2002/1/27(Sun)

　タクシーの運転手さんが、「2月になったら、にぎやかになりますよ。この道が、渋滞しますもん」と、案内してくれます。キャンプを行っている、宮崎県総合運動公園は、毎年、巨人軍の春のキャンプが行われるところ。広い公園の中に、野球場や陸上競技場、サッカー場が併せて10面くらい。W杯の時には、スウェーデンのキャンプ場になるそうです。宮崎に決まった、ドイツ、スウェーデンのキャンプについて、「日本のプロとは違いますもんね、世界の強豪ですもん。1度見たいですよ」と。

　陸上競技場の手前で、通行止め。昨日までは入れた道ですが、日曜のために交通規制をして、報道陣だけを通すとのことです。といっても、Jリーグチャンピオンに集まる報道陣やファンの数は、巨人軍の話と比べてしまうと寂しい限り。平日より多いとはいえ、見学者は200人くらいかしら。巨人軍のキャンプの時には、満車になるという広い駐車場も閑散としています。

　昨日の暴風雨が嘘のように、空は快晴。風は強いものの気温は高く、風が遮られるスタンドの座席で、じっと座っていても、体が冷えてくることがありません。グランドにはベンチが置かれ、今年の集合写真の準備が整えられています。

　練習開始予定の午前9時ちょうどに、選手たちの乗ったバスが到着します。満男選手は、本山選手と前後して、ナイキのマークと「８」の番号のついた黒いナップザックに、短パン姿で降りてきます。

　選手たちは荷物を置くと、すぐにピッチに出てきます。新入団の石川選手と並んで出てきた満男選手、笑顔で左足を上げて、石川選手に見せている様子。昨日から、いろいろな人に、左足を見せているのは、単に痛いとか、違和感があるとかではなさそう。いったい、どんな話題があるのでしょう。

　好天のせいでしょうか、選手の笑顔が目立ちます。満男選手も、撮影のためにジャージを脱ぎ、ユニフォーム姿になるあいだも、石井コーチと、ニコニコと話をしています。新ユニフォームは、上が赤に紺の襟と脇のライン。パンツは紺で、雰囲気は去年と同じですが、ウエストの部分に細く白いラインが、パンツにも赤の細いラインが入っています。

　ベンチに座る選手、その後ろに立つ選手、さらにその後ろのベンチの上に立つ選手と3列に並んで、コーチやトレーナーさんもそこに入ります。満男選手は、真ん中の列の真ん中に入ります。列に入りながら、後ろの選手にちょっかいを出す満男選手。加藤選手が、足を高く上げて、満男選手を蹴飛ばす格好をします。前を向く満男選手は、金古選手と隆行選手に挟まれて、いつもよりさらに小さく見えます。右の金古選手と話し続ける満男選手、ケガをしたのでしょうか、左手の人差し指には、絆創膏が貼られていて、ちょっと邪魔そうにいじりながらも、顔は笑顔です。

　満男選手の髪は、普段よりも、短めでな感じですが、昨日は、雨に曇ってよく見えなかったので、散髪したのかどうかまでは分かりません。

　笑顔を真顔に変えて、いざ撮影というときに、後段のベンチから落ちる選手が出て、撮り直し。選手たちからいっせいに「おーい!!」と非難の声が挙がります。転げ落ちたのはファビアーノ選手ではないかと思うのですが、どうやら、責められているのは野沢選手。「俺じゃないよ〜」と言いたげな野沢選手です。

　写真撮影が終わると、真っ先に、最前列に置かれていたボールに触ってリフティングを始める満男選手。ジャージを着直すと、マリオコーチのかけ声の下、ストレッチの開始です。

　まずは、背中を丸めて地面に寝転がってゴロゴロと体を動かす、いつものストレッチ。満男選手、一つあくびをします。

　昨日は、練習場に姿を見せなかった内田選手は、今日はリカルドフィジオセラピストと別メニューのトレーニング。他の選手たちは、同じメニューです。

　今度の土曜日にスーパーサッカーで特集があるという隆行選手を、TBSのカメラが追っています。

　昨日の午後と一昨日の午後の練習には姿を見せていなかったセレーゾ監督は、風邪をひいているそう。スタッフ用のジャージの上に、さらにフードつきのジャケットを着込んでいます。短パンに白のストッキング姿が多い監督なので、無理を押してグランドに来ているのでしょう。

　2人組のストレッチを、本山選手と組んで行う満男選手。グランドの反対側の入り口から、見学でしょうか、宮崎工業高校の選手たちが現れると、そちらを見ています。

　15分くらいのストレッチのあと、グランドを広くジョギングしながら、腕を回したり、足を上げたりのアップ。その後、6人組に別れて、パス交換の練習に入ります。20メートルくらいのラインの端に2人ずつ、真ん中に2人が少し離れて立ちます。1人が端からドリブルして、真ん中の選手にパス。リターンをもらってドリブル、逆側にいる選手にパスという感じ。これを、両側が同時に始めます。パスの数を増やしたり、ダイレクトのパス交換にしたり、リターンをもらう選手の後ろを走り抜けたりと、バリエーションを変えながら20分くらい行いました。

　休憩にはいると、真っ直ぐにクーラーボックスに向かって、ペットボトルから水を飲む満男選手。隆行選手へ、誰かが送った、高いボールが、少し目測が外れて、満男選手の方に落ちていこうとするのを、隆行選手は、満男選手の体を抱きかかえて、ボールがぶつかる位置に移動させようとします。

　左足が、やっぱり気になる満男選手。トレーナーの橋本さんに見せて、マッサージをしてもらいます。気になっているのは、左ふくらはぎの筋肉の外側、高い位置のようです。

　座って休んでいる名良橋選手のところに行って、何やら話しかける満男選手。自分は立って、リフティングをしながらです。

　10時過ぎ、いくつかのグループに分かれて、練習再開です。関塚コーチのところに集まったのは、FWとMFの選手たち。満男選手、本山選手、野沢選手、長谷川選手、柳沢選手、隆行選手、平瀬選手、幸聖選手の8人。関塚コーチの説明を、やっぱりボールをいじりながら聞いている満男選手です。

　そうそう、写真撮影の時に選手たちの前に置かれていたボールは、白地に黒の多分ナイキ製のボールですが、練習で使用しているのは、今年のW杯とJリーグの公式球「フィーバーノバ」。金色の奇抜な模様が目立ちます。

　GKを置いたシュート練習は、ペナルティライン当たりで、後ろからの緩いボールを受けて、反転してシュートしたり、横からの緩いグラウンダーのボールをシュートしたりの、単純なもの。左足でのシュートを、ゴール右に大きく外して、顔をしかめたりもあった満男選手ですが、多くのシュートを枠に飛ばし、気にしていた左足でも、鋭いシュートを決めていきます。2本続けて狙ったループシュートは、1本目はゴールのわずか上、2本目はバーを直撃しました。

　ピッチの反対側では、セレーゾ監督の大声が飛び、ディフェンダーの練習。が4対4になって練習を行っています。黄色いビブスを着けているのは、名良橋選手、金古選手、ファビアーノ選手、アウグスト選手。ビブスがないのが、熊谷選手、秋田選手、池内選手、石川選手。内田選手が別メニューのために、足りなくなった右サイドに、熊谷選手が借り出されているようです。

　そして、ピッチの中央では、石井コーチの号令の下、ボランチの本田選手、中田選手、青木選手が練習。青木選手は、途中で、熊谷選手と交代してDFの練習に入ったようでした。

　練習は真剣に続いているのですが、暖かなグランドはのどかな雰囲気。専用の折り畳み椅子を持って、練習を見守るアントラーズの社長さんも、そっと小さなあくびをします。選手たちのキビキビとした動きに、見ている方も、なんとも幸せな気分になってきます。

　GKは交代で1人ずつが入っているのですが、曽ヶ端選手、加藤選手、首藤選手の他に、見知らぬ選手が1人。ずいぶん、周囲に馴染んでいる様子なので、ユースの選手か何かなのでしょうか。

　10時半くらいに、まずは、DF組の練習が終了。DFを見ていたセレーゾ監督が、シュート練習の指導にやって来ます。そして、まるで当然のように、アウグスト選手もシュート練習に加わります。1本シュートを打って、列の最後尾に並んだアウグスト選手、満男選手にちょっかいを出したのか、満男選手、押し出すようにアウグスト選手の胸を押して、笑いあってます。

　それから少しして、シュート練習は終了。他の選手たちは、セレーゾ監督の球出しの下、ヘディングの練習を続けますが、満男選手と柳沢選手は、少し離れたところで、腹筋を始めます。柳沢選手は、スタッフに手伝ってもらいながら、満男選手は1人で腹筋です。

　まずは、寝ころんで、足を上げ膝を曲げると、両手でボールを持って上体を上げると、両スネの上にボールを乗せます。いったん体を下ろすと、また上体を上げて、足の上のボールを取ります。20回繰り返すと一休憩。ボールを枕に、がに股に足を開いて寝ころびます。

　次は、足を上げ下げする腹筋。自分なりのやり方があるのでしょう、続いて、背筋や、腕立てなど、20回ずつを、休みを挟みながら、こなしていきます。休憩中は、うつぶせになって、ボールの上に顔を乗せるようにして柳沢選手が腹筋している様子を見たり、キツイ運動を繰り返していると思えない、のんびりした雰囲気です。

　一通りの補強運動が終わった頃、石井コーチが満男選手に話しかけます。しゃがみ込んで、満男選手の足首を持って、チェックをしている様子。後ろからマリオコーチまでがやってきて、満男選手を見守ります。やはり足に問題があるのでしょうか。

　そこへ、広報の野見山さんがやって来て、満男選手に声を掛けます。どうやら、取材の約束が入っているようです。少しストレッチをすると、メインスタンド側の記者とカメラマンの方に移動する満男選手。柳沢選手と一緒に、ジャージを脱いでユニフォーム姿になると、写真撮影を開始します。柳沢選手がボールを投げて、満男選手がヘディングで返します。笑顔でカメラ目線になっている写真は、あまり見ることのない満男選手ですが、ボールを扱っているせいか、自分一人ではないせいか、撮影のあいだ、全く緊張した様子がなく、楽しそうにやっています。途中からは、お互い、ヘディングでパスを回します。

　2分もしないうちに撮影が終わって、満男選手は、ストレッチを、再開します。そこに、またまたやってくる野見山さん。時計を見ながら満男選手に話しかけ、満男選手はしばらくストレッチをしたあと、脱ぎ捨てていたジャージを、両手に持つと、振り回しながら走ってロッカールームに向かいます。

　しばらくして、ジャージ姿になり出てきた満男選手は、メインスタンド下で、さっきの記者の方のインタビューを受けます。ちょっとした段に2人で腰かけて、ナップザックをしっかり背負ったまま、背中に日差しを浴びながらのインタビューです。15分ほど、真面目なやり取りが続いた後、記者の方が、がんばってという風に、満男選手の背中をポンポンと叩いてインタビュー終了。その後、また別の女性記者に捕まって、しばらく立ち話をしたあと、バスに向かう満男選手でした。サンダル履きの足元には、アイシングの袋は見えませんでした。左足、たいしたことなければいいのですが。