大阪は、この日、最高気温が25.7℃の夏日でしたが、夕方から急に気温が下がり、万博競技場は、一時、薄いもやに包まれました。強風も吹き、試合開始前には、上着を着ていても寒い感じです。
フィールドでアップをするアントラーズの選手たちのなか、満男選手は、しゃがんでニューモデルの白いスパイクのひもを結び直します。少し動いて、また、結び直す姿が、少し神経質に思えます。ゴールライン上の至近距離から、左足で放ったシュートは、ゴール右に外れ、上がっていく直前に、もう1本はなったシュートも、ゴール上に外れて、悔しそうな表情を見せます。
ガンバのボールでキックオフ。アントラーズが、風上のピッチを取ったようです。強風は、アウエイ側からホーム側へ、メインからバック方向へと巻きながら吹き、ゲームを難しくしそうです。
フェルナンド選手が出場停止、青木選手がオリンピック予選、名良橋選手が太ももの違和感で出場できず、アントラーズは、前節とスタメンを3人代えて臨んでいます。フォーメーションも変えて、中盤をボックスにした4−4−2。曽ヶ端選手、内田選手、秋田選手、相馬選手、本田選手、中田選手、満男選手、本山選手、平瀬選手、エウレル選手です。昨年の秋、この万博でガンバと戦ったときには、3ボランチのフォーメーション、満男選手は右のボランチに入っていたのですが、今回は、本山選手と2列目で組んでいます。
ガンバは、サイドから身長192センチのマグロン選手にクロスを上げてくるのが、予想される作戦。両サイドのチキアルセ選手、新井場選手をしっかりと押さえるには、3ボランチの方が効果的だと思うのですが、4−4−2にしているのには、何か理由があるのでしょう。
3−5−2のフォーメーションのガンバは、新井場選手、二川選手がアントラーズの右サイドを突いて攻めてきます。満男選手は、開始直後から左サイドに流れているので、右サイドの守備に回るのは、内田選手、本田選手、本山選手です。
開幕前のアジア・チャンピオンズリーグで、靱帯を再び痛め、この試合が今季リーグ戦初出場となる本山選手は、明らかにコンディションが不十分に思えます。中盤の人数が足りなために、強行出場になってしまったのでしょう。膝をかばうせいなのか、相手に当たられては倒れ、ピッチ上を転げ回っています。
右側3人は新しいコンビなのに合わせて、本山選手が守備に貢献できる状態ではないために、右サイドで、危険なシーンを繰り返し招きますが、満男選手は左に流れたままです。普段だと、すぐに本山選手とポジションチェンジをして、守備に回るところなので、奇妙な感じがします。ガンバ右サイドハーフのチキアルセ選手は、深い位置で積極的な上がりは見せていませんが、そちらのケアをするよう試合前に指示が出ているのでしょうか。
満男選手は、速いパスさばきでチャンスを作っていきます。本山選手のシュートを演出し、本山選手のパスから、自らもシュートを放ちます。ワンタッチで出した絶妙のパスからエウレル選手がクロス、平瀬選手はゴール前に詰め切れませんでしたが、抜群の働きです。
9分、そこから相手の攻撃になります。二川選手に右サイドをドリブルで破られ、折り返しのパスから大黒選手が強いシュートを打ちます。これは、左のポストに弾かれたのですが、ボールは再び二川選手の前に。ループシュートが右のポストに当たり、必死に防ごうとした曽ヶ端選手の体に当たってゴールのなかに転がります。
アントラーズのペースのなかで、ガンバに先制を許してしまいましたが、まだ早い時間帯、時間は十分にあります。
12分、ゴール前の満男選手のFKは、珍しく大きく枠を外れます。
ガンバが、徐々にペースをつかみかけ、20分頃から、マグロン選手のヘディングシュート、チキアルセ選手のシュートと、立て続けに、アントラーズのゴールマウスを脅かします。
そんななか、1本のパスから、状況が大きく変わります。センターサークルの中央で、バックラインからのパスを受けた満男選手が、大きく足を振り抜くと、ロングパスがDFの裏に右から走り込んできた本山選手にぴったりと合います。DFをすり抜けて、巧みにボールを受けた本山選手は、落ち着いてボールをゴール左に流し込んで、同点ゴール。貴重な得点です。
本山選手を祝福し、センターラインまで戻ってくる選手たち。満男選手が左、本山選手が右のポジションについて、試合が再開されます。
再開早々にも、満男選手はロングパスをDFラインの裏に放り込みます。今日、狙っている形なのでしょう。
このパスの直後、満男選手は足を引きずりながらベンチ前に向かいます。特に大きな接触はなかったのですが、足を痛めたのでしょうか。香取ドクターと竹田トレーナーが、満男選手の手当に当たります。すぐに左足のストッキングを下げると、痛み止めかなにかを、塗り込んでいるようです。
満男選手は、治療が終わるとピッチに戻ってきます。特に大きく足を引きずるそぶりはありません。
25分、本山選手が痛んで、担架がピッチに入ります。満男選手はライン沿いで給水します。セレーゾ監督は相馬選手に指示を出しています。スタンドからは分からなかったのですが、NHKのピッチレポートによると、このとき、満男選手は大丈夫かと言われて首をかしげ、代わりの選手を用意してもらったそう。柳沢選手がベンチ脇で、アップを開始します。
アントラーズは、ずっと、右サイドから攻め続けられますが、満男選手は、やはり、ほとんどの時間、左にポジションを取っています。対面するチキアルセ選手が、アーリークロスを上げ、それもアントラーズの脅威になってきます。
31分、本山選手がゴール前、ドリブルで仕掛け、ペナルティエリアのわずか手前でFKを得ます。ポイントには、満男選手と中田選手が立ちますが、蹴るのは満男選手。満男選手の蹴ったボールは、壁の上を越えて落ち、ゴール右隅、バーのわずかに下に飛びますが、GKが機敏に反応し、パンチングで防ぎます。惜しいFKです。
この後、お互い、攻め合いながらも追加点がなく、前半を1−1で折り返します。メインスタンドの下に引き上げていく満男選手は、特に足を引きずるそぶりはありません。大きく接触した様子には気づかなかったけれど、治療のあとに、また痛がっている様子が見えないので、一時的な打撲か何かだったのでしょうか。
後半開始時、ピッチには満男選手も含め、両チームとも前半と同じメンバーが帰ってきます。満男選手は、ホイッスルを待つ短い時間に前屈ストレッチをします。少し、足を気にしている気がします。
満男選手が右、本山選手が左で後半のキックオフ。ハーフタイムに指示があったのか、満男選手は右にポジションをとり続けます。新井場選手がライン際でボールを持つと、内田選手と2人で対応します。アントラーズの右サイドは、内田選手と満男選手か、内田選手と本田選手の2人でサイドのプレーヤーに対応するという、いつもの形になったようです。
後半は、風上になったガンバのペースで始まります、アントラーズは自陣に押し込められます。左サイドを押さえられたガンバは、今度は右から攻撃を組み立てます。
後半10分、アントラーズは、ややバタバタした展開のなかで、平瀬選手がくさびのパスをバックラインに戻し、攻撃を組み立て直します。ゆっくりしたパス回しのなかから、下がってボールを受けた満男選手は、早い判断で左のスペースに平瀬選手を走らせるパス。アントラーズが押し上げることができます。
3本のCKを、満男選手が、連続して蹴りますが、ゴールは生まれません。
満男選手は狙って、何本も、下がった位置からロングボールを前線に送り込みます。
17分、平瀬選手に代わって柳沢選手が、1分後に本山選手に代わって深井選手がピッチに入ります。深井選手は、左サイドの2列目に入って、満男選手とコンビを組みます。
ここから、一気にアントラーズの攻撃が活性化します。柳沢選手の動きが、周囲の選手を生かしているのが分かります。右サイドでエウレル選手のパスを受けた満男選手が、ゴール前に上げたボールを、GKが何とか片手で防ぎますが、逆サイドに落ちたところから、深井選手がシュートを狙ってきます。
23分には、満男選手が最前線でボールを奪おうと相手の足下にタックル、足を交錯してひやっとしますが、立ち上がると足を引きずることなく走り出します。
右サイドで簡単に内田選手を使う満男選手。オーバーラップした内田選手の上げたクロスは、柳沢選手の手前でクリアされますが、CKを得ます。左CKを続けて2本満男選手が蹴りますが、ゴールは割れません。
26分、相手FWと競り合った大岩選手が痛んで倒れているあいだに、満男選手はハーフライン付近で給水に行きます。高井通訳が監督から離れて来て、満男選手に声をかけます。
アントラーズがペースを握って、攻め込みます。
29分、ガンバは、チキアルセ選手に代えて、森岡茂選手を入れてきます。満男選手は、クイックスタートでFKを蹴りますが、選手交代のため、やり直しになります。満男選手の蹴ったボールは、ファーサイドの選手の頭を越えていきます。少し、コントロールが悪いようにも思えます。風が影響しているのでしょうか。
途中交代で出てきた柳沢選手は、激しいプレーを見せます。宮本選手の手をつかんだまま、引き倒すようにして2人で倒れ込みます。
33分、石川選手の交代が準備されます。用意されたボードは「8」。ここまで、痛がるそぶりも見せずプレーしていた満男選手は、ボードが掲げられた途端に、足を引きずります。石川選手の方には向かわずに、タッチラインを越えると、真っ直ぐにベンチの方に向かう満男選手。ここまでずっと、足の痛みをこらえていたに違いありません。
ベンチに来た満男選手をドクターが迎え入れます。満男選手は、すぐに左のストッキングを降ろすと、様子をチェックした竹田さんが、スタッフに声をかけます。アイシングの袋が、すぐに渡されたところを見ると、調子が悪かった満男選手のために、あらかじめ用意されていたのでしょう。竹田さんは、満男選手の左ひざの内側にアイシングを施します。
交代で入った石川選手は、左SBのポジション。相馬選手がポジションを上げて左の攻撃的MFの位置に、深井選手は右にポジションを移動しているようです。
残り15分ほどの攻防に、ベンチのスタッフも選手も立ち上がって戦況を見つめますが、満男選手は座ったままです。
ガンバも大黒選手に代えて、松波選手を入れ、勝ち点3を取りに来ます。
ロスタイムは2分。攻め込むガンバ。秋田選手のクリアから、アントラーズはヘディングでボールがつながり、前線のエウレル選手まで渡ります。アントラーズの最後のチャンスに、満男選手も立ち上がります。
左サイド、柳沢選手のドリブルをDFが止めボールが転がります。後ろから走り込んだ深井選手が、そのボールを持つと、あっという間にDF2人を抜いてペナルティエリア内に走り込みます。宮本選手がスライディングタックル。深井選手が倒れます。岡田主審がペナルティーマークを指さします。PKです。
蹴るのはエウレル選手。スタンドは一心にその様子を見つめます。満男選手もベンチのチームメイトと一緒に、立ち上がったまま見つめています。
力強いシュートが決まって、2−1。試合を決める得点がついに入りました。エウレル選手はゴール裏に喜びを表わし、柳沢選手は、痛んで外に出ていた深井選手に駆け寄って、頭を抱え込んで喜び合います。満男選手も、ベンチで笑顔です。
ロスタイム2分が経過して、試合終了。勝ち点3を上積みして、アントラーズはリーグ戦首位の座を守りました。
PK後、また座ってピッチを見ていた満男選手は、試合が終わると、ゆっくりと立ち上がります。左ひざにはアイシングの袋が巻かれたまま。足を、少し引きずりながらロッカールームへと消えていきました。
翌日のスポーツ新聞によると、満男選手の左ひざは、鵞足炎（がそくえん）とのこと。膝に付いている腱などが炎症を起こしている状態で、足の酷使から起こってくる病気のようです。名良橋選手も満男選手も、韓国戦からの連戦の無理が、ここになって出てきている気がしてなりません。しばしのあいだでも、体を休め、気持ちもリフレッシュする時間が持てるといいのですけど、GWの変則日程で、1週間しないうちに次の試合になります。次に当たるのは優勝候補の1つ、F・マリノス。ゆっくり休んでいる暇はなさそうです。
