2001/3/17(Sat)

　先週、東京ダービーでオープンしたばかりの、新しい東京スタジアムでの試合。昼過ぎから試合が始まる頃まで、細かい雨が降っていました。

　室内アップ場で、体をほぐしたあと、ピッチでアップを始める選手たちの中に、満男選手の姿が見あたりません。風邪をひいて、14日には練習を休んだという満男選手、もしかして、出場できないのかと心配になりましたが、ほかの選手たちからかなり遅れて、ピッチに出てきます。

　アップを開始する満男選手、ほとんどの動作が中途半端です。普段の、決められた動作を、淡々とこなしていく姿とは、全く違う様子。体が動かないのか、それとも、アップに使うエネルギーまで節約して、試合に備えようというのでしょうか。

　途中、ゴールのすぐ横にいた香取ドクターに話しに行く満男選手。しばらく話をしていたのですが、なんだか、鼻をすするような感じもあったります。

　それでも、本山選手と組んでのボール回し、30〜40メートルくらいのパスは、ものすごく正確です。山なりのパスも、グラウンダーのパスも、本山選手にぴったりと届きます。

　いつも、アップから上がるときには、帰り道に転がっているボールを拾い、シュートを何本か打っていく満男選手ですが、今日の上がり際に近づいたのは、ボールではなく、またドクター。またまた、何やら、相談をしている様子です。よほど体調が悪いのでしょう。

　3時5分ほど前に、選手入場。満男選手は手袋をしています。秋田選手とビスマルク選手のリーグ通算250試合出場の、アナウンスがあります。両キャプテンへの、ヴェルディのTV番組のMC、ヴェルディちゃんからの花束贈呈のあいだ、満男選手、ちらっとゴール裏の方を見たりしています。写真撮影のあと、けだるそうなほどゆっくりとピッチに歩き出す満男選手、ゴール裏からの小笠原コールには、すぐに片手を上げて答えます。

　アントラーズのキックで試合開始。いつもは、キックオフ時、ハーフライン上にいて、ボールが蹴られると同時に、前に走り出す満男選手ですが、今日は、ビスマルク選手よりも、さらに後方に構え、前方へ、ゆっくりと動き出すだけ。明らかに、ペースを押さえているのが分かります。

　最初は右サイドにいた満男選手ですが、あっという間にビスマルク選手とポジションチェンジ、主に左サイドでプレーするようになります。

　2分、左サイドでパスを受けて、DF裏のスペースに柳沢選手を走らせるパスを出しますが、惜しくもオフサイド。満男選手、柳沢選手に対してなのか、腕を上げて、前のスペースを指さします。右側にいた本田選手にも同じ動作を繰り返します。

　スパイクが埋もれているのが分かるほどの深い芝が雨で濡れているせいか、アントラーズの選手、ミスが目立ちます。

　左サイドで北澤選手が、ボールを持つ満男選手を押し倒して、ファール。前半は、この2人のマッチアップが目立ちました。

　左サイドで、大きく手を上げる満男選手。このあとも、止まったまま、手を上げてボールを要求する姿が目立ちます。

　14分、隆行選手へのファールで得たFK。満男選手は素早くリスタート、大きなサイドチェンジのボールを名良橋選手に送ります。

　19分、ヴェルディのパスが、アントラーズの選手に当たって方向が変わり、速い速度で転がるところを、左サイドから、満男選手がダッシュで駈け寄ります。相手DFより一足先に追いつきますが、トラップをミス、コントロールできません。

　どちらも形を作れないままの、じれったい展開。ゴール裏から、小笠原コールが起こります。満男選手に対する期待の現れでしょうか。調子の悪いときには、簡単にボールをさばいたり、守備に頑張ることを心がけているという満男選手、今日は、ボールタッチは極端に少なく、ボールのないところで、全体のバランスを取る意識が高いようです。ライン際で、味方選手と相手選手を囲んで、ボールを奪う働きも目立ちます。ボールに触らなくても、きっちりとチームのために働いていることが見てとれます。

　24分、左サイド、フリーの廣長選手にボールが渡ります。満男選手、上がっていく廣長選手を手も使って止めようとしますが、止めきれず、ペナルティエリア内に入られ、そこから、ゴール前フリーの北澤選手にパスが通ってしまいます。北澤選手のシュートは、バーのはるか上を越えましたが、危ない場面でした。

　26分、左サイド、ビスマルク選手が、ファーサイドの隆行選手にクロスを入れます。GKが飛び出して弾こうとしたところ、隆行選手と交錯、こぼれたボールを、本田選手が、GKのいないゴールにすかさずシュート。DFに当たって弾き返されたボールは、ペナルティエリア内にいた満男選手の右側に。満男選手、軽くジャンプすると、右足を地面と水平になるくらいに上げて、シュート。ボールはゴール左端に突き刺さりゴールです。

　本田選手が満男選手に抱きついて、二人、抱きあいます。満男選手は本田選手の肩に手を置き、体重を預けるようにします。次々と選手たちが駈け寄って祝福の輪ができます。自陣まで戻る満男選手は、得点を取って喜んでいるとは思えないほど重い足取り。最悪の体調の中で、闘っていることが分かります。

　29分、名良橋選手のクロスにヘディングであわせた隆行選手、中澤選手に蹴られてうずくまります。こぼれ球を、左足でシュートした満男選手、ボールはゴールのはるか右にそれますが、その瞬間に、大きく手を上げて、ケガ人がいることをアピールします。プレーを止めた審判に近づき、蹴られたことをアピールする満男選手。隆行選手は、頭を抱えたまま起きあがれず、担架が入りますが、担架には乗らず、ゴール脇に小走りで出ると、蹴られて切れた頭の処置をされます。

　包帯で止血されて、ピッチに戻るために、サイドライン沿いに隆行選手が立つと、満男選手は、大きく指さして審判にそれを示します。

　途中から、汗を拭う仕草も見せていた満男選手、前半終了時間が近づくと、前線に飛び込む動きを交えて、動きが大きくなります。

　36分、右サイドで相手からボールを奪おうとした満男選手、つぶれるように倒れながらも、ボールをキープしようとしますがファールになります。ハンドを取られたのかもしれません。

　ファールを取られた、隆行選手、FKの位置から離れないために、相手選手が隆行選手を押します。隆行選手、反射的に相手のユニフォームを引っ張ってしまい、イエローカード。これは、明らかに相手が小突いたのが先。審判からは見えなかったのか、納得のいかない判定です。

　39分、右サイドライン際で、ボールを持つ飯尾選手に後ろから追いついた満男選手、うまく足を出して、ボールを寄せると、相手の体を遠ざけながらボールを、キレイに奪います。

　ロスタイムは1分。

　ホイッスルが鳴ると、真っ直ぐに引き上げていく満男選手。ドクターは、まず、隆行選手の頭をチェックすると、満男選手に声をかけます。満男選手の体を抱えるようにして話をしているドクター、やはり、体調をかなり心配しているようです。

　ハーフタイムショー、ピッチ脇では、子どもたちがパラパラを踊ります。

　後半開始時、満男選手は手袋を取っての登場です。

　開始から間もなく、満男選手の背中が、目に見えて丸まります。お腹が痛いのでしょうか。最初から、いつもより丸まっている感じはあったのですが、ハッキリと分かるくらい猫背になります。結局、このれからあと、ロッカールームに去っていく瞬間まで、いつもの姿勢のよさは見られないままでした。

　右サイドに流れると、三浦選手の動きに、厳しいチェックを入れる満男選手。FKの時にも、注意を逸らさず、必ず、動きを目で追っています。

　4分、GKのキックを、柳沢選手がDFを背負いながら落としたボールを、満男選手、左のスペースに軽く出します。ボールに追いついた柳沢選手がクロスを上げ、隆行選手がヘディングシュート。ボールは枠に飛びますが、GKに阻まれます。

　相手シュートを、高桑選手がキャッチした途端に走り出し、手を上げる満男選手。速攻を狙ったようですが、高桑選手は、各選手がポジションに落ち着くまで待ちます。

　10分、相手選手とヘディングで競り合って、コロンと転がったきり、なかなか立ち上がれない満男選手です。

　14分、左寄りにいたビスマルク選手がファーサイドの満男選手に出したボール、満男選手は、ワンタッチで横パス、ゴール前の隆行選手に送ります。直前でDFにクリアされましたが、惜しいボールです。

　17分、ヴェルディのCK。満男選手は、柳沢選手に守備に回るように指示します。満男選手が大きくクリアしたボール、右サイドに流れていくところを、柳沢選手、全力で上がってチェイシングします。相手選手の縦パスに、満男選手も全力で上がっていって、ボールを柳沢選手に渡します。体調の悪い中でも、ポイントでは、激しく動いている満男選手です。

　全体のバランスを取るための動きも、体調のせいで、普段通り自然にポジショニングしていくことが難しいのか、ビスマルク選手が左側に流れていることに気づいて、慌てて、右側に走っていく姿も見られます。

　20分、三浦選手のロングスローに備えて、もっと下がるようにと、ほかの選手に指示をだします。

　23分、名良橋選手のシュートのあとの満男選手、ちらりとTVに映った表情は、ものすごく辛そう。

　25分、祥朗選手に替えて、根本選手が投入されます。後半に入って、左サイドを崩されることが多かったので、根本選手の交代は、何か守備的な意味があってのことだと思うのですが、リーグ戦初出場の根本選手のミスもあって、全体のペースが少しずつ狂ってきてしまいます。

　ヘディングで競って、仰向きに倒れた満男選手、お腹を押さえたまま、なかなか立ち上がることができません。とても、辛そうな表情です。主審が満男選手の手を取って、起き上がるのを助けます。審判の人、何か話しかけたようで、満男選手、苦笑とも見える、柔らかな笑い顔を見せます。

　28分、右サイドライン際の三浦淳宏選手に、スライディングタックルにいった満男選手、遅れて足を引っかける形になり、三浦選手を倒してしまい、イエローカードが出されます。

　この直後、満男選手と本山選手の交代が告げられます。足取り重く去っていく満男選手の頭を、名良橋選手が、よくやったというように叩きます。歩くのが遅くて、審判にせかされる満男選手。それでも、駆け足にはなりません。

　引き上げてくる満男選手を、コーチ、ドクター、みんなが迎えて、労います。先に交代して、ベンチにいた祥朗選手は拍手を送ります。ベンチコートをかけられて、満男選手、そのまま、真っ直ぐにメインスタンド下に去っていきました。

　中継の日本テレビのレポーター船津宜史さんによると、満男選手は途中でライン際まで来て、自ら交代を申し出たそう。翌日のスポーツ新聞では、ウイルス性腸炎で、食事も満足に摂れない状態だったことが報じられましたが、そんな体調でも、チームに迷惑をかけまいと、満男選手、必死に戦ってくれたのだと思います。

　チームはこの交代で、さらに守備のバランスを崩し、同点に追いつかれます。延長に入ってからの、4人目の交代で青木選手が入ってから、少し守備が落ち着いたものの、立て直せないままに、Vゴール負けになりました。負けた後、秋田選手が、茫然とする選手たちに近づいて、一人一人、頭を叩いたり、声をかけている姿が印象的でした。

　日本代表のフランス戦遠征のために、1週間の中断期間が空くJ1リーグ。この間に、満男選手とチームのコンディションがすっかり整ってくれることを祈ります。