようで、短いパス交換を繰り返します。エウレル選手のプレーは、前節までと明らかに違って見えます。かなり低い位置までポジションを下げ、そこから、前線に意欲的に上がっていきます。監督の指示も、これまでとは変わっているのかもしれませんが、守備時の位置も、満男選手より低く下がることもあって、守備面での貢献も目立ちます。運動量も多く、持ちすぎることもあまりないようです。

 アジア・チャンピオンズリーグでは、暑い時間帯には、前線に立っているだけで、ほとんど動いていなかったエウレル選手。今日の働きの1/3でもあの時にしていてくれれば最下位なんていう酷い結果にはならなかったろうと、思わず考えてしまいます。でも、過去は振り返っても仕方がないこと、満男選手の激しい怒りに触れたことで、エウレル選手にも感じたことがあったなら、先週の事件の大きな収穫でしょう。半年契約で、夏以降、チームに残ることになるかどうか分からないエウレル選手ですが、1st優勝という大きな目標に対して、これからの試合もモチベーション高くやっていってくれることを願います。

 エウレル選手が右に、満男選手が左にいるのが、この試合の、基本ポジションになっているようです。FC東京の右サイドの石川選手に対して、満男選手の守備力を生かすためでしょうか。左サイドからの攻撃を押さえる意図があるのか、中田選手が積極的に上がり、満男選手がそのカバーに回ります。

 15分、フェルナンド選手がイエローカードを受けます。これでリーグ戦3枚目。次節、出場停止になってしまいました。

 20分頃、アントラーズのカウンターになりますが、満男選手は上がりません。やはり、コンディションがよくなさそうです。

 アントラーズ優勢の中でも、FC東京がチャンスを作ります。アマラオ選手の横パスを、ゴール正面でケリー選手がヒールでシュート。曽ヶ端選手の真っ正面で、キャッチできましたが、決定的な場面です。

 中田選手も、プレーに疲れが見える気がします。韓国戦の疲労は、どの選手も、まだ取り切れてないのかもしれません。

 26分、満男選手は、ボールを持つと、一拍おきます。駈け上がる名良橋選手に合わせて、浮かせて出したパス。ピッタリと名良橋選手の前に落ちます。満男選手らしい、ボールさばきです。

 プレーが途切れたとき、満男選手は、平瀬選手に近づいていくと、前のスペースを指さして、話しかけます。2人のジェスチャーからすると、左右の前のスペースを使ってくれということでしょうか。

 エウレル選手がドリブルでゴール前に持ち込むと、満男選手はペナルティエリア内に飛び込んでいきます。今年増えた、ゴール前に出て行く動き、この試合でも満男選手は、たくさん見せてくれます。

 スタジアムの屋根の隙間から差し込む西日が、細長くピッチを染めます。

 前半終了前には、FC東京が持ち直し、ちょっとバタバタした展開になります。石川直宏選手のシュートが、ゴールの外、支柱に激突します。

 ホイッスルが吹かれると、満男選手は、すぐ近くにいた青木選手に声をかけながら、上がっていきます。

 後半開始間際、平瀬選手と満男選手が、今日も話しながら出てきます。プレーの相談なのでしょうか、満男選手は、軽く笑っているようです。

 後半、満男選手は、前半よりも、さらに左サイドにいる時間が多くなります。アントラーズの選手たちにも、疲れが見えるようになり、FC東京が、徐々にペースをつかんでいきます。攻め込まれますが、相手も、フィニッシュまでは持ち込めません。

 満男選手は、気をつけて、こまめに給水をします。コンディションが悪そうな中にも、アントラーズボールになると同時に、前に駆け出す、切り替えの早い、鋭い動きが見られます。

 後半26分に、平瀬選手と本田選手との交代です。関塚コーチが一生懸命、フェルナンド選手に説明。満男選手は本田選手に確認に行きます。満男選手が右手と左手、それぞれ2本ずつ指を出して、上下に並べたジェスチャーからすると、2トップということなのか、それとも、中盤のボランチ2枚と攻撃的MF2枚のボックス型の意味でしょうか。

 プレー再開後のアントラーズのフォーメーションを見てみると、中盤をボックスにした、4−4−2。ボランチが本田選手と中田選手、右の攻撃的MFが青木選手、左がフェルナンド選手。フォワードが満男選手とエウレル選手になっているようです。

 満男選手は、相手が痛んでプレーが途切れると、セレーゾ監督のところに指示を確認しに行きます。セレーゾ監督の伝言でしょうか、今度は青木選手に近づいて話します。

 この交代が落ち着かないうちに、FC東京の宮沢選手に、素早い反転からシュートを放たれてしまします。曽ヶ端選手が、反射神経を生かしパンチングで逃れたものの、危ない場面。選手交代後も、アントラーズの守備は落ち着きません。

 ポジションを上げた満男選手ですが、中盤の守備が気になるようで、低い位置にいることも多くなります。時には、フェルナンド選手のほうが、高い位置にいることも。本田選手や青木選手に近づいて行っては、気になるところを確認したり、指示を出します。特に、いつも自分のやっているポジションに入った青木選手には、気を配って、何回が話しに行きます。

 2000年頃には、試合の後半から、2トップや1トップのフォワードもこなしたことのある満男選手ですが、その頃には、チーム全体のバランスを気にして、後ろに指示を出したりということは全くなく、前でのびのびと、フォワードらしくやっていました。試合経験を積んで、全体のバランスが見えるようになったことで、逆に、今回は、のびのびと動けなくなっているようです。

 アントラーズは、押し込まれて、満男選手のところまでボールがなかなか入らず、前線に入ってもボールがキープできません。FC東京に攻められる展開です。

 ベンチ前には、柳沢選手が呼ばれ、交代のボードに8の字が準備されます。

 後半39分、掲げられたボードを見た満男選手は、多分、すでに8の字に気づいていたのでしょう、特に大きな反応はせずライン際の柳沢選手のところに向かいます。体調を気にしてでしょうか、関ドクターが、ベンチから出てきて迎えています。短い言葉を交わし、満男選手は真っ直ぐにロッカールームに向かいます。

 交代後も、最後までベンチにいることの多い満男選手なので、ロッカールームに行ったのは、コンディションのせいか、交代に納得がいかなかったせいでしょう。ドクターが特に処置をしなかったので、大きなケガはなさそうです。

 今日は、最初から体のキレがなかった満男選手。最後は、慣れないFWの位置で、不完全燃焼の試合でした。前節のエウレル選手とのこと、メンタル面の大きな負担になっていたでしょう。そのせいもあって、疲労が取りきれないままに迎えた試合だったのかもしれません。

 満男選手の交代の直後、セレーゾ監督は、フェルナンド選手に代えて石川選手を入れ、相馬選手のポジションを1つ上げます。

 ロスタイムに入る直前に、本田選手の見事なアシストから、エウレル選手のゴールが決まり、アントラーズは、攻められながらも、2−0で勝利。5試合を終えて、4勝1敗の、優勝への最低ラインで、順位表のトップに立ちました。ただ、優勢なうちに、なかなか得点を上げることができないチーム状態は、今後、強い相手と戦いに向かっては、不安材料です。

 3日後、アウェイのガンバ戦では、フェルナンド選手が出場停止に加え、青木選手がオリンピック予選でチームを離れ、また厳しい戦いが予想されます。ハードな日程の中、何とか勝ち抜けますように。そして、満男選手のコンディションが、早く回復しますように。

(バックスタンドから観戦)


















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