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2003/5/5(Mon)

1st 7節 F・マリノス戦

 こどもの日の鹿嶋は晴れ。日なたは暖かですが、強い風のせいもあって、日陰にじっとしていると体が冷え込んできます。

 試合前、ファミリーJoinデイズのイベントで、今日、ベンチ入りできなかった選手たちが、コンコースで、ホームタウンの名産品のキャベツやピーマンを配ったり、大勢のサポーターに囲まれて写真に収まったり、サインをしたりしています。

 ホームのゴール裏のコンコースでは、IN.FIGHTが選手のサイン色紙やサイン入りの生写真を、ずらりと列べて売っています。サインをした選手たちの好意を無にする行為ですが、悪びれた様子の全くないIN.FIGHTの売り子たちと、飛びつくように買っていくお客さんたちに、ショックを受けてしまいます。

 試合開始の3時半、ピッチはメイン側の日陰と、バック側の日なたの、ちょうど半々に色分けされています。入場してきた満男選手は、今日は、黒に赤いソールのスパイクです。外の強風は、ピッチ内にはあまり吹き込んでこないようですが、F・マリノスのサポーターが持ち込んだフラッグは、メインからバック方向へあおられています。

 ゲームは、アントラーズボールでキックオフ。アントラーズのフォーメーションは、前節と同じ4−4−2。フェルナンド選手と名良橋選手が帰ってきて、スタメンは曽ヶ端選手、名良橋選手、秋田選手、大岩選手、相馬選手、フェルナンド選手、中田選手、満男選手、本山選手、柳沢選手、エウレル選手。ボランチは、右がフェルナンド選手、左が中田選手の並びです。

 ベンチからは、5月1日・3日のオリンピック予選2試合にフル出場したばかりの青木選手が外れ、ちょうど1週間前の4月28日に来日したクラウデシール選手が入っています。

 序盤から、両チームとも激しく攻守を切り替えて動きます。前節、左ひざの鵞足炎で途中交代になった満男選手のコンディションが気になりますが、足を引きずるようなそぶりはありません。

 エウレル選手のシュートを皮切りに、速いテンポのパス回しのアントラーズがペースを握ります。

 圧倒的なアントラーズペースの中、開始8分、素晴らしいゴールが生まれます。自陣ペナルティエリア前まで攻め込まれ、フェルナンド選手が倒され得たFKを相馬選手が、前に大きく蹴り出します。いっせいに駈け出す、満男選手、柳沢選手、エウレル選手。2人のDFが必死で戻ります。

 右寄りのエウレル選手が、ゴール前に入りながら、左を駈け上がってきた満男選手にパス。満男選手は、スライディングしながら左足のワンタッチで、パスを送ります。ファーサイドには、エウレル選手と交差して右にきた柳沢選手。GKが満男選手に釣り出され無人になったゴールに、柳沢選手がボールを送り込み、ゴール。見事なカウンターです。

 一瞬、オフサイドとも見まがう場面ですが、満男選手がボールを蹴った瞬間の柳沢選手の位置は、ボールより後ろ。完全にオフサイドではありません。

 3万4千人が埋めたスタンドから、大きな歓声が上がります。今季リーグ戦初スタメンでゴールを決めた柳沢選手に、選手たちが駆け寄り、笑顔で祝福します。満男選手も、晴れやかな笑顔です。

 この得点のあとから、満男選手は、左サイドに流れます。何か気になることがあるのでしょう、相馬選手と話をしています。FKの守備にも、いつも通り抜け目なく指示を出す満男選手。エウレル選手に、ポイントのところにいるように言い、エウレル選手も、その指示に従っています。

 攻め手を緩めず攻め続けるアントラーズ。美しいという形容詞がピッタリの、見事な攻撃が続きます。

 満男選手の左CKの流れから、フェルナンド選手の強烈なミドルシュート。GKが弾きますが、こぼれ球にアントラーズの選手は詰めきれません。

 名良橋選手のロングパスから、裏のスペースに抜け出した柳沢選手。GKとの1対1のシーンに、バックパスを選んでしまいます。慌てて駈け上がったエウレル選手は、はるか後ろ。柳沢選手は、天を仰ぎ悔しがります。

 本山選手のパスから、エウレル選手が振り向きざまにシュート。見事なターンですが、ボールはバーのはるか上に浮いてしまいます。

 前半19分、自陣深いところでボールを受けた満男選手は、いったんは左を見ながら、クルリと体を返し、右サイドを駈け上がる本山選手に、見事なサイドチェンジのロングパスを出します。

 FKのシーン、名良橋選手が走り込み、満男選手がボールを流し、満男選手の後ろを走り込んだフェルナンド選手が左足で強烈なシュート。これは壁に直接当たって決まりません。

 26分、左に開いた満男選手、中央、柳沢選手からの横パスをワンタッチでクロスを上げますが、大きくコントロールが狂い、そのままキーパーにキャッチされます。満男選手は、残念というように、指を鳴らす仕草をして守備に戻っていきます。

 アントラーズも、何回か攻め込まれますが、うまくオフサイドを取って防ぎます。

 満男選手が自陣でボールを持つところに、久保選手が守備に下がってきます。相手2人に挟まれてボールを奪われそうになり、倒れ込みながら久保選手を倒してファールになります。

 そこからのF・マリノスのクイックスタート、ボールを受けた奥選手がドリブルで上がるのを、満男選手は必死で追いかけますが、追いつけません。ペナルティエリアの手前まで一気に上がられ、後ろから倒してしまいます。ホイッスルが吹かれイエローカードが出されます。いつものスピードがでないために、犯してしまったファールにも思えます。やはり、足の調子が、まだ万全ではないのでしょうか。

 満男選手は主審に抗議しません。覚悟の上のファールのようです。ポイントの手前に立ちながら、主審に話しかける満男選手の表情は穏やかです。ただ、このカードで1stステージ3枚目。次節のトリニータ戦は出場停止です。内心は、悔しいに違いありません。

 25分くらいから、少しテンポを落としたパス回しをしていた満男選手。31分には、味方のバックラインがパスを回している最中に、体を折り曲げるようにうつむきます。ひざの痛みがあるのでしょうか、それとも、すこしバテてきているのでしょうか。

 この少しあと、満男選手はフェイントで遠藤選手を抜こうとして倒されFKを得ます。いつもの満男選手に比べると、少し倒れ安いと感じることが、このあとも、何回か見られました。ヒザのケガの影響があるように思えます。

 ゲームのテンポが落ちると同時に、ミスが目立つようになったアントラーズ。相手のミスも多くて、助かっている感じです。満男選手には、常に2人くらいがプレッシャーをかけてきます。

 左サイドのドゥトラ選手が、いいクロスを上げ、曽ヶ端選手がパンチングで防ぎます。前半の終盤、アントラーズの左サイドから攻められることが増えてきます。ドゥトラ選手が危険に思えます。

 アントラーズが、やや押される展開で前半終了。30分くらいから、満男選手の運動量が落ちるのと同時に、チームにもミスが続いて元気がなくなってしまったように思えます。後半を、どう立て直してくるのでしょうか。

 満男選手は、少し戻るようにして、なぜか松田選手と声を交わし、曽ヶ端選手のところまで行って、話をします。松田選手は軽く足を引きずっていますが、何か接触でもあったのでしょうか。

 後半開始前、アントラーズの選手たちの方が、ピッチに先に姿を現わします。アントラーズはメンバー交代なし。F・マリノスは、マルキーニョス選手に代えて、坂田選手を入れてきています。

 満男選手は、ピッチ上で前屈ストレッチをしています。鵞足炎の予防になるという太もものストレッチ。予防のために行なっているのか、それとも、まだ痛みが激しいのかもしれません。

 後半開始。15分の休憩を挟んだアントラーズですが、リフレッシュされた感じがしません。体も気分も切り替わっていないような元気のなさです。

 開始1分、ボールを持った秋田選手は、プレスをかけてきた若い坂田選手を軽くあしらうように、短いパスを満男選手に出します。ところが、これがミスパスになり、直接相手に渡ってしまいます。F・マリノスのパス回し、ドゥトラ選手のクロスを、大岩選手と競った久保選手に豪快に決められてしまいます。1−1。試合のペースがつかみ返せぬまま、ミスからの、イヤな感じの1点です。

 前半は、リードを奪ったあと、ほとんど左サイドにポジションを取り、低い位置から、最前線までピッチを自由に使っていた満男選手が、後半、ずっと右サイドに張りついています。ドゥトラ選手がボールを持つと、すかさず体を寄せていく様子を見ると、ハーフタイムにマークするよう指示が出たのでしょう。後半、ドゥトラ選手は、奥選手をオーバーラップして上がってくることが多く、満男選手は前に出て行きにくくなっています。

 1対1でドゥトラ選手につく満男選手ですが、前半にイエローカードをもらっているせいで、厳しく行くことができません。何回か、抜かれてしまいます。クロスが久保選手の頭に合いヘディングシュート。バーの上を越え助かります。

 劣勢のアントラーズ。カウンターのチャンスにもミスが出て、ボールがラインを割ってしまいます。

 後半8分、本山選手に代わってクラウデシール選手が入ります。初登場のクラウデシール選手は、ともかくでかい。身長189cmとのことですが、前節で対戦したガンバ大阪の192cmのマグロンよりも、ずっと大きく感じます。まるで縮尺が違うみたい。その偉容に、味方も敵も戸惑ったように、ピッチ上の戦いも、少し落ち着きを見せます。

 クラウデシール選手が入った位置は、多分、右ボランチ。多分というのは、かなり前目にポジションを取り、満男選手が左に位置を取るようになったので、満男選手と2列目を組んでいるとも、見えないことはないからです。

 アントラーズの右サイドを突破していたドゥトラ選手が、クラウデシール選手には1対1を仕掛けることを避け、パスを選択します。セレーゾ監督の狙いが、右サイドの守備を固めることであれば、この交代は成功のようです。

 ただ、時間が経つにつれて、攻撃時に、クラウデシール選手をどう生かすか、チームに何のアイデアもなさそうなことが、はっきりとしてきます。F・マリノスのペースに、ゲームは再びなっていってしまいます。

 満男選手も、あまり調子がよくなさそうです。17分のカウンターのチャンス。鋭い動きでターンしてマーカーを外し、中央にパスを出そうとしますが、踏ん張りが聞かず転んでしまいます。

 アントラーズのベンチ前では、交代の選手が用意をします。

 後半21分、曽ヶ端選手がキャッチしたボールを、相馬選手にフィードした瞬間、ベンチ前にいたセレーゾ監督が、ピッチに駆け込むかと思うほどのすごい勢いで走り出し、叫び声を上げます。その視線の先で、F・マリノスの遠藤選手が相馬選手からボールを奪い取ります。背後から狙っていたのです。遠藤選手が上げたクロスに合わせ、フリーの久保選手がヘディングでゴール。不意をつかれたアントラーズのDF陣は、何もできません。

 リードされ、前がかりになるアントラーズ。その気持ちの焦りから、3点目が奪われてしまいます。アントラーズのカウンター、エウレル選手が左サイドから持ち上がり、いっせいにアントラーズの選手たちが上がります。クラウデシール選手に、いいクロスを上げようと、中を狙うエウレル選手。その足下からボールを奪われてしまいます。

 FWと満男選手だけでなく、ボランチの3人と、相馬選手まで上がっていたアントラーズ。中盤はガラガラです。DFラインには3人。相手と3対2の局面になります。トップスピードで上がってくる奥選手。大岩選手が、久保選手のマークを外して、チャレンジに行った途端に、パスを出されてしまいます。フリーの久保選手は、うまくゴール左隅に流し込んで3点目。点差は2点。ペースをつかめないアントラーズにとって、大きな得点差です。

 ここで、セレーゾ監督は、秋田選手と柳沢選手に代えて、深井選手と平瀬選手を投入します。選手交代の指示が分からず、バックラインは慌てて指示を確認しています。センターサークルには、エウレル選手と満男選手が入り、平瀬選手が左に開いた形で、キックオフされます。

 クラウデシール選手が、バックラインに下がっています。どうやら、4−4−2のフォーメーション、右のCBにクラウデシール選手。ボランチがフェルナンド選手と中田選手になって、2列目の右に満男選手、左に深井選手になったようです。クラウデシール選手の投入が間違いだったことを、監督自身が認めるさい配です。

 アントラーズは、セットプレーにもクラウデシール選手の高さを生かすことができません。十分な練習が積めてないせいに思えます。

 32分には、満男選手の左CKに、中田選手がオーバーヘッドシュートで合わせゴールネットが揺れますが、その前のファールにホイッスルが吹かれていて、ノーゴールです。

 攻めた分だけ、相手にもチャンスを与える展開で相手のシュートが枠を外れ、ほっとする場面もあります。

 少しでも早く点が取りたいと、気持ちの入った満男選手。曽ヶ端選手が角度のあるところからのFKをキャッチし損ねて、ボールがピッチの外に転がり、悔し紛れにポストを軽く蹴った瞬間、30メートル離れたところで、大きく首を下に振ります。

 37分、相手CKからのカウンター、ペナルティアークでボールを拾い、ドリブルで進んだ満男選手は、正確なロングパスをエウレル選手に蹴ります。エウレル選手がキープするあいだに、駈け上がりながらボールを要求。エウレル選手が落としたボールに、右足をダイレクトに振り抜きます。鋭いシュートは、惜しくもバーのわずか上。決定的なチャンスを逃します。

 右サイド、深いところで、相手のマークに深井選手とつく満男選手。満男選手は、鋭い大声で、深井選手に指示を飛ばします。

 相馬選手のクロスに合わせた、エウレル選手のヘディングシュートも、枠を外れてしまいます。

 昨年、半年間、F・マリノスにレンタル移籍していた平瀬選手も、ゴールに迫りますが、ゴールマウスを割ることはできません。

 満男選手の左CKから、アントラーズが攻め込みます。大岩選手の右からシュートがクリアされ、左に飛んで行くのに、とっさに反応して走り出す満男選手。ゴールラインの方向にボールが飛んでいくのを見て、一瞬、両膝を落としてしまいます。足が、限界にきているように思えます。

 ロスタイムは3分。満男選手は、必死でボールを持つドゥトラ選手を追います。これから同点に追いつける可能性は、限りなく遠く思えますが、諦める気配はありません。ともかく1点をと、点差のことすら忘れているように思えます。

 深井選手も必死にボールを追います。

 追加点を加えることなく、ホイッスルが吹かれます。悔しい負け試合に、満男選手は頭を下げません。2歩、3歩、歩くと、体をかがめて、スネ当てを取ります。

 バックスタンドに挨拶に来る満男選手は、相馬選手、大岩選手としきりと話をしています。左サイドの守備に、気になる点があったのでしょうか。スタンドの前まで来ても、手を挙げることなく、話し続けながら、サイドスタンドに向かって行きました。

 前半25分間の、見事な攻撃は、パス回しを見ているだけで幸せになれるものでした。突然、チーム全体のエネルギーが切れたかのように元気がなくなり、自滅するような敗戦。原因は、どこにあるのでしょうか。アジア・チャンピオンズリーグから、代表戦も含めての、ハードスケジュールの疲労なのか。

 次節、満男選手が出場停止のトリニータ戦、なんとか取りこぼしなく勝ち取って欲しいと、願わずにはいられません。

(バックスタンドから観戦)


















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