2001/4/7(Sat)

　この春始まって以来の暖かさ、どこからか桜の花びらも舞い込んでくる国立競技場は、日なたにいると、トレーナーでは暑いくらいのお天気です。そんな、気持ちいい日差しの中、満男選手が投げ込みに出てきます。このところ、投げ込みで姿を見かけなかった気がする満男選手、今日は、珍しく、ゴール裏まで歩いてきます。投げ込みの時、グッズを投げずに手渡すのが満男選手のスタイルなのですが、今日は、警備がいつもより厳しくて、ゴール裏の前から4列くらいは立入禁止になっています。ハッキリ見えなかったけど、満男選手、身を乗り出して、なるべく近いところから、グッズを投げていたようです。

　午後3時、選手たちが入場。半袖の選手も多い中、なぜか、満男選手は長袖を着ています。それぞれ、252試合目の出場になる、秋田選手とビスマルク選手に、花束が贈られます。コイントスで、ピッチが交換になることが決まったよう、選手たちが、逆のエンドのピッチに移動するとき、すれ違った服部選手が、満男選手に声をかけています。前半は、アントラーズは西日を背に、サポーターの陣取るホーム側のゴールに攻め込むことになります。

　ゲーム開始直後から、激しい動きを見せる満男選手、最終ラインでボールを持つDFに、激しく走り寄り、体を寄せてはじき飛ばします。右サイド際でボールを持ち、相手選手に囲まれ、名波選手に足を出させて倒されると、起き上がった瞬間にボールを持つ名波選手を、はじき飛ばします。やられたら、すぐにやり返す。去年の1stステージ後半、イエローカードをもらわなくなった頃からの、満男選手のやり方です。さらに、ボールを持つ名波選手を、隆行選手と二人で止めに行って倒し、隆行選手にイエローカードが出ます。

　4分、柳沢選手が倒れて得たFKから、隆行選手が強引に押し込んで先制します。満男選手は、みんなから少し遅れて隆行選手のところに走り寄り、祝福します。そして、ポジションに着く選手たちに、手を叩いて集中をうながします。

　今日、左サイドに入ったのは中田選手。腰の具合が悪いという情報もありますが、火曜日の練習を途中で切り上げ、水曜日は、まったく練習に合流していませんでした。よほど、体調がよくないのでしょう。慣れないポジションのせいもあるのかもしれませんが、パスミスが目立ちます。

　8分、相手FKから、一瞬集中力を切らしているあいだに、高原選手にゴールを決められて同点に追いつかれます。セットプレーからの失点は、今季、3点目でしょうか。去年のように守りきることのできなくなっているアントラーズです。

　17分、自陣左サイドでフリーでボールを持つと、前線にロングボールを蹴る満男選手。これは、少し長めになってしまいます。この直後、右サイドの名良橋選手にサイドチェンジのパスを出すと、左サイドを駆け上がります。意図通り、ゴールラインギリギリでパスを受けることができますが、ドリブルで相手を抜こうとして、クリアされてしまいます。

　相手の早い寄せと、自らのミスでリズムの作れないアントラーズ。満男選手も、ボールを持つと、すぐに囲まれてしまいますが、それ以前に、いい形でボールを受けることがなかなかできません。体調のせいもあるのか、前半の途中から、運動量が少し落ちた感じもあります。

　相手FKのこぼれ球を、一瞬で前線に送る満男選手。柳沢選手とのワンツーになりますが、一瞬早く、相手DFに詰められてしまいます。

　27分、右から、ゴール前左寄りにいた熊谷選手へのパス。このあと、遅攻になってしまってシュートに結びつけられません。

　押され気味の展開でDFが落ち着かないせいか、満男選手は、下がり気味のポジションを取ることが多くなっているようです。いつもほど前線への飛び込みも見せません。今日は、右サイド側にいることが多いようです。

　38分、満男選手の左サイドからのクロスは、うまくFWにはいりません。流れたボールを拾った熊谷選手を引っかけて奥選手にイエローカードが出ます。熊谷選手は、この時、ようやく治ってきた右ふくらはぎを、また痛めてしまったようです。

　41分、センターサークル内からのFK、満男選手は左サイドで手を上げてボールを要求します。パスを受けると、前に着いた福西選手の脇からボールを前に大きく出し、サイドライン際を抜けようとしますが、足がかかって、止められてしまいます。福西選手からのカウンター、追いつこうと走り出す満男選手は、走り出しがきつそうです。

　44分、ゴール正面でのFK。いったんビスマルク選手が位置に立ちますが、満男選手と話をしたあと、満男選手に場所を譲ります。満男選手が蹴ったボールを中田選手が止め、名良橋選手のミドルシュート。残念ながら、当たり損ねになってしまいます。

　45分、相手ファールからのクイックスタートで、満男選手、左サイドから、サイドチェンジで、前線にいる熊谷選手に、見事なパスを送りますが、これはオフサイドでした。

　ジュビロペースのまま、前半が終了。歩いて帰る満男選手に、名波選手が声をかけたように、スタジアムでは見えたのですが、ビデオで見返すと、もしかしたら満男選手の方から声をかけたのかもしれません。

　頬がこけたように見える満男選手、試合中、遠目からではっきりは分からないけれど、ふくらはぎも細くなってしまっている気がします。お腹の具合が悪そうなそぶりは、見られないけれど、体調は、まだ充分に回復はしていないのでしょう。

　後半開始、熊谷選手と話しながら出てくる満男選手です。ピッチへの階段のところで、熊谷選手が満男選手の手首をつかんで話しかけます。満男選手の顔は、どこか、生彩のない感じ。負けていても、絶対に逆転してくれると確信を持てるほど、いい顔をしているときもあるのですが、今日は、元気さを感じさせません。

　開始直後は、アントラーズのリズムが戻ってきていると思ったのですが、9分、高原選手のシュートがポストに跳ね返ったところを、藤田選手に決められて、リードを許してから、またジュビロペースになってしまいます。

　足を引きずりながらプレーしていた熊谷選手、ベンチに近づいて何か言ってます。プレーを続けられないのでしょうか。

　13分、左サイド際で、福西選手にチェックされ、3人の選手に囲まれる満男選手。ボールを奪われて、取り返そうと走り、福西選手の出したパスをカットして、そのまま前に走り出そうとしたところを体をぶつけられ倒されますが、ファールになりません。主審を見て、座ったまま地面を叩いて悔しがります。

　どうやら、このプレーで、闘争心に火がついたらしい満男選手。アントラーズの選手のパスミスから奪われたボールを、DF、ボランチの前で回されているところを、左サイドから、右サイドまで、ボールを追って走っていきます。

　奥選手のドリブルに体を寄せる満男選手、一旦は交わされますが、さらに走って追いついて、足を入れてボールを奪います。

　15分、熊谷選手に代わって、本山選手が入ります。先行されてからジュビロに攻め込まれる展開。熊谷選手が抜けるのは本当に痛いです。そして、満男選手はボランチの位置に下がります。この直後に、ファビアーノ選手が2枚目のイエローカード。退場になってしまいます。他の選手と一緒に、主審に抗議に行く満男選手ですが、それほどしつこい抗議ではありません。

　そのFK。満男選手は本山選手に、一生懸命に位置を指示します。最初の指示で本山選手が行った場所が違っていたらしく、もう一度、声をかけて場所を変えさせます。FKのポイントの確認、セットプレーの位置の確認、常に満男選手の怠らないところですが、この時くらいから、さらに、細かく周囲に指示を飛ばすようになります。

　ここで、イエローカードをもらっていた隆行選手に替わって、池内選手が入ります。そして、23分には、本田選手に替わって、平瀬選手が。満男選手のワンボランチの形なのでしょうか。これでは、満男選手が前にあがることは、まずできません。

　25分、パスを受けたときに、DFにタックルされますが、逆にDFを倒す強さを見せて、前線の平瀬選手にロングボールを送ります。

　この直後、本山選手がドリブルで2人を抜いて名良橋選手にスルーパス、絶好のチャンスになりますが、名良橋選手のシュートはバーの上を越えてしまいました。

　満男選手が左サイド、ハーフライン当たりから上げたボールは、ファーサイドの秋田選手の頭に合いますが、DFに寄せられて、コントロールできません。

　FKのこぼれ球を高原選手に拾われ、チェックに行った満男選手、自陣中央右サイドで、交わされてしまいます。フリーで一直線に上がっていく高原選手を、追って全速力で上がる満男選手。ペナルティエリアの中で追いつき、ボールをクリアします。

　中央から、右サイドDFラインの裏へ、バックスピンをかけたパス、本山選手は追いつきますが、DFにクリアされてしまいます。

　39分、高い位置まで走り込んだ満男選手、ボールを持ったビスマルク選手に、左ライン寄りでボールを要求します。要求通りにパスが出ると、中に切れ込んでいく満男選手。ミドルシュートを狙いますが、相手に足を出され倒されてしまいます。

　42分、ゴール前に攻め込み、チャンスを作りながらもゴールが決められず、逆にカウンターになってしまいます。高原選手から、名波選手に渡ったボール、ワンツーで返そうとするところを、読んでいた満男選手、パスを出した瞬間にカットします。

　必死に、味方に声をかける満男選手です。

　ライン際でジュビロに回されるボールを、ひたすら追っている満男選手。うまく体を寄せてファールにならないように相手選手を倒しボールを奪います。

　時間稼ぎをするジュビロ、本山選手が倒した福西選手を、満男選手はのぞき込みます。時間稼ぎはさせないという気持ちなのかもしれません。

　そして、ホイッスル。自陣、バックスタンド寄りにいた満男選手は、がっくりと膝をつきます。そして、足を前に出して腰を落とすと、うつむいたまま、じっと動きません。悔しさをかみしめているような姿です。しばらくして、ようやく顔を上げたところに、名波選手がやってきて、満男選手と握手を交わすと、頭を叩いて、コーナーの先にいた名良橋選手のところに挨拶に向かいます。

　満男選手の足取りは、ものすごくぎこちなくて、多分、足がつる寸前なのでしょう。礼をしてから、しばらく膝を押さえたまま動けない様子でしたが、体を起こすと、ふらふらと相手ゴール裏の方に向かっていきます。行き先を間違えたのでしょうか、途中で引き返し、上着の裾をパンツの中から出しながら、ゴール裏に向かいます。

　ゴールの手前で片手を上げた満男選手は、やはり、ぎこちない足取りのまま、すっくりと、メインスタンド下に引き上げていきました。

　4試合を戦って、1勝1分け2敗。ライバルのジュビロが全勝を保っている今、優勝争いは、ものすごく厳しくなりました。でも、アントラーズの選手も、満男選手も、決してあきらめないでしょう。リードされ、一人少なくなっても、最後の最後までファイトを見せてくれた選手たち。信じて応援していきたいと思います。