2002/3/6(Wed)

　40分にも及ぶ、長い長いミーティングのあと、3時40分に選手とスタッフはグランドに姿を現します。あとからの情報では、4日前のFC東京戦のビデオを見ながらのミーティングだったそう。ハードスケジュールの疲れもあってか、2-4での敗北。この1週間で、チームをどれだけ建て直すことができるでしょうか。

　東京では、この時期にしてはかなり暖かな陽気だったのですが、鹿島は風もあり、ずいぶん寒く感じます。空はどんよりと曇って、暗く、雨のあとで地面がしっとりと濡れています。練習はクラブハウスに近いAグランドで。Bグランドの芝は、すっかり茶色になっていますが、Aグランドは青々として、芝の匂いが流れてきます。

　練習の最初は、4人組での鳥かごです。黄色いミニコーンで5メートル四方くらいに区切ったスペースの中、3人がボールを回し、真ん中の一人が、ボールを奪います。満男選手の組には、名良橋選手と隆行選手と関塚コーチ。選手たちは、コーチのミスを誘おうと結託してボールを回し、関塚コーチも大声を上げ、楽しそうです。

　少し遅れて野沢選手がやって来て、関塚コーチと交代。この日の鳥かごのルールは、グラウンダーのボールをツータッチで回すということだったのか、満男選手は、ワンタッチ目にわざとボールに強い回転をかけて自分の側に置きますが、失敗して奪われてしまいます。

　満男選手は、肩に赤いラインの入ったウインドブレーカーに手袋姿。いつもの試合の時とは違う、黒地にサイドが白のスパイクをはいています。ミスして真ん中にはいると、わざと両手を地面についてかがみます。足の間から、しばらくパス回しを眺めていた満男選手、突然、飛び上がって体の向きを変え、自分の後ろ側のパスをカットしようとします。ただパスを回すだけではつまらないのか、いろいろと変わったことを試してみる満男選手。ミスをして、「なんでー!!」と大声を上げて中に入ったりもしています。

　15分くらいで、マリオコーチがホイッスルを吹き、鳥かごは終了。ストレッチの開始です。満男選手一人だけ、ボールに手を突いたりしながらのストレッチ。こんな時でも、ボールを離さないのは、いつも通りの光景です。2人組のストレッチは、野沢選手と組んでです。ずいぶん話が弾んでいるようで、2人とも自然な笑顔です。

　ストレッチの最中に、中田選手はトレーナーさんを呼んでいます。右足首のテーピングの調子が悪いようです。

　ファビアーノ選手と羽田選手の姿は見えず、どうやら室内トレーニングだけだった模様。大谷選手は、別メニューのリハビリを、ずいぶん長い間していました。

　ストレッチが終わると、ミニコーンを細かく回ったりしながらのダッシュを5分くらい。終わると、満男選手は真っ直ぐクーラーボックスのところに行って、給水。幸聖選手と話し、リフティングしながら次の練習に向かいます。

　次は、よくやっている3人一組になって、ハーフラインから走り出し、センターリングからシュートという練習。「フィジカルとテクニカルを備えたトレーニング」らしいですが、50メートルほどの距離を全速力で走る、かなりきつそうな練習です。

　満男選手は、最初は右側の見学席に近い側から走り出す組。本田選手のクロスに、満男選手と熊谷選手が走り込むと、ゴールを守る曽ヶ端選手が「ウォーイ!!」と、思わず体が縮まりそうな大声を上げます。

　3人組のメンバーは、順々に変わっていくのですが、満男選手と同じ組になった秋田選手、盛んに満男選手に何か言ってます。最初は気づかなかったのか、知らんぷりをしていた満男選手も、ようやくうなずいて一緒に走り出します。どうやら、「スルーな!」と言われていたよう。ニアに走り込んだ満男選手は、仕方ないなと言いたげなわざとらしいスルーをして、ファーの秋田選手がシュートします。

　10分くらいで休憩。ゴールから転々と転がってくるボールを見ると、満男選手はハーフライン手前からダッシュで走り出し、25メートルくらいのミドルシュートを打ちます。2日の試合前のアップでは、かなり右足首を気にしていたのですが、この日は、気にしたり痛がったりする様子はなく、悪化してはいないようです。

　左右を入れ替わって、また同じ練習の再開です。ゴール前、ボールを持った満男選手は、左足で狙いすましたシュートを放ちますが、左ポストを直撃してしまいます。

　高嵜選手と1対1になると、目の前で左右にフェイントをかけます。何度も切り替えされて、高嵜選手はバランスを失って倒れてしまい、満男選手のゴールが決まります。

　やはり10分ほどで休憩。顔をゆがめて、体がきつそうな満男選手、いったん、ボールの上に座ったのですが、少しして芝の上に仰向けに寝転がり、両足を持ち上げて頭の向こうに降ろします。動作から、なんだか体のあちこちが痛そうに思えます。

　少し休むと、左サイドに集められていたボールを、次の練習のために、中央の方に蹴り出します。蹴るのが満男選手、受けるのは野沢選手。満男選手は、わざと打ち上げるような高いボールを蹴り、野沢選手は、1球ごとに、ダイレクトでうまくトラップしようとします。こんな、休憩中にボールを移動させるだけのことでも、練習の一部にして、見ているだけで楽しい2人です。

　休憩が終わると、選手たちは、右側のコートで、ハーフラインからボランチがボールを出し、サイドからのセンターリングに対して、ゴール前での2対2や2対1の攻防をする練習を始めます。GKもそれに加わります。

　満男選手と野沢選手は左側のコートで別メニュー。関塚コーチの指導で、FKとCKの練習です。まずは、左サイドライン近く、角度のあるところのFK。壁用の5人並んだ人型を置き、狙うポイントなのでしょうか、ゴール前には、ポールの上に赤いコーンが載せられたものが立てられています。球拾いの人の代わりに、ゴールの脇にミニゴールが置かれているのが、ちょっとおかしな感じです。

　左FKに続いて、左CK、右CKと、2人が交互に10本くらいずつでしょうか、ボールを蹴ります。

　そのピッチの脇で、石井フィジカルトレーナーがストレッチを手伝っているのは、フィジカルトレーニングの終わった大谷選手でしょうか。

　満男選手のFKが大きく外れて、天を仰いだ満男選手ですが、その次のFKでは、見事にコーンに当てて、大きくしなったポールからコーンが落ちます。野沢選手は1本もコーンに当てることはなかったのですが、満男選手は2度、当てていました。

　1つの練習が終わると、次の準備のために、重い壁の人形を引っ張って動かしたりもしている2人です。

　右FKが終わったところで、関塚コーチが「なかたー!! なかたー!!」と声を張り上げて、全体練習に加わっている中田選手を呼びます。何回呼んでも中田選手は気づかず、満男選手もボールに足を載せ、苦笑しながら、中田選手の方を見てます。結局、明智マネージャーが、中田選手を呼びに走らされます。

　首藤選手も加わって、正面に近い場所からのFKの練習。まずは右寄りから、満男選手、野沢選手、中田選手の3人が、順番に蹴っていきます。

　この少し前頃でしょうか、秋田選手、池内選手、金古選手と、最初から練習に加わっていた見慣れない多分ユースの選手と思われる選手が、ピッチ中央で、センターDF用のボールを使ったフィジカルトレーニングを始めます。他の選手たちは、シュート練習です。

　満男選手は、順番を待つ間、ポンポンとおでこでリフティングしてみたり、ボールの上に乗ってゴロゴロしてみたりしていましたが、DF陣の練習を見て笑い出します。何を笑っていたのか、分からなかったのですが、球出しする石井さんの後ろで、すぐにボールを渡せるようにと、キャッチャーのようにしゃがんでボールを2つ持っていた池内選手がおかしかったのでしょうか。

　フィジカルトレーニングが終わると、DF陣は自主練。50メートルくらいのロングボールを、2人の選手がヘディングでクリアします。両方がボールに向かってジャンプして、激しくぶつかり合うので迫力のある練習ですが、高く上がったクリアボールが見学席に何本も飛び込み、怖いくらいです。

　金古選手がクリアしたボールが、斜め後ろに飛んでいくのを見た満男選手、ボールが行った方向を指さして「こっち行っちゃってるじゃん」と。ちゃんと前にクリアしろっていう意味なのかな、でも笑顔で言ってます。

　野沢選手が力強いFKを決めたり、中田選手が右のポールに2本連続して当てたり、惜しいキックが続く中で、満男選手のFKはあまり調子よくない感じ。特に、正面左寄りからのキックは、3本連続して外して、次はポール。5本目でようやく決まります。

　5時半くらいから、野沢選手と満男選手の2人でPKの練習。次の試合にPK戦はないのにねと、記者さんからも声が上がります。この時期に、わざわざPK練習をするのも珍しいのでしょう。中田選手は、ここで上がって行きました。

　以前見たPK練習の時は、全部を決めていた満男選手ですが、この日は、6本中3本を決めたのみ。2本はGKに止められ、1本は枠のはるか左。やはり調子はよくないようです。

　5時半頃、1時間ほどのプレースキックの練習を終えてロッカールームに向かって歩き出す満男選手。左コーナーに行くと、そこに置いてあった2個のボールに目を留め、1個をカーブをかけてゴールの中に、1個をまだPKのポイントにいた野沢選手に向かって蹴って、また歩き出しました。今日は、いつものロングパスの自主練もなく、他の選手たちに比べても運動量が少なく、体の疲れなのか、右足首なのか、コンディションは決してよくないようです。

　元気な野沢選手は、このあと、シュート練習に合流。さらに、平瀬選手とともに、セレーゾ監督じきじきに、シュートの練習を続けていました。

　明日は紅白戦の予定のはず、そちらを優先してコンディションの調整を計っているのだとは思いますが、3日後の試合までにすっかりコンディションがよくなるのか、ちょっと心配になる満男選手の練習光景でした。