2001/1/1(Mon)

　元旦の昼、国立競技場は快晴。スタンドは日を浴びて、心地よ い暖かさです。

　投げ込みに出てきた満男選手、ピッチを横切ってゆっくりとバックスタンドに向かいます。手前の看板の当たりで立ち止まって、バックスタンドを見渡して、また、ゆっくりゆっくりとスタンドに近づきます。今日のグッズはサッカーボールだったから、選手たちは、スタンドに思いっきり投げ入れたり、足で蹴り入れたりしてたんだけど、満男選手は、いつも通り、手渡しです。ピッチを横切って戻っていく満男選手、短パンで、ストッキングをふくらはぎの中央くらいまで上げた姿。いつもより、ちょっと猫背な感じで、ウインドブレーカーのポケットに両手を入れて歩いていきます。

　アップは、エスパルスはピッチ上で。アントラーズは、2ndステージの優勝を決めたレイソル戦や、チャンピオンシップ第2戦と同じように、スタジアム外のアップ場で。満男選手は体の動きがなんとなく重いかしら。チームには、レイソル戦の前のようなピリピリとした緊張感は感じられず、プレッシャーのかかった試合に慣れてきたことがうかがわれます。

　選手入場の列、満男選手は、中田選手、秋田選手に次ぐ3番目。珍しく、早い順番です。今日のゲームキャプテンは中田選手。黄色のキャプテンマークが映えます。天皇杯決勝は、国歌の演奏があるんですね。八代亜紀さんの歌の間、選手たちはホームスタンドの後ろの旗に向かって敬意を表します。旗が、強くはためいて、スタジアムを巻くようにやっかいな風が吹いていることが分かります。

　激励の握手が終わるやいなや、満男選手、足を後ろに上げたり、しゃがんだりして、ストレッチをします。寒さの中での戦い、気をつけているのでしょうか。今日も、右のプロテクターの下には厚めのクッションが入っているようです。エスパルス選手との握手、写真撮影がすんで、ピッチに走り出した満男選手は、いつもの試合前よりも、大きく動き、まず、相手サイドに転がっていたボールを拾いに行き、左サイドで、根本選手とパス交換、そして、いつもの右サイドに戻っていきました。

　風は主に、ホームからアウエイ側へ、西日はアウエイ側から射し込む、どちらのサイドが有利とも言えないような条件ですが、ピッチの交換はなく、まず、アントラーズはアウエイ側のゴールに攻める形になります。

　いつも通り、円陣を組み、ピッチに散らばる選手たち、左膝半月板損傷の相馬選手に替わって、根本選手が初めてのスターティングメンバー、右膝靱帯損傷の柳沢選手に替わって入った平瀬選手も、膝の靱帯損傷が完治しておらず、右足首も痛めています。名良橋選手は右腿を肉離れ気味、中田選手は腰を痛めていて、ファビアーノ選手はアキレス腱のケガ、熊谷選手は肉離れ寸前、ビスマルク選手も左腿を痛めて2試合前に欠場したばかりと、ケガ人が多く。そして、ケガをしていると伝えられていない選手も、小さなケガや、連戦の疲れを抱えているのは間違いありません。

　開始直後、満男選手からのパスを受けようとした隆行選手が、戸田選手に足をかけられて倒され、戸田選手にイエローカードが出ます。これで得たFK、満男選手は、壁の位置からするすると左サイド寄りに抜け出します。ビスマルク選手は、そこを使わず、味方の頭に合わせて、これはクリアされます。

　2分、左サイドで根本選手とパス交換をすると、ハーフライン上から、隆行選手の胸ぴったりに、25メートルくらい、ストレートなきれいなパスを放ちますが、隆行選手がつぶされてFK。今日は、隆行選手に対するチェックが、いっそう厳しいようです。ビスマルク選手のFK、左コーナーへの満男選手の走り込みを期待して出されますが、これは満男選手が意図を読めず、相手に拾われてしまいます。

　沢登選手のFK、中央の選手に入れて、すぐにもう一度、沢登選手に戻ったボール、後ろを市川選手が駆け上がります。根本選手が市川選手のマークにつき、フリーになる沢登選手に、満男選手思いきり駆け寄って、パスコースを消します。

　思いっきり前線までチェイシングをかける満男選手。アップの時は体が重そうでしたが、試合が開始するとそれを感じさせません。チャンピオンシップ終了後から、風邪をひいたせいか、明らかに体の重さを感じさせていましたが、決勝に向けて、きちんをコンディションを上げてきたことが分かります。森岡選手が苦し紛れに蹴ったボールは、隆行選手の足元にこぼれ、前を向いた隆行選手を相手が2人がかりで倒してFKになります。

　ゴール前にボールを運ばれ、根本選手、サイド際の守備に回った満男選手に何やら、声をかけます。満男選手も、ボールから目を離さずに手で答えます。そして、味方ボールになった途端に、根本選手にポジショニングを上げるように指示する満男選手。左サイドに入ったときは、根本選手への細かなコーチングを欠かさない頼もしい姿がありました。大舞台でいきなりスタメンの根本選手も、落ち着いてプレーをしている様子です。あまり、前には上がりませんが、フリーでボールを持ったときのロングパスは、本当にきれい。風のせいもあって、ゴールには結びつかなかったけど、そのままDFラインの裏をとれるようなパスを何本も放っていました。

　7分、ハーフラインの後ろから、DFの裏を狙ってロングパスを出しますが、これは少し合わず、GKに直接キャッチされてしまいます。
　左サイドで、高い位置でボールを持った市川選手を手で倒し、満男選手のファールになります。

　サントス選手がボールを持つと、厳しく寄せていく満男選手の姿があります。

　14分、右サイドでボールを持ったアレックス選手から、巧みにボールを奪う満男選手。高い位置に進もうとして、アレックス選手に倒されますが、ノーファール。アレックス選手が持ったボールを、今度は満男選手が取り返しに行って、後ろから倒すような形になり、ファールを取られます。

　15分、根本選手が、ライン際を上がろうとする沢登選手の体を抱えるようにして倒してしまい、イエローカードが出ます。

　右サイド上がり目の位置でボールを要求した満男選手、名良橋選手からのパスはトラップを失敗して、ラインを割ってしまいます。そこからのフリースロー、ボールを持ったアレックス選手に満男選手が詰め、ラインを割り、アントラーズボールになります。ボールを手で持ち、なかなか渡そうとしないアレックス選手に、満男選手が詰め寄り、小競り合いになります。

　このフリースロー、名良橋選手は、抜け目なくDFの裏に走り込む満男選手にボールを投げますが、森岡選手にブロックされて倒され、通りませんでした。

　19分、満男選手は、根本選手を使うパスを出します。左サイド高い位置から、ファーサイドの平瀬選手にぴったりのパス。DFに体を寄せられて、残念ながら、ヘディングシュートは枠の外、サイドネットでした。

　アレックス選手がゴール前ファーサイドに上げたクロスの、左サイドに落ちたところを、満男選手、ゴールラインぎりぎりで拾うと、ワンタッチで詰めてきた市川選手の頭を越すボールを出します。そのボールに向かって、全速力で走り込む満男選手。市川選手は完全に追い抜いて、たまらず足をかけて満男選手を倒します。本職サイドバックを出し抜く、スピードのある見事なプレーでした。

　25分、ゴールから25メートル付近中央で、後ろ向きでボールを受けた満男選手、ワントラップで背後についていたDFをかわすと、振り向きざまに強烈なミドルシュート。GKに防がれてしまいますが、見事な体の返しでした。

　秋田選手から出た、ロングボール、素晴らしいトラップで足元に納めますが、前から来たDFにつぶされてしまいます。

　28分、後ろから来たボール、胸でのトラップを、体をくるっと回転させながらして、2人の相手選手の間を抜く形に持っていく満男選手。これは、次のパスがつながりませんでしたが、面白いプレーでした。

　エスパルスのボールを根本選手が奪って繋ぎ、満男選手へ。満男選手、ドリブルで進むと、相手が詰めてくるぎりぎりのタイミングで、見事なクロスチェンジのボールを名良橋選手に送ります。名良橋選手から戻ったボール、満男選手はゴール前の隆行選手を狙って、左サイドからクロスを上げますが、これは合いませんでした。

　32分、右サイド、深い位置でボールを持つと、一気に50メートルほどのロングパスを、前線の平瀬選手に送る満男選手。平瀬選手、DFの裏を取れますが、パスが少し長くGKにクリアされてしまいました。

　隆行選手が、相手選手と競り合い、お腹に膝が入って倒れます。それを目撃していた満男選手、隆行選手をまたぐように審判に寄っていき、抗議します。

　センターサークル脇で、名良橋選手がボールを持った途端に、前方に走り込む満男選手。名良橋選手のパスはそこに出てきますが、少し大きくて、思いっきり走り込んだ満男選手、滑って転びそうになりながらも、ボールをピッチの中に留めようとしますが、ゴールラインを割ってしまいました。

　41分、隆行選手と競った斉藤選手のハンドで、ゴール20メートルほど前、左よりの位置でFK。中田選手、ビスマルク選手、満男選手が集まります。壁を作るエスパルスの選手たち。GKも壁の位置を確認するため、左ポストのところに移動しています。その隙をついて、満男選手がいきなりボールを蹴り、見事にゴール!　観客もエスパルスの選手も呆気にとられているうちにホイッスルが鳴り、アントラーズの先制点になります。ビデオで見ると、満男選手、蹴る直前に主審に何か言っています。口の動きは「もう始めていいですか……」かしら。あとからのコメントによると、笛を吹こうとした審判に、吹かなくていいと満男選手が止めたそう。クイックスタートは、常に満男選手がやっているプレーの1つですが、この大舞台で、いつも狙っているプレーが、見事な結果になりました。

　ビスマルク選手やファビアーノ選手、周囲の選手たちに取り囲まれ、少し控え目な笑い顔を見せる満男選手。貴重な先制点です。前半、優勢に試合を進めてきたアントラーズ、これで勝利がグンと近づいたかに思えます。

　ハーフライン上で、サントス選手からスライディングでボールを奪った満男選手、そのまま10メートルほどドリブルで進むと、銅像シュート。距離が少し足りなくて、GKにキャッチされてしまいます。

　1点リードで試合を折り返せるかと思っていた、前半ロスタイム、サントス選手からの50メートル級のロングパスが前線オリバ選手に通ります。体を合わせていたファビアーノ選手より、ほんのわずか先に出たつま先でボールをコントロール、シュートは左ポストに当たってゴールになってしまいます。そして、そのまま同点でハーフタイムに入ります。

　後半開始前にピッチに入ってくる満男選手、前半にはめていた手袋をしていません。どうやら、ロッカールームに忘れてきてしまったらしく、トレーナーの人に声をかけます。トレーナーの人、自分の手袋を外して、満男選手に渡してくれます。開始直前には、寒いのか手袋の上から、手に息を吹きかける満男選手です。

　右サイドで熊谷選手が沢登選手に倒されると、満男選手、カードを出すジェスチャーで、審判にカードを要求します。

　4分、前線で大きく手を上げてボールを要求する隆行選手に、満男選手、ロングパスを入れます。隆行選手と相手DFラインの位置関係は、通常ならオフサイドですが、ゴール前に市川選手が倒れていたためにオフサイドになりません。隆行選手は、そのボールを見送り、後ろからぴったりに走り込んできた熊谷選手がシュート、GKが弾いたボールは、ポストに当たって、跳ね返りを隆行選手がゴール!!　熊谷選手と祝福し合う満男選手。エスパルスの選手たちは、市川選手が倒れていたことに関して抗議しますが、これは通りません。駆け戻ってくる隆行選手に近づき、背中を叩いて、満男選手は祝福します。

　1点リードしたアントラーズ、しかし、試合は徐々にエスパルスペースになります。アントラーズは、こぼれ球が拾えず、厳しい時間帯が続きます。

　ライン際、駆け上がるアレックス選手を、名良橋選手、熊谷選手の2人がかりで止めに行きます。名良橋選手のタックルは、イエローカードを出されてしまいます。ここからのFK、中央でフリーでいた森岡選手にボールを出され、全速力でチャージに行く満男選手です。

　13分、根本選手に替わって、本田選手がボランチの位置に入ります。左サイドには、プレー中も腰を痛そうにしている中田選手が入ります。

　15分、ビスマルク選手の横パスを受けた熊谷選手、その瞬間、左サイド寄りから、中央裏のスペースに走り込もうとする満男選手に速いパスを送りますが、DFに体を寄せられて、うまくトラップできませんでした。

　18分、左サイドライン際でボールを受け、前に進もうとして、4人のDFに囲まれる満男選手。うまくDFの横を通して、前方のビスマルク選手にパスを通し、そのまま上がっていきます。ビスマルク選手は、ヒールで満男選手にパス。そのボールは、いったん斉藤選手に奪われかけますが、うまく体を入れ替えてボールを取り返し、コーナぎりぎりで折り返します。結局は、DFにボールを蹴り出されてしまいますが、テクニックあふれるプレーです。

　名良橋選手が、中央の満男選手にボールを預け、ゴール前に走り込みます。満男選手、いったん右足でそのパスを止めると、体の向きを変え、左足でDFの頭を越えるパス。前方に走り込んでいた熊谷選手がこれを受けようとしますが、オフサイドでした。

　21分、平松選手が、沢登選手に替わって入ります。

　22分、右サイド低い位置で、満男選手が詰めていった戸田選手から、アレックス選手にボールが渡ります。名良橋選手と2人で、アレックス選手をマーク。ゴールライン際まで進んだアレックス選手の足元から、ボールを奪い、折り返す満男選手ですが、パスを出した先が相手選手。ここから、再びアレックス選手がボールを持ち、タックルに行った名良橋選手が倒してファールになります。

　25分、本田選手が相手選手を倒してイエローカード。その場面ですぐ近くに詰めていた満男選手。ゴール裏は、カードをもらったのが満男選手だと思ったらしく、小笠原コールが起こります。

　左サイドを上がる市川選手に、満男選手、ぴったりと体を寄せて中を向かせませんが、結局、相手CKになってしまいます。

　29分、こぼれ球に走り出した満男選手、ライン際に追いつめられながらもなんとかボールをキープ、相手選手に当ててフリースローを得ようとしますが、サントス選手、アレックス選手の2人がかりでボールを奪われ、倒されてしまいます。

　31分、戸田選手に戻されたボールに、必死に走り込んだ満男選手、足を滑らせて転びそうになります。この時間、足に疲れが出てきてしまっているのでしょうか。

　32分、右サイドからの相手FKで名良橋選手と壁になった満男選手、中央にフリーでいる選手が気になるのか、壁から離れて、そちらの方向に行こうとして、名良橋選手が腕をつかんで止めます。

　33分、アレックス選手のライン際の上がり、止めに入った満男選手、アレックス選手の足を引っかけて止める形なってファール。相手FKになります。

　本山選手がスタンバイをしていた、後半36分、アントラーズ左サイドまで流れたアレックス選手が、コーナーにいたフリーの市川選手にパス。中央の選手のボレーシュートはバーに弾かれますが、詰めてきた伊東選手に決められてゴール。2-2の同点となります。そして、ここで本山選手が平瀬選手に替わって入ります。フレッシュな選手の前線での速い動きは、疲れている選手たちを助けてくれるに違いありません。

　アレックス選手から中央に高く上がったパスに、必死で走り込みキープしようとする満男選手、平松選手が後ろからつかむ形で寄せてきますが、いったんはそれをかわし、さらに後ろから突き飛ばされて転び、ファールを取ります。

　45分、左サイドでボールを持つアレックス選手に寄せて、ボールを奪おうとする満男選手。アレックス選手の前から、体の下に入るような形で倒し、FKになります。

　ロスタイム、本山選手のドリブルを、オリバ選手が後ろから足をかけたようになり倒してファール。倒れながら、ボールをつかんだ本山選手のボールを、戸田選手、奪おうとして小競り合いになり、戸田選手が本山選手を押して倒してしまいます。このプレーで、戸田選手に今日2枚目のイエローカード。退場になります。

　ロスタイム4分の終了ぎりぎりに、右サイドの本山選手から、クロスボールが入ります。DFに詰められた、ニアサイドの隆行選手、ヘッドに合わせることができず、ボールは詰めていた満男選手の足元に落ちますが、クリアされてしまいます。

　そして、延長に突入です。

　満男選手は、ここ何戦かの延長戦と同じように、ベンチコートを羽織る前に、まず給水します。そして、フードを立てたような感じでコートを着ます。満男選手は、マッサージを受けず、ストレッチをします。スタッフもやってきて、ストレッチの手伝い。セレーゾ監督、そこにやってきて何か熱心に言っているよう。遅れて、通訳の加藤さんもやってきて、指示を伝えています。何か打ち合わせをしたかったのか、監督から離れて、本山選手の方に近づく満男選手。それを、通訳の人が呼び止めます。ちょっとの間、それに気づかず、何回か呼ばれて、ようやく戻ってくる満男選手です。監督は、ボートのようなものを選手たちに示して、フォーメーションの指示を伝えているようです。呼ばれてその輪に加わる選手たちが、だんだん増えてきて、最初に説明を受けた満男選手は、少し離れて見守ります。

　選手、スタッフで円陣を組み、延長に入ります。アントラーズ、さっきの指示は、ポジションの変更だったよう。熊谷選手が右サイドに入り、名良橋選手が中盤の右前、そして、満男選手は右のボランチの位置に入っています。

　1分、相手選手が、満男選手に対して高く足を上げ、FKになります。

　そして、その直後、相手DFのクリアボールがビスマルク選手の足元に落ち、ツータッチで中央の満男選手に浮き球のパス。満男選手は、右足を降り抜いて、ミドルシュート。見事なボレーシュートは、外に向かってカーブを描き、ゴール右上に突き刺さりました。Vゴール!　アントラーズ、3冠達成です。

　両手を上げて、ガッツポーズをする満男選手に、ビスマルク選手、本 山選手、中田選手、熊谷選手、次々と選手たちが飛びついてきます。満男選手は、選手たちと祝福しあいながら、ピッチの中央に歩いていきます。自分で、今のシュートの真似をしたりもしています。一礼のあと、広報の人にインタビューを受けるように声をかけられ、また、シュートの真似をして見せています。よほど、会心のシュートだったのでしょう。

　ベンチコートを渡されて着ながら、ベンチ前でも、交代で下がった選手たち、そしてスタッフたちと喜び合う満男選手。しきりと足を伸ばすような仕草。ホントは本格的なストレッチをしたいところなのかもしれません。

　ヒーローインタビューでは、「みんなのゴールだと思います」と答える満男選手。謙虚な受け答えが目立ちます。そして、表彰式を並んで待つ間に、ベンチの前に人だかりができます。セレーゾ監督の髭を剃る儀式が始まったよう。3冠取ったら髭を剃ると、選手たちに約束していたというセレーゾ監督、秋田選手にバリカンを当てられます。準優勝のエスパルスの表彰の時だっただけに、何人かの選手は、その輪に加わらずに、自分たちの表彰を待ってましたが、満男選手がこのイベントを見逃すはずがなく、さっそくその輪の中に入っていきます。

　エスパルスの選手たちの表彰を、拍手で讃えたアントラーズの選手たち、いよいよ、自分たちの表彰です。ベンチコートを脱いで、メインスタンドに向かいます。エスパルスの選手とすれ違いざまに、満男選手は平松選手とタッチします。

　メインスタンド中段で、一人一人メダルをかけられ、表彰状やトロフィーを受け取る選手たち。名良橋選手は相馬選手の7番のユニフォームを来て、愛息たっくんを抱いています。平瀬選手は20番、ケガで国立競技場に来られなかった中嶋選手のユニフォームを着ています。一段高い段に上る前に、満男選手は腰をかがめた係りの人に呼び止められます。今日、2得点、Vゴールの満男選手、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれたに違いありません。先に上に上がっていく選手たち。満男選手、大好きなたっくんを引き留め、話しかけます。

　一人、下側の段で、大仰なアナウンスに続いて、マン・オブ・ザ・マッチの表彰を受ける満男選手。トロフィーと、賞品の車の大きなカギを渡されます。笑顔で、両方を、しっかりと上に掲げて見せる満男選手です。そして、カギを持ったまま満男選手も上の段に上がって、天皇杯の授与。Jリーグ開始後初、栄光の3つめのカップを、本田選手が手にします。

　段を降りた満男選手は、また、たっくんに話しかけてます。そして、全員が集まって写真撮影。もう、うれしくてはね回っている平瀬選手、後ろでアントラーズの旗を振る、ホペイロの明智さんと一緒に、フラッグを振り始めます。撮影が終わると、選手たちはゴール裏に向かいます。柳沢選手に頭を抱かれて話をしていた満男選手は、係りの人に連れられて一人、ホーム側メインスタンドよりの隅に置かれた車の方へ。車の乗せられた台に乗って、カギをトロフィーを掲げた満男選手の、大撮影大会。車を取り囲んだカメラマンは50人くらいはいたかしら。ユニフォームと車は、ちょっと合わない気もするけど、とっても満男選手らしい素敵な写真になりそうです。

　撮影が終わった満男選手、係りの人に、トロフィーと鍵を預かってもらって、ベンチコートを渡され、それを着ながらゴール裏に向かいます。本山選手が満男選手に抱きつくように近づいていきます。満男選手、指さして愉快そうに笑ってると思ったら、そこには、フラッグを振りながら踊りまくるビスマルク選手の姿が。満男選手もそこに合流して、秋田選手、加藤選手、中田選手、熊谷選手、みんなで肩を組んで、ノリノリに跳ねます。満男選手は本山選手、ビスマルク選手と肩を組んで満面の笑顔です。本山選手の隣では、アントン君も跳ねてます。もう、何回も何回も、終わらないかと思うくらい跳ね続ける選手たち。そして、跳ねるのが終わったかと思うと、今度はウエーブ。サポーターに向かって、ウエーブをくり返します。

　バックスタンド側にもやってきて、手を上げる満男選手。そこで、今度はTVカメラとマイクに取り囲まれて、もう一度インタビューです。それが終わってから、なんだか、バックスタンドの方を熱心に見上げながら歩いてくる満男選手。誰かを捜しているけど、見つからないようです。バックスタンド中央くらいで立ち止まって、しばらく見上げていた満男選手、係りの人に尋ねています。どうやら、関係者が見に来ているみたい。係りの人も、あの辺りのはずと指さしますが、見あたらないのか、携帯電話で連絡を取っています。別の係りの人に尋ねても、よく分からないよう。満男選手は、あの辺りと言われた方向に手を振っています。最後には、連絡を受けたのか走って来てくれた係りの人がいて、その人が、また携帯で連絡しています。その人の携帯を借りて、話をする満男選手。ようやく、用事がすんだようです。もう、グランドには満男選手と係りの人、それに警備の人だけです。満男選手はピッチの真ん中を横切って帰っていきました。最初の投げ込みのボール、多分、この探していた関係者の人に渡したかったんでしょうね。

　3冠達成で、満男選手、そして、アントラーズの選手、スタッフの人たちの本当に晴れ晴れとした笑顔を見ることができました。長い間、お疲れさま。今シーズン、4回も、優勝の瞬間に立ち会わせてくれてありがとう。

　そして、始まったばかりの21世紀、満男選手の目標は、全勝優勝。その目標に向かって、今は、体と心をしっかり休めてください。